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バッドエンド  作者: 豆狸


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前編 王太子の選択

 この王国の貴族子女が通う学園の卒業パーティ前の最後の夜会、王太子オリビオ殿下は婚約者である私クリスティーナを迎えに来てはくれなかった。

 ひとりで夜会会場へ向かう気分にもなれなくて、王都にある公爵邸の自室でぼんやり思う。

 ……バッドエンドになってしまった、と。


 私が生まれ育ったこの世界が、前世でプレイした乙女ゲーム『フェアリーテイルラブソングス』の世界だと気づいたのは、学園に入学して彼女を目にした瞬間だった。

 彼女──平民の特待生エロイナ。名前はちょっとあれだが、ゲームのフォーマットネームだったので仕方がない。確か前世のどこかの国の言葉でヒロインという意味のはず。

 エロイナはゲームのままに天真爛漫で無邪気で、だれからも愛される少女だった。


 そう、私の婚約者のオリビオ殿下も彼女を愛した。

 私にはなにも出来なかった。

 前世で読んだネット小説のごとく悪事をしないようにしたというわけではない。このゲームでの私の立ち位置は悪役令嬢とは少し違うのだ。


 『フェアリーテイルラブソングス』は禁断の愛をテーマにしていた。

 メインヒーローとの禁断は共通で『異種族との愛』。

 フェアリー、ドラゴン、獣人(狼と虎)、吸血鬼、人魚がメインヒーロー達だ。なお、ここは人間の国なので彼らは学園の留学生達として登場する。


 ただひとりの同種族(人間)隠しヒーローのオリビオ殿下との禁断は『婚約者のいる人との愛』。嫉妬に狂った悪役令嬢に甚振られて悲劇のヒロインを気取るのではなく、自分達は罪深い、でも愛してる、と酔いしれるほうがメイン──と公式サイトでは()()()()()()()


 私のゲーム内スチルの出演率は高かったが、前世ゲーム中でも今世でもエロイナと会話したのは片手で余る程度の数しかない。

 ふたりは私の目を逃れながら、禁断の愛に溺れる自分達に酔っていたのだ。

 ああ、そうそう、このシーン。どこか近くであのふたりがイチャついているのね、と思いながら過ごした学園生活だった。


 エロイナが現地人だとしても転生者だったとしても、オリビオ殿下を選ぶ気持ちはわかる。

 今は王族が留学してこられるくらい友好な関係だけれど、基本的に人間と獣人は仲が悪くて争いが絶えない。

 一年後にどうなっているかはわからないのだ。


 それに、ぶっちゃけ狼獣人の住む氷結の山脈は寒くて人間に耐えられる気候ではないし、虎獣人の住む灼熱の砂漠は暑過ぎる。というか、毛むくじゃらの虎獣人にも厳しくない?

 平民ならこちらに移住してくれるかもしれないが、ふたりは王族だ。

 エロイナが嫁ぐしかない。


 ほかのヒーローは論外だ。

 だってフェアリーもドラゴンも吸血鬼も人魚も長命種なんだよ?

 いつまでも若く美しい妻なら嬉しいだろうけれど、いつまでも若く美しい夫なんて嫉妬と劣等感の温床にしかならない。長命種が人間や獣人のような短命種を選ぶのは、適当なときに死んでくれる都合の良い遊び相手だからじゃないか、なんて噂もある。


 エロイナがオリビオ殿下を選ぶのは当然のことだ。

 殿下は私の初恋の人で、とても素敵な方なのだもの。

 でも……バッドエンドになってしまったことを歓迎するのは無理だ。自室のベッドに横たわって、私は夜会が終わる時間まで泣き続けた。

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