やってきたルームメイトがヴァンパイアだった
こちらは「なろうラジオ大賞6」応募作品です。
テーマ/ルームメイト
全寮制の高校に合格した僕は、入寮した部屋でソワソワしていた。
相方となるルームメイトがまだ来ていなかったからだ。
どんな人だろう。
怖い人かな。
優しい人だったらいいな。
そんな思いを馳せながら待っていると、黒いマントを羽織った変なやつが入って来た。
オールバックの黒髪に切れ長の瞳。
ほっそりとした頬に血の気のない顔。
真っ赤な唇からはうっすらとキバが見える。
そんな変なやつが僕を見るなり開口一番こう言った。
「フハハハハ! 貴様が余のルームメイトか! 我が名はヴァンパイア! 魔界のプリンスなり!」
変なやつどころか、ヤベーやつが来てしまった。
「ふむ、驚きすぎて声も出ないか。無理もない。魔界のプリンスが下賎の者に声をかけるなど、本来あり得ないのだからな」
そう言われて我に返った僕はヴァンパイアと名乗ったそいつに尋ねた。
「あの……ヴァンパイアって、あのヴァンパイアですか?」
「どのヴァンパイアかはわからぬが、あのヴァンパイアだ」
「十字架とニンニクが苦手な?」
「ほう、余の苦手なものを知っているのか」
「日の光に弱い?」
「余の弱点も知っておるとはな」
「コウモリに化けたり、霧になったりもする?」
「詳しいな。その通りだ」
まんまじゃないか!
テンプレすぎて逆にビックリだよ!
「えーと、そんなヴァンパイアさんが、なんでまたこんな所に?」
僕の質問に彼は「愚問だな」と答えた。
「日本にはアニメと呼ばれるものがあるだろう?」
「ありますね」
「そこに学園ものというジャンルがあるだろう?」
「ありますね」
「そんなアニメみたいな学園青春ドラマを送ってみたかったからに決まってるだろう!」
……アホみたいな理由だった。
「安心しろ。戸籍も偽装してあるぞ」
戸籍を偽装してる時点で全然安心じゃないんですけど。
「何はともあれ、これから3年間同じ部屋で過ごすルームメイトだ。よろしく頼む」
「あ、こちらこそよろしくです」
見た目や言動はともかく、話が通じる相手でホッとする。
これで敵意むき出しのヤツだったら僕の3年間は地獄だったと思う。
「ではまずこの部屋を改造しよう」
「え?」
「全方向を岩でふさぎ」
「はい?」
「コウモリたちに周囲を監視させ」
「いや、ちょっと」
「部屋中にゾンビどもを……」
「やめい!」
「うごっ」
思わず空手チョップをくらわしてしまった。
「や、やるではないか……。人間の分際で」
頭を抑えながら涙目になる彼を見て僕は思った。
こりゃ大変な3年間になりそうだと。