第二十九縁。
お久しぶりです皆様!! 何ヶ月ぶりかの更新となってしまいましたが……覚えていらっしゃいますでしょうか(汗)? 忘れてしまったという方がいらっしゃいましたら、お手数ですが前のお話から読んでもらえると助かったりいたしますです、ハイ……。
と、言う訳で、やっとこさ更新となりました~☆ 今回も例外なく、本文では漢字へのルビ振りが満載となっております(笑)。読み難いとは思いますが……少しでも漢字への抵抗を無くせる様にとの思いから振らせて頂いておりますので……その辺の所はよろしくお願いします(汗)。
ではでは、久方ぶりの本編へ、ずぃずぃ~っと、進んじゃいましょ~(輝)。
『……光と影の理において制約せし我らが汝
我らと汝がもちて 今ここに悪を討ちつくさん……』
呪文を詠唱するかの様な二人の声が重なり聞こえたのだ。
その二人の詠唱にまるで共鳴するかの様に、辺りの空気がズズズズッと振動し始めるのである……。
「我が身に宿りし焔焼の鉄槌
この贄と共にその扉の楔を解き放つ」
アシュレーちゃんの詠唱と共に、その小さな体が紅く輝きを放ち、
「我らと汝をもちて一つの魂とす
今 我らが願いと神炎の名の共に……」
フレイアさんの詠唱と共に、同じ様に身体が紅い輝きに包まれ……
『等しく全てを焼き尽くさんっ!
我らの声に清浄の劫火となり目覚め降臨せよっ! スウォームシェイガー!!』
二人の力ある言葉と共に、眩しいくらいの紅い輝きを見せた二人の姿はその場から消え去ったのだ。
そして、二人の姿に代ってそれは、ボクの前に大きく勇ましい姿が現れたのだ。
なんとそれは、紅の上からオレンジでカラーリングされた紅き人型の『ノヴァニス』と呼ばれた大きな生命体の様なロボットが、まるで何百・何千枚もの羽根を重ねて出来た様な紅きマント身に纏い、雨を弾く様にバサァッ! と翻して出現したのだ……。
……え。何でここに……シャロンちゃんを襲ったロボットが!?
すると、驚愕するボクの姿に気がついたのか? ふと軽く後ろへ振り返り、片手をゆっくりと優しく振ってその場から跳んだのだ。
その瞬間、背中の紅いマントが天使の様な大きな翼に変身を遂げ、
『今度は逃がさないっ!』
と、聞き覚えのある二つ声を混じらせてボクの前から飛び立って行ったのだった。
あははは……嘘だよね、そんなのって。
ボクは心の中で渇いた笑いを響かせた。
状況的に考えたって、シャロンちゃんが『ノヴァニス』と呼んでたロボットの正体が、あの優しそうな二人の姉妹にしか考えられないからだ……。
二人の人間がロボットだって!? そんなのありえないっ!
……なんて、魔法とかルマだとか不思議な物・事が当たり前にある様なこの世界だから、きっとこれも真実なんだと、何処かボクには思えるんだ。
そっかー……。
虚しさを感じながら頷くボクは、ふと気がついた。
「と、なると……さっきの言葉からしたら、迎え撃つ相手ってもしかしたら……シャロンちゃん!? そうか……きっとボクを探しに戻って来てくれたんだっ」
そう、二人が飛立ち戦いに行った相手を。
マズいっ! シャロンちゃんを助けなきゃっ!!
……でも、ボクなんかがどうやって? あんな巨体を相手に不思議な力も使えないボクが……。
いや。ううん、そうじゃないっ! そんなの解かんないけど行かなくちゃっ!!
雨でぬかるむ道を、ボクは二人が向かった方向へと走リ出す。
あのスピードだと、たった少しの時間でも結構な距離を行ってるかも。高速移動魔法とかも使えないボクが間に合うかも解からないけれど……急げるだけ急いでみよう!
途中ぬかるみに足を取られて転びそうになるボクは、必死に走って後を追う。もしかしてなんて思う頭を振り払いながら、三人とも無事で居る事を祈って。
やがて何やらを探しているノヴァニスと呼ばれたロボットを視認にしたボクは、何処か近くにシャロンちゃんが居るハズだと思って、辺りの木の間を注意深く探る。
なぜなら、さっきの二人の会話からすれば、あのノヴァニスを動かすのには色々と力を使う様である。
と、なれば、身の小ささを使って隠れながら移動してるだろうシャロンちゃんに対して、何処に居るかも解らないまま下手に魔法を放って余力をも考えずに力を消耗する訳にもいかないだろう二人。
だからそのお蔭で、その場で辺りを探るかの様に森の中を見る姿が、近くにシャロンちゃんが居るという事をボクに教えてくれるのだ。
しかし、やや小さい声で呼ぶけれど、一向に姿を現せないシャロンちゃん。
アーシャに似て気配を消すのが上手いから、ボクも全く解らないし、探すのが大変かも……。
そんな事を思っていた矢先である。
よしっ、見つけたっ!
ふと木の陰に隠れながら背をつけ気配を殺しながら休んでいたシャロンちゃんの姿を見つけ出したのは。
静かに息を吐きながらも、青と黄色の二つのルマの輝きを見せるシャロンちゃんの姿からは、くっきりと疲労の色を色濃く見せているのが見て取れる。
ボクはゆっくりとあの二人に気取られない様にシャロンちゃんへと近づき、
「シャロンちゃんっ」
小さな声で呼びかけた。
「お兄様っ!? 良かった、無事だったんだぁ……」
「うん、なんとかね」
と、ニッコリと微笑み返したボクにシャロンちゃんは、
「お兄様っ、もうあんな事は二度としちゃいけないからねっ!」
真剣な眼差しを向けるのである。
え? もしかして怒って……る? シャロンちゃん??
その眉間にシワを寄せてちょっぴり怒っている様なシャロンちゃんの表情に、何処かたじろきそうなボク。
すると、次の瞬間には、
「でも本当に良かったぁ……。私だけが助かってお兄様に何かあったらって、心配だったんだぁ」
愁眉を解いた表情を見せるのだ。
「ゴメンね。でもボクもシャロンちゃんが無事で良かったと思うよ。
まー……でも、これから二人共無事で居られるかって言うのは解らないけどね……」
そう言って、視線を木の間からノヴァニスへと向けるボク。
どうやってここから逃げようかな? このまま隠れて行けば見つかりはしないよね? ……多分。
何処にも根拠が無い事に頷いてみせるボクに、
「大丈夫。私が何とかしてみせるよぉ」
ニッコリと微笑んだシャロンちゃん。
けれどその姿は、二つもルマを発動させて疲労を隠せないままである。
シャロンちゃん……そのアーシャと同じルマを輝かせてるって事は、また身体に無理をさせてるんだ……。
ね、ボクは知ってるよシャロンちゃん。そのルマも輝きを消した後に激しく体力を奪われちゃってた事。
それは、シャロンちゃんのお母様のフローラ様から貰った『蜜星玉』っていう回復薬を飲む前に、輝いていたルマを消した直後に見えたのだ。
大丈夫? というボクの問いに『大丈夫だよぉ』と何気ない声で返して飲み込んでたけれど、輝きを失った瞬間に物凄い汗の量と身の震えがあったのをボクは見逃さなかったのだ。
肉体強化のルマらしいけど……どうやらその使用した後の反動も大きいらしい。
それにシャロンちゃんは……フローラ様の『激しい戦闘が出来る様な身体じゃないんだから、身体が耐え切れなくなってボロボロになるんだからねっ』という言葉通りならば、同じルマを持っているアーシャと比べても、もっと重い負担になってるのだろう。
でも、何故だろうね。ボクじゃ何にも出来ないって身に沁みてるせいか、とても辛そうなのに、そんなシャロンちゃんに頼るしかないんだよねって頭の何処かで理解してるんだ……。
ボクがシャロンちゃんを守らなきゃっ!!
そう激情にも似た想いもあるのも事実なのに……想いと実力が伴ってなくて悔しいや。
「うん。でも、出来るだけ無理しないで行ける様に、二人で考えようね」
シャロンちゃんの微笑みに、優しく頷いて返したボク。
無智と非力なのが、ボクの心とシャロンちゃんを苦しめてるんだ。
ぴとっ。
やんわりと熱を帯びた少し小さな手が、そっとボクの手の上に重なった。
「うん、大丈夫だからね、お兄様」
そうニコッとしたシャロンちゃんの瞳が、まるでボクの心を見透かす様に優しく語りかけていたのだ。
触れられたその個所が、何故か異様に熱く感じるボクは、
「そ、そうだっ。ボク、ちょっとだけあのノヴァニスっていう機体に乗っている人と面識があるから、それを利用して引き付けておくから、その間にシャロンちゃん逃げてよっ!」
ブワッと浮かんだ恥ずかしさを隠す様に、思い立ったアイデアを提案する。
な、何だったんだろう……今の。
と、そんな事を思った次の瞬間……。
「言ったよ……そんなの嫌だからねって、お兄様」
重ねた手でボクの手を握って引いた反動と共に、ボクの胸に抱きついたシャロンちゃんは、ポツリと涙で湿った様な声を漏らしたのだ。
雨で濡れたせいで、服の上から直接シャロンちゃんの小さな身体と体温が伝わって来る。
雨で少し冷えつつも、確かに伝わる温もりがあった。
え、え。えっ!?
「あの時、別れ離れになった時からすっごく心配だったし、胸が痛かったんだよぉ……お兄様。あんなの一度だけで十分だもん。だから……」
そのまま真っ直ぐ顔を上げて、戸惑うボクを見上げたシャロンちゃんは、
「絶対に囮とかそうゆうのは反対だからねっ?」
ニッコリと優しく微笑んでボクにクギを刺したのだ。
可愛い……。
ふと浮かんだ言葉は、ソレだったボク。
今まで一人っ子で育ったボクに、もし妹が居たとしたら同じ様にこんな感じを抱くのだろうか?
まー……父親が父親だし、こんなに素直には育たないかも知れないけれど……ねー。
「っと、あははは。これはアーシャお姉ちゃんには秘密ねっ、お兄様」
フッと離れ、照れ笑いを浮かべながら言うシャロンちゃん。
そんなシャロンちゃんの頭をスーと撫でて、
「うん、解かった」
微笑み返したボク。
さて、これから本当にどうしようか?
どうやったら二人で一緒に逃げれるのだろう?
と、無い頭で一生懸命考えてると、
「あ、そう言えば、体力や魔力が少ないからあんまり動けない様な事を言ってた様な……」
ふと思い出して零れたボクの言葉。
その言葉に一つ唸ったシャロンちゃんは『よしっ』と呟いて、一瞬にて何かが浮かんだ様である。
「フローラお母様がここに居たらきっと反対すると思うけどぉ……。お兄様、分の悪い勝負って嫌いな方?」
何やら考えがあった上で、問いかけたシャロンちゃん。
その言葉からすると、きっと色々考えた故に出た答えが『絶対に見つからずに逃げ切るのは無理かも知れない』という事なんだと解かったボクは、
「全然。その勝負に一緒に居るのがシャロンちゃんなら、ボクはそんな勝負も嫌いじゃないよ」
笑って返した。
「お兄様って顔に似合わず、意外にギャンブラーなのかも」
クスクスと可愛く笑いを零しながら言うシャロンちゃんに、
「そう? その勝負にこんな可愛い女神様がお付なら、それは最高に絶好のチャンスだと思うよ、ボクには」
ニッと一つ笑みを浮かべて返した。
すると、シャロンちゃんは、
「いいなぁ、やっぱり」
そう柔らかく言葉を零すと共に、また一つニッコリと笑みを浮かべたのだ。
「ン?」
「ううん、何でもないっ」
首を軽く傾げて問いかけると、軽く横に首を振って応えたシャロンちゃんは、それより~……と、言葉を続け、
「これからの作戦ねっ、お兄様。作戦は簡単で、私とお兄様は一緒に魔法で飛んで、ひたすら『奏魔人』から逃げるの。
でも、ただ逃げるんじゃなくて、相手を挑発しながら出来るだけ遠くへ逃げる事が重要っ」
思い浮かんだ賭けの答えをボクに説明する。
あ、なるほど……。
ボクはその作戦の真意に気がつき、頷いたのだ。
それは、だたでさえ体力や魔力を費やすらしいあのノヴァニスから、大量のエネルギーを奪う事である。エネルギーを奪い易くする為と作戦の真意に気が付かれない様に、挑発しながら動き回り、相手に冷静さを失わせて、そして行動不能までエネルギーを使い切らせるという、車で言う『ガス欠』にさせるのがこの作戦の真意なのだ。
……ただ、それには一つ問題がある。
「心配は要らないよぉ~お兄様っ。私なら、さっきのお兄様の言葉で元気いっぱいになったからねっ」
ふと視線が物語ってしまったのだろう。シャロンちゃんに向けて直ぐ、何も訊かぬうちに答えが返ってくる。
そう、問題はシャロンちゃんの身体である。
二人分の体重を抱えつつ飛行魔法のコントロールと、相手への挑発に相手からの攻撃の防御を一人で三役をこなさなければいけないんである……。
「このまま地上でじゃダメかな?」
心配して言ったボクの問いかけに、首を『ううん』と横に振って、
「地上じゃ、このぬかるんだ土で早く走るのは大変だし、それに、もうこれ以上攻撃魔法で森さんに被害を与えたくないから……ねっ」
そう苦笑いを一つ浮かべるシャロンちゃん。
本当に優しい女の子である。
「そっか、解かった」
返事をしながら、シャロンちゃんの言葉に心が温かい気分になるボク。
すると、シャロンちゃんは雨や泥などで汚れてしまった白のワンピースのポケットから何やら取り出し、
「お兄様、手を出してみて」
と、言われるまま出した掌に何かを乗せたのだ。
「これはー……?」
「大切な私の誕生石の欠片だよぉ、お兄様にあげるっ」
「セイラルストーン??」
掌に乗せられたのは、プラチナか何かの金属で囲われた、一センチ程ありそうな大きさのブラックブルーの欠けた宝石である。
「あー……そっか。私達だけだっけこうゆうの作るのって。
これは、産まれたばかりの赤子に特殊な石で魔力を吸わせると出来る物でね、それぞれその子の魔力や性質で色や形や硬度も変わるんだ。昔はこれでその子がどんな子どもかを見極めたりするのが一族の仕来りだったんだけど、もう何百年も昔にそういった意味では廃止されちゃってて、今では『その子が無事に成長します様に』ってお守りみたいなものになってるのっ」
「へぇ~……」
へぇ~……そうなんだ。
と、言う事は、これはシャロンちゃんが産まれてからの大切なお守りって事だよねっ??
「そんな大切な物なんて貰えないよっ、シャロンちゃんっ!」
ボクは慌ててそれを返そうとすると、
「いいよぉ、お兄様にならあげても。私も三分の一は持ってるし、残りの三分の一はアーシャお姉様が持ってるものぉ。それにね、これって大切な人達に持ってもらうとより一層にあげた人・貰った人が幸せになれるって言い伝えがあるから、是非お兄様にも貰って欲しいんだよぉ~」
そう言って微笑みながらボクの片手を両手で大切そうに包んで、ゆっくりと優しく押し返したシャロンちゃん。
「これから大変な事をするから、お兄様にも大事で居て欲しいから、それも込めてね」
「……うん、解った。ありがとう、シャロンちゃん。大切にするね」
「うん!」
ボクの言葉に頷き、よしっ。と、一つ気合を入れ、
「それじゃ行こう、お兄様」
差し出したシャロンちゃんの手を、ボクはセイラルストーンをスカートのポケットにしまってから、
「エスコートをお願いしますね」
と、まるで女の子の様にスカートの裾を摘んで振舞って握り返した。
それは、これから厳しい戦いに望むなんて微塵も感じさせない様なそんな空気を、ボク達からは醸し出していたのかも知れない。
ボクと彼女と彼女の縁結び記
第二十九縁『ボクと彼女と誕生石』
お疲れ様でした~。よくぞここまで読んでくださいました(輝)。本当に更新が遅くなってすみません(滝汗)。途中書けなくなったりとかそうゆうがあったりで中々書き進められなくてこんな間が空いてしまいました(ガックシ)。本当、楽しみにしてくださっていた方が居りましたら、本当にごめんなさい……。出来るだけ頑張ろうかと思いますが、もしかしたらまた遅れるかも知れません。それでも良かったら、また読んでもらえると嬉しいなって☆ジャム猫☆は思っております。
次回の更新は、予定では二週間後くらいにはと思っております。また少し遅れてしまったらごめんなさい。それでも「いいよ」って言ってくださる方は、どうか楽しみに待っていてくださいね(感涙)。
では、またブログやこの後書きなどにてお会い出来る事を楽しみにしてますね☆ 出来たら(中傷意外の)コメントなどを貰えると凄く嬉しいので、良かったらコメントしてみてくださいねbb ではではまた~^^