7.尋ねました。イクラちゃん編。
『きらり☆お嬢さんヤンキー』の話に意外とダメージを受けたので、浜野さんアレンジの異世界の物語がどう伝わっているのか、魔族の人たちに尋ねてみた。
「イクラちゃん。ちょっと尋ねたいことがあるんだけど」
「なんだい?」
「異世界の物語って、聞いてたりする?」
「ああ。タラチの父上は、素晴らしいストーリーテラーだね! 彼の語る物語は、今や魔界全土に広まっているよ!」
「広まってるんだ……えーと、魔術師のキャンディ・キャンディとか、怪盗のガラスの仮面とか?」
「失われた魔王の力を魔族の少年少女が探す、『魔王の珠』とかね!」
「魔王の……? (なんだろう)」
「魔王の力が七つの魔水晶になって世界に飛び散ったのを、人間の世界に魔族の少年たちが潜入し、集める話だよ。友情とか裏切りとか、いろいろあって、聞いててワクワクしたよ! 主人公のゴクウは今でも、魔族の少年少女たちの憧れだよ!」
「ああ……ドラゴンボール」
「人間に迫害されても、良い人間はいるんだから、きっと友達になれると言うゴクウに、幼いぼくは涙したよ……」
「ああ~……こっちでは、魔族が人間ポジションになるから……」
「電撃魔法を使う黄色いネズミ族の少年との出会いと別れは、今も『美しい友情』の代名詞になっているよ」
「ネズミ族? え、こっちそんな種族いるの?」
「少数民族だけどね」
「いるんだ。でも、ネズミ族……そんな登場人物いたっけ」
「合い言葉は『ピッカー!』」
「ピカチュウかい!」
「『カメハメハに代わっておしおきよ!』 の決めゼリフは、今もあちこちで語られているよ!」
「なんか混じってる! いろいろ混じってるよ、浜野さん!」
「ゴクウの使う必殺技、『カメハメハ・クリスタルパワー・メイクアップ!』は今では、魔族の第一近衛師団の装備魔術として採用されているし」
「それ変身の呪文、ってか、マジに使ってるの必殺技」
「使えるようになるまで、血の滲むような努力と研鑽、苦労があったらしいよ」
「したんだ、努力。使えるようになったんだ、しかも。ってか、カメハメハのクリスタルパワーって……」
「素晴らしいのは、『カメハメハ・ヒーリング・エスカレーション』だね……再現に十年以上かかったらしいよ。
近衛師団の勇猛な戦士達が全員、一斉に変身して、周囲にあるものを光の魔術で押し流す光景は、壮観だよ! 魔法の発動した後は、草木一本残らないからね!」
「いやそれ、ヒーリングじゃないし!」
「竜族の将軍も、三つ首の魔狼族も、全員、フリルとリボンに包まれるんだ。その状態での殲滅魔法は、敵対する人族の王国や軍に、多大なる脅威として認識されたよ!」
「えうわああ……もはやどこに、どう突っ込めば良いのかわからない」
「そんなものすごい魔術を使えるんだから、異界の戦士達ってすごいよね!」
「いや、あたしらフツーにフツーの人間だから! そんなものすごい魔法使える人間とか、いないから!」
「またまた。この間も、竜族の若長が、修行しながら言ってたよ。
『むう、……まだだ。まだ、それがしは、セエ・ラア・ジュピトアーの域に達してはおらん! 武人なれば、あの御仁の域にまで到達せねば!』ってね。
武人たちには、いつか異界に渡ってセエ・ラア戦士に試合を挑みたいと願っているものは大勢いるよ!
異界との扉が行き来自由になったら、きっと、力自慢の武人が殺到するだろうな……」
「それ、下手したら侵略……」
「そういう人たちの後押しもあって、帰還のための魔道術の研究は、着々と進んでいるからね。必ず君の住んでいた異界に道をつなげるから、安心してね、透子ちゃん」
「は、浜野さああああん!」
魔族の少年少女に大人気の冒険ものらしいのだが、聞けば聞くほど心臓に悪かった。
※ ※ ※
感想で、異世界バージョンのドラゴンボールはどうなるの、と言われたので書いてみました。
ちなみに、返信に書いたのは以下の文章。
『異世界版ドラゴンボール。
魔王の力が七つの魔水晶となり、世界に飛び散った!
『魔王さまが、半分に縮んでる〜!』『集めて、元に戻さねえと!』
勇敢な魔族の少年少女たちが、人間の国に潜入する。そこで出会う、裏切りと宿命。
『オラ、人間にだって、優しい人はいるって信じてる!』
そんなゴクウは、カメハメハの力により、セーラー戦士の一人となる!
『カメハメハに代わって、おしおきだ!』
敵か味方か。電撃を放つ黄色いネズミ。
『よせ! オラ、お前とは戦いたくない』『……ピッカー!』
戦いは、何を生み出すのか。魔王は縮んだままなのか。そしてバナナは、おやつに入るのか。
冒険が今、始まる。手に入れろ、魔王の球。
こんな感じ?』




