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クリーニング業×異世界転生_洗浄聖典 ~クリーニング師、異世界で万物を清める~  作者: もしものべりすと


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第15章「追跡」

旅立ちは、静かな朝だった。


 洗一は、最小限の荷物を背負い、清浄亭の前に立っていた。


 セラ、トム、エマ、ルカ——四人の弟子たちが、見送りに来ていた。


「セイイチさん——」


 セラの目には、涙が浮かんでいた。


「必ず——帰ってきてください」


「ああ。約束した」


 洗一は、四人の顔を順に見た。


「俺がいない間——お前たちが、清浄亭だ。どんな依頼が来ても——対応できるように、俺は教えてきた」


「はい——」


「自信を持て。お前たちなら——できる」


 洗一は、踵を返した。


 振り返らなかった。


 振り返れば——立ち止まってしまう気がした。


 勇者パーティとの合流地点は、町外れの森だった。


 アルベルト、カーラ、エーリッヒ、ミラ——四人が、馬と共に待っていた。


「来たな」


 アルベルトが、手綱を渡してきた。


「馬に乗れるか」


「一応——」


 洗一は、馬に跨った。


 前世では乗ったことがなかったが、この世界に来てから、基本的な乗り方は学んでいた。


「目的地は——北の山脈の向こう側だ」


 アルベルトが、地図を広げた。


「魔王領の端、『灰燼の谷』と呼ばれる場所。穢染公の拠点だと言われている」


「灰燼の谷——」


「到着までに——約一週間。その間——お前には、瘴気の流れを追跡してもらう」


 旅は、過酷だった。


 北に進むにつれて、瘴気の濃度は上がっていった。


 最初の三日間は、まだ耐えられる程度だった。だが、四日目からは——


「これは——」


 洗一は、馬を止めた。


 視界に——灰色の靄が、濃く立ち込めている。


 【汚染鑑定】を発動する。


 ——警告:極高濃度瘴気検出

 ——分類:魔王軍由来(変異型)

 ——危険度:極めて高い

 ——推奨処置:即時撤退


 即時撤退。


 システムが、そう警告している。


「このまま進むのは——危険だ」


「だが——引き返すわけにはいかない」


 アルベルトの顔も、青ざめていた。


 彼らも——瘴気の影響を受けている。


「浄化——できないのか?」


「空気中の瘴気を、全て浄化するのは——無理だ。量が多すぎる」


 洗一は、考えた。


 北の砦で作った「浄化フィルター」を、持ってきていた。


 だが、これは——建物の中で使うものだ。野外では、効果が限定的。


「マスクを——強化する」


 洗一は、フィルターの素材を取り出した。


 そして、即席で——「高性能マスク」を作った。


 浄化布を何層にも重ね、顔を覆う形に加工する。


「これを着けろ。完全ではないが——ある程度は防げる」


 五人全員が、マスクを着けた。


 それでも——瘴気の影響を、完全には防げなかった。


 頭痛。吐き気。倦怠感。


 だが——前に進むしかなかった。


 五日目の夜、洗一は——流れを、捉えた。


「見つけた」


 彼は、北東の方角を指さした。


「瘴気の流れが——あそこに向かっている。逆を辿れば——発生源に行き着く」


「どれくらいの距離だ」


「約二日分——だと思う」


 アルベルトは、頷いた。


「よし。明日から——そちらに向かう」


 六日目、七日目——瘴気の流れを追って、進み続けた。


 濃度は、さらに上がっていった。


 洗一は、何度も【溶剤生成】を発動して、仲間たちの体内から瘴気を抽出した。


 だが——彼自身の体力も、限界に近づいていた。


「あそこだ——」


 八日目の朝、洗一は——谷を見下ろしていた。


 灰燼の谷。


 その名の通り——全てが灰色に染まった、不毛の谷だった。


 草も木も、枯れ果てている。大地は、ひび割れ、黒い煙が立ち上っている。


 そして、谷の中央には——


 黒い城が、聳えていた。


「あれが——穢染公の拠点か」


 アルベルトの声が、緊張していた。


「瘴気の流れは——あの城から、発生している」


 洗一は、【汚染鑑定】を発動した。


 ——警告:穢れの核検出

 ——位置:中央の城、地下深部

 ——推定規模:国家レベルの瘴気発生能力

 ——推奨処置:浄化不可能。発生源の物理的破壊が必要。


 浄化不可能。


 洗一の心臓が、冷たくなった。


 俺の能力では——あの城の穢れを、落とすことはできない。


「どうする——」


 カーラが、剣の柄に手をかけていた。


「突入するか?」


「無謀だ」


 エーリッヒが、首を振った。


「城の周囲には——魔王軍の兵士がいる。正面から行けば——全滅だ」


「じゃあ——どうすれば」


「俺が——行く」


 洗一の言葉に、全員が振り向いた。


「何を言っている」


「城の中に——俺だけが、忍び込む」


「馬鹿な。お前は——戦えないだろう」


「戦わない」


 洗一は、城を見つめた。


「俺の仕事は——穢れを落とすことだ。あの城の中に——穢れの核がある。それを、浄化する」


「浄化できないと——言ったじゃないか」


「完全には——無理だ。だが——核を弱めることは、できるかもしれない」


 洗一は、アルベルトの目を見据えた。


「俺が核を弱めている間に——お前たちが、城を攻撃しろ。核が弱まれば——城の防御も、弱まるはずだ」


「だが——お前は——」


「俺のことは、気にするな」


 洗一は、静かに言った。


「俺は——必ず、帰る。約束したからな」


【第15章・了】

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