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14話

 



「新しい魔法!? それって何?! どんなやつなの?!」


 少年のように目をキラキラさせている優作の勢いに押されて、アイちゃんは画面の中で一歩後ずさった。


「申し訳ありませんが、新たな魔法を取得したのは、ご主人様ではなく私なのです」


「そうなの?!」


「ええ。あの戦いの近くにいたことで、私にも魔物を倒した経験値が振り分けられてしまったようです」


「へー………この世界はそういう仕組みになってるんだ。で、アイちゃんが新しく手に入れた魔法って?」


「言語魔法です」


「言語魔法………」


「一度、試してみましょうか」


 そう言うと、画面の中のアイちゃんが口笛を吹き始めた。高く、短く、澄んだ音だった。


「あれ?」


 風が一瞬止んだかのような静けさの中、どこからか羽音が近づいてくる。小さな影が空に現れ、優作の前へとふわりと降りてきた。


「鳥たちに『君たち、こっちに来て一緒に遊ぼうよ』と呼びかけました」


「おお!」


「そしてここで、もうひとつの私の魔法を使ってみたいと思います」


「それって………」


「契約です」


「最初から持ってた魔法だね」


「はい。言語魔法を取得したことで、ようやく本来の力を発揮できそうです」


「いいじゃない、やってみてよ」


「それではご主人様、マシュマロをひとつ出してもらっていいですか?」


「マシュマロを?」


「小鳥との契約に使いたいので」


「わかった」


 優作がポーチから白くふわふわしたマシュマロを取り出し、手のひらにのせる。その足元の乾いた土の上に、青白い魔方陣が音もなく出現した。


「格好いい!」


「これが私の『契約』の魔法です。私が定めた条件を事前に伝え、相手がそれに了承し、魔方陣に触れると契約が成立します」


「ハンターハンターみたい!」


「それでは、やってみますね」


 再び口笛を吹くと、小鳥たちは互いに顔を見合わせ、小首を傾げながらも、一羽が恐る恐る魔方陣に触れた。その瞬間、泡が弾けるように光って、魔方陣はふっと消えた。


「契約は無事成立しました」


 契約を終えたその小鳥はすぐに優作の手のひらに飛び乗り、マシュマロをついばみ始めた。そしてあっという間に食べ終えると、軽やかに飛び立っていった。


「一体どんな契約を………?」


「美味しいお菓子をあげるから、人間がいる町まで飛んでいってちょうだい、と」


「ふんふん、それでどうなるの?」


「小鳥が見た映像を、私も見ることができました」


「魔法ってすごいな、そんなことができるんだ………」


 アイちゃんの目がきらりと光り、画面に簡単な地図が浮かび上がった。


「これがその地図です」


「おお!」


「この世界のことを知るためには、人間に聞くのが一番だと思います。ですから、これから人間の集落に行ってみましょう」


「僕達が探し回らなくても、小鳥に聞けば良いんだね」


「そういうことです」


「さすがアイちゃん!偉い!賢い!」


「ふふ………そんなこと言われるまでもありません。何しろ私は、世界一優秀なAIアシスタントなのですから」


 画面の中でアイちゃんは誇らしげに胸を張った。







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