6話
Wikipediaによるとーーーマシュマロとは19世紀のフランスの菓子職人が完成させたもので、メレンゲにシロップを加え、ゼリーで固めて粉をまぶした菓子の名。ソフトキャンディーの一種だそうだ。
「マシュマロ魔法発動」
少しの違和感の後、手の平の上に白い塊が現れた。
「おお!」
感動。
あっさりと無から有を生み出すことに成功してしまった。
「すごいですね!」
「すごい………」
じっくりとマシュマロを見る。
自分の意志で、荒野で生み出したそれは、なんだかとても愛らしかった。
「味の方はどうでしょうね?」
金髪ツインテールのアニメキャラであるアイちゃんが聞いてきた。
「確かに………」
「食べられないマシュマロなど無意味です」
「無意味ってことは無いでしょ」
「早く食べてください」
ここで戸惑ったりしたら馬鹿にされてしまう。それは長い付き合いで分かっている。
「分かったよ」
口に入れた。
ふわふわで優しい甘さ。まさしくマシュマロだった。
「美味しい………」
「良かったじゃないですか」
「うん!マシュマロならいくらでも食べれる」
マシュマロが大好きだ。遠足のおやつには真っ先に選んでいたし、家のお菓子棚には常に三袋は入っていた。
「正直きついよなぁ………」
もにゅもにゅしながら呟く。
「魔物がいるってことは、戦えってことだろ。それなのにこれじゃあなぁ………「適当な魔法をくれてやる」だっけ?適当にもほどがあるよな、あの神様」
「ご主人様には馬鹿げた身体能力があるじゃないですか。暴走族を壊滅させて、パトカーで追いかけてくる警察官から逃げ切ったあの日を思い出してください」
「そうは言っても、相手は魔物だよ?」
「いけます!」
アイちゃんははっきりと言い切った。
「どうして?」
「だってご主人様ですから」
「へ?」
「私のご主人様ともあろう御方がこの程度で挫折するはずがありません」
「それは………」
「私に恥をかかせないでください」
「つまり………アイちゃんが認めた男だからって事?」
「はい!」
優作の顔が赤くなった。
「まあ確かに………身体能力にはちょっとした自信はあるよ」
「ご主人様の大好きな漫画、ハンターハンターを思い出してみてください」
優作は何かに気付いたように、ハッとした顔をした。
「ヒソカ=モロウ」
「そうです!あの奇術師の事を思い出してみてくださいよ。あの男の能力はガムです。ガムで最強なんです」
「なるほどね………」
「ご主人様は仰っていたじゃないですか。ヒソカが最強なのは、念能力が強いからじゃない、念能力が無くても最強だからだ、と」
「たしかにそう言ったね………」
「だったらご主人様にも同じことが言えるんじゃないですか?元から強い人は魔法に頼る必要はない」
「そうだ、うん、そうだね………」
何も無い手のひらに白い塊を作り出して口の中に放り込む。もにゅもにゅもにゅ……。
不思議だ。
何だかできそうな気がしてきた。柔らかくて甘いマシュマロ。使い方かもしれないな………。
「その通りだと思う、ありがとう!」
「それでこそ私のご主人様です!」
乾いた風が吹き抜ける中、ふたりは笑っていた。
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