表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/31

30話

 


「申し訳ありませんでしたーーー!」


 声が枯れそうな勢いで叫びながら、額を地面に擦り付けているのは、花咲村に押しかけた六人の刺客のうち、たった一人だけ残った男。


 何故優作がこの男に手を出さなかったのか、それは立ち向かって来なかったから。


「お前は何者だ?」


 優作がゆっくりと歩み寄り、尋ねた。というのも、他の連中とは服装が違うように見えたから。ひょっとして一味ではないのでは?という疑問から。


「この男は町で仕事を探していた剣士です」


 背後の団平が言う。


「大海がとても戦える状態ではないので、五頭たちと戦ってくれる者を町で探していたのですが、この男はその時に声を掛けた者です」


「おいお前、それなのにどうして五頭の側にいるんだ?」


「それが……」と、土に額をこすりつけたままの男が答えた。


「そちらの団平さんから前金を頂いた後ですぐに、そこに倒れている連中から声を掛けられまして、自分たちの味方になれば金を倍払うと……」


 男の言葉を聞いて、優作が何が気が付いたような顔をした。


「団平さん、どうやら助っ人を頼むという策は、あいつらに読まれていたようです」


「な、何と……」


 団平は、開いた口を手で押さえた。


「まあ……敵だな」


 優作は冷静に呟いて男の目を見る。この男の身長はこの国では破格の198㎝。普通の人間にとっては鬼にも見える異形だ。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


 男は慌てて顔を上げ、土まみれの髭面を歪ませた。


「私がこの村に来たのは今日が初めてで、誰かを傷つけたとか、何かを壊したとか、そういうのは一度もしてません!」


「それについてはどうですか?」


 団平は頷いた。


「はい、それは間違いないと思います」


「お前、名前は?」


「根津です!」


「ねず……」


「はいそうです! 根っこの“根”に、津軽の“津”で根津です!」


「根津、何もしていないとは言っても、前金を受け取っておきながら敵についたのは事実だろ」


「もちろん、その金は返すつもりでしたとも!」


 根津はポケットから取り出した金貨を置いた。


「返そうと思って使わずに持ってきていたんです。これで無罪放免ということでどうでしょう?」


「無罪って言い方は気に入らないな」


「その通りです!許していただく、の間違いでした。申し訳ありません」


「本当に反省しているのか怪しいな」


 優作は腕を組みながら言った。


「本当に心の底から反省をしております」


「金は?」


「へ?」


「さっき言っただろ。“謝ったうえで金を支払えば”許すって。前金は返したけど、それじゃあ条件は満たしてないぞ」


「そ、そういわれましても、あいにくの貧乏暮らしで………あ、そうだ!」


 何かを思いついたように、根津がぱっと顔を上げる。


「つい昨日、素晴らしいものを手に入れたんです。それを差し上げますから、それでどうか!」


 自信ありげな根津の言葉に心を惹かれた。


「………とりあえず見せてみろ」


「わかりました!少々お待ちを……!」


 背中に背負っていた鞄を慌ただしく開け始めた。がさがさと布の音がしてから取り出すと、誇らしげに高く掲げた。


「こちら、とれたてほやほやの――ダンジョンコアでございます!」


 彼の手の中で光を受けてきらめいたのは、子供の頭ほどの大きさがある透明な石。


 布にくるまれていたそれは、脈動するように淡い光を放っていた。


 力を感じた。




最後まで読んでいただきありがとうございました。


「ブックマーク」と「いいね」を頂ければ大層喜びます。


評価を頂ければさらに喜びます。


☆5なら踊ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ