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プロローグ
夢を見ていた。
何もない空間。五臓六腑が動いている感覚はしっかりとある。
自分の存在すら疑ってしまいそうなほどの暗闇。
手足は動く。呼吸もできる。
「………!」
誰かがいる?
はっきりと言葉は聞こえない。
「………!」
何かを伝えようとしている?
どうせ夢なんだから、どうでもいいか。
朝になればいつもの時間に起きて、身支度をしてあいつを……。
あいつ…?あいつって誰だ?夢の中だからか?
顔も声も知らない。けど、忘れてはいけないことを忘れている気がする。
まぁ、いいか。目が覚めれば全部わかることだ。
意識が薄れて行く中、最後にはっきりと言葉が聞こえた。
「お前はお前じゃない」