3話
「もしかして、あれが先ほど神様が仰っていた『魔法』じゃないですか!?」
「えええ、あの光りが!?」
人の拳くらいの大きさのものが、揺れながらゆっくりと落下してくる。
「何の説明も無しにいきなりそんなことする!?天上天下唯我独尊かよ!」
「当たり前じゃないですか、神様なんですから」
「くそっ!」
「愚痴なんか言ってないで、しっかりキャッチしてくださいよ?」
「そ、そんなこと急に言われても………」
優作は両手を広げたまま、頭上を舞う光の綿を追って、右へ左へと飛び回る。
「頼むから真っ直ぐに降りてきてくれよ!」
「上ばかり見ていないで足元にも注意してください。ここは高い高い崖の上だという事を忘れずに。落ちたらゴシャ、バギャ、ギョチャ、ですよ?」
「怖い擬音の連発は止めてよ!」
その間にも光りの綿はゆっくりと降りてくる。
「上を見て下を見るのは難しい!」
「気合を入れろ!」
アイちゃんは名門野球部の監督のように声を張り上げた。
「絶対に失敗するなよ!失敗したら魔法は無しだぞ!」
「いくらなんでもそれは酷すぎます監督!」
「口答えするな!お前みたいなサードコーチャーの控えなんか、いつ辞めさせてもいいんだぞ!」
「すいませんでした!」
頭上1m程の高さまで来た。
「そこだ!跳べ!」
優作の身体能力は常人を遥かに凌ぐ。高校時代、体育の100m走で十秒台を叩き出し、体育教師の顎を外させたほどだ。
跳んだ。
高く掲げた掌へ向けて跳んだその一瞬は、日本記録にも届くほどの跳躍だった──が、光の綿はふわりと手をすり抜け、彼が左手に持つスマートフォンに触れ、吸い込まれるように消えた。
「え?!」
「何を呆けている!もうひとつあるぞ!」
「すいませんでした!」
そして、残りのもうひとつも、必死に伸ばした掌を躱して優作の頭頂にふわりと乗り、吸い込まれるように消えていった。
≪『特殊魔法 マシュマロ』を取得しました≫
機械的な音声が頭の中に響き渡った。
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