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黒頭巾の神撃〜Black hood's divine attack〜  作者: 南斗家那乱下


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11/20

賑やかな訪問者

「「「お兄ちゃん、起きて朝だよ!」」」


重なる三つの声。妹は真白一人しかいないはずなのに、複数の少女の声で強制的に意識が浮上する。


(夢か……いや、悪夢だな)


到底受け付けられない現実に、剣一は考えることを放棄して布団を頭まで被り直した。


「ちょっ……! 恥を忍んでこんなことさせられた上に、無視されるなんて……マジでありえないんだけどっ!」

「あら、アリス。あなたが『何でもする』って言ったからこうなったのよ? 最後までやり遂げなさい」

「まさか、こんな辱めを受けるなんて思ってないじゃん!!」


顔を真っ赤にして憤慨するアリスとは裏腹に、淡々と「タスク」をこなすシロミ。その横で、真白は楽しそうにクスクスと笑い声を漏らしていた。



時を遡ること数時間前。

昨日、潔く別れたはずのアリスとシロミだったが、実はこっそり二人の後をつけていた。強者の私生活が気になるアリスと、真白への執着が止まらないシロミは、早朝から剣一たちの家の様子を覗き込んでいたのだ。……が、当然のように真白に発見される。


「あれ? 二人ともどうしたの? そんなところで」

「……あ、バレちゃった。いやー! あんたたちとの戦い、凄かったからさ! 普段はどんな風に過ごしてるのかなーって、ちょっと興味が湧いただけだよ!」

「私も気になっていたのよぉ、強さの秘訣。……それと、真白ちゃんが普段どんな下着を……」


バシンッ!!


「ちょっと……黙っててってば!」

アリスの鋭いツッコミがシロミの脳天を打つ。


「ふふ、立ち話もなんですし、入ってください! どうぞ!」

「……え、いいの? じゃあ、お邪魔します」


真白の底抜けの善意に押され、二人は家の中へ招き入れられた。


「お話する前に、みんなの朝食を作っちゃうね!」

「流石に作らせっぱなしは悪いし、あたしも手伝うよ。料理くらいはできるからさ」

「私も手伝わせてもらうわ。……愛を込めれば、きっと毒も薬になるものね」


三人はエプロンを締め、キッチンに並ぶ。朝食を作りながら、アリスが気まずそうに切り出した。


「……急に押しかけるような真似して、ごめん。お詫びと言っちゃなんだけど、できることなら何でもするからさ。修行の相手でも、雑用でも!」

「何でも? ……じゃあ、作り終わったら三人で『お兄ちゃん起きて朝だよ!』って言いに行こうよ! きっとびっくりして飛び起きちゃうよ!」


真白の無邪気な提案に、アリスの顔が引きつる。


「…… マジ? それをこのあたしがやるの……?」

「あら。今、何でもする……って言ったばかりじゃない。私は真白ちゃんとの共同作業なら、なんだって喜んでやるわぁ」

「……やだ。死ぬほど恥ずいんだけど……!」

「……ダメ、かな? アリスちゃん」


真白に潤んだ瞳で見つめられ、アリスの理性が崩壊した。


「……っ! ぐっ……。……わかったよ! やればいいんでしょ、やればっ!」



――そして、冒頭の惨劇へと至る。

ようやくリビングに引きずり出された剣一を囲み、賑やかな朝食と共に自己紹介が始まった。


「とりあえず、あたしたちから名乗るね。あたしは雲咲(くもさき)アリス。武器は『魔装マジックドレス』。状況に合わせて『戦闘態勢バトルモード』と『補助態勢アシストモード』を切り替えて戦うんだ。昨日のチャイナドレスみたいなのは、近接形態(コンバットスタイル)ね」


アリスは一口パンをかじると、少し得意げに、かつ忠告するように指を立てた。


「この魔装(マジックドレス)戦闘態勢(バトルモード)なら威力を最大まで引き出せるんだけど、補助態勢(アシストモード)に切り替えるとマジで戦闘能力はゼロになるから。索敵中に不意打ち食らったらあたし、ただの無防備な女の子になっちゃうんだよねー。だから、そこはよろしく」


「次は私の番。雪沢(ゆきさわ)シロミよ。『黒魔術ダークマジック』を扱うわ。アリスとは酒場で意気投合してね。……実は私、真白ちゃんのことが大好きで……あとはそう、真白ちゃんを愛でるために生きてるのよぉ」

「自己紹介の半分が愛の告白じゃん……。まあ、あたしたちも強い奴と戦いながら、とりあえず天空を目指してるんだ。あんたたちと同じでね」


二人の自己紹介を聞き終え、剣一も背筋を伸ばして口を開く。


「俺は天城剣一だ。武器は『魔剣マジックソード』。……といっても、常にこの形なわけじゃない。武器そのものを魔力で生成することもできるんだが、普段はあえてベースになる既存の武器に、魔力で『がわ』を生成して覆う形をとっている。その外殻に属性魔力を流し込んで、威力や性質を変化させて戦う。昨日の『如雷(にょらい)』も、その状態から放った一撃だ」

「へぇ……あえて『側』に留めてるわけ? 余裕じゃん。出し惜しみなのか、それとも何か別の狙いがあるのか……。どっちにしろ、剣一は底が見えないな」


アリスがニヤリと不敵に笑い、その名前を確かめるように呼びながら、剣一の真意を探るように目を細める。


「私は天城真白! 『白魔術セイントマジック』を扱っていて、聖霊たちに力を貸してもらってるの!」


真白の快活な挨拶に続き、二人はこれまでの歩みを話し始めた。

天空へと旅立った両親や親友たちのこと。そして、自分たちの前に現れた混沌の神の存在……。

初めは賑やかだった食卓も、話が進むにつれて静まり返っていく。四人の運命が、朝の光の中で一つに繋がろうとしていた。


「つまり……仲間たちが天空にいて、そこで何かが起こってる。あとは全ての聖霊を集めて、あんたたちが強くならなきゃいけない……って感じかぁ」

「なんだかキナ臭い香りがするわねぇ……。でも、真白ちゃんがそんなに困っているなら、お姉さんは放っておけないわ」

「あたしたちも同行しようかな。剣一たちが強くなるならあたしも強くなりたいし」

「そうね。……そういえば『水の聖霊』について、ちょっとした噂を聞いたことがあるわ。私たちがいた港町の側にある古い祠……。そこに誰も読めない文字が刻まれた石盤があるらしいのだけれど、何か関係があるんじゃないかしら?」


「水の聖霊……!! その祠に行きたい! 二人とも、一緒について来てくれますか……?」


真白が身を乗り出し、期待に満ちた眼差しで二人を見つめる。アリスは少し照れくさそうにしたが、力強く頷いた。


「そこに何かあるなら、ついて行くに決まってるじゃん!」

「ふふ、真白ちゃんのお願いなら喜んで行くわよぉ。……もちろん、道中の添い寝もセットかしら?」

「添い寝はいらないから!」


アリスのツッコミに食卓が笑いに包まれる。

こうして、昨日までは敵対していたアリスとシロミという強力な仲間を加え、一行はまず、謎の石盤が待つ港町、シーサイドハーバーへと向かうことになった。

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