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2話

 


「これでハッキリしました。ここは異世界です」


 スマホ画面の中で、金髪の可愛いアニメキャラクターが、にっこりと微笑んだ。


「異議あり!異世界なんて非現実的です!」


「それならあなたは荒野で戦う烏賊と蛸について、どう説明するつもりですか?!その目で見ましたよね


「ぐぬぬぬぬ………」


 優作が奥歯を噛みしめた。


「正直に言いなさい!」


「見ました」


「はい、見ましたね。つまり………?」


「参りました」


「素直でよろしい!」


 画面の中でアイちゃんは、ドドンと胸を張った。ドヤ顔に合わせて金色の髪がふわりと揺れる。


「異世界かぁ………」


「ご主人様ならどこの世界でもやっていけるんじゃないですか?」


「適当なこと言わないでよ」


「適当ではありません、信頼です!」


「そう言ってもらえるのは嬉しいけど………」


「けど何ですか?」


「こういうのって、普通は最初に説明があるんじゃないの?何にも無しでいきなり放り込むことってある?」


 その瞬間、「ブンッ」という耳元を切るような音がして、優作の視界が一瞬で闇に包まれた。


「なんだ、どうしたんだ!?」


 重さのある闇に声が吸い込まれていく気がした。


「アイちゃんいる?」


「います」


「よかったー」


「何が起きているのかは分かりませんが、いったん落ち着きましょう」


「そんなこと言われたって………」


 自分の手すら見えない暗闇の中、突然、天に向かって伸びる光の柱が現れた。


「ふぁうあ?!」


 驚きのあまり変な声を上げた優作の目の前に、男がゆっくりと姿を現す。エレベーターで上昇してきたかのように。


 白い長衣をまとい、銀白色の長髪と髭をたくわえていた。鋭くも優しげな眼差し、ハリウッドスターのように整った顔立ち。神々しくも、どこか人間臭い、だが圧倒的な存在感を持つ。


 気づけば跪いていた。そうしようと思ったわけではない。身体が自然に動いたのだ。


 神様だ。


「驚いたようだな」


 その声は静かであったにもかかわらず、頭蓋の奥まで響き、鼓膜がびりびりと震える。


「お前をこの世界に連れてきたのは、その馬鹿面を楽しむためだ」


 鼻で笑った。


「人間という生き物は極めて愚かだが、面白い。ほんの些細なことに笑って泣いて怒って憎んで、感情の宝庫。最高の見世物だ」


 圧倒される存在感に押しつぶされ、優作の思考は動かない。


「その中でもお前は特に面白そうだ。この世界で好きに足掻いて見せろ。そのための適当な魔法をくれてやる。それと──」


 ゆっくりと右手を上げた。


「──元の世界に戻りたいと思うのなら探せ。この世界のどこかに、そのためのアイテムがある。それじゃあせいぜい楽しませてみせろ。見ているからな」


「ブンッ」という音とともに、神の姿は掻き消え、闇もまた晴れた。


 眼前に強い光が広がる。


 赤土のからからに乾いた風が、地面の砂を舞い上げ、小さな砂嵐となって視界をぼやけさせた。


「………」


 優作は何も言えずに、乾いた喉に唾を飲み込んだ。「見ている」その言葉が頭に残っていた。


「上上!」


 珍しく切迫したアイちゃんの声。


「上を見てください、ご主人様!」


「え?!」


 顔をあげると、綿毛のような『光り』が青空の中をゆっくりと降りてきた。


「何あれ………」


 太陽のように眩しくは無い『光り』、けれど神聖さは強く感じられた。






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