表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/38

番外縁。

 ほんっっっとぉ~にっ! お待たせいたしましたぁ~!! 今回もやたらルビが多いのですが……多くの人が漢字に対して抵抗感を覚えないように思い、毎回多く振らせて戴いてますっ(汗)。

 えー……今回はタイトル通りに『番外』のお話です。ですが……主人公『妖一』君からは語れない部分を書いてますので、ある意味『番外とは言い辛い』お話になっています。

 そんな『番外縁』ですが、良かったらこのまま先を読み進んでみてくださいね~☆

 ではでは『ボクと彼女と彼女の縁結び記 番外録』の始まり始まり~(パチパチパチ~)。

「うぅんっ。さぁ~てとっ」

 それは、背中までびた水色の綺麗きれいなロングのかみを一つにい、背は低めながら見事みごとなプロポーションを黒のハイソックスにジーンズ風のショートパンツとこんのブラウス、そして紺色のマントに身をまとった17、18の高校生くらいの少女が、背伸びを一つする。

 よかったぁ~。中々シャロンちゃんにえないから様子が見れなかったけどぉ、いい子に育ってくれててフローラちゃんホント安心したよぉ~。

 なんてポツリと胸の中でこぼした彼女、フローラさん。

 一見いっけん、そんなまだいくらかおさなそうに見える彼女でも、実際は11歳の娘を持つ母なのである。

 と、なると……実年齢はいくつなんだぁ!? なんて気になる所だけれど、きっと本人にいて見ても、語尾にハートマークが付いた口調と共に微笑んで返されるだけで、真実は語られないのかも知れない。

 シャロンちゃんとヨウイチちゃん、このあと無事ぶじげれるかちょっと心配なんだけどぉ~……まぁ~多少の困難こんなん一緒いっしょに経験してゆくのも色々と効果的でいいかも? うん、きっとそうだよねっ。

 ガンバッ! シャロンちゃんっ! フローラちゃんのためにも頑張がんばって可愛かわいまごの顔見せてねぇ~。

 と、くずれたニンマリ笑顔えがおのまま森の中で立つそんなフローラさんの姿は、きっと森の中では出くわしてはいけない危険人物なのかも知れないと、これをふとのぞけてしまっただれしもが思うかもしれない……。

 さぁ~て……半分本気の冗談じょうだんもこの辺にして、そろそろむかたなきゃねっ。

 あ……久々の戦闘せんとうになるから感覚がにぶってるし、ちゃんと力加減ちからかげん出来できるか心配だなぁ~……。殺さない様にってシャロンちゃんと約束したしぃ……。ちょっと二・三人間違っちゃったら、軽く埋めて誤魔化ごまかしちゃおっかなー。きっとバレないと思うし。

 真剣しんけんな表情を浮かべて首をかしげながら、とんでもない事を考えてるフローラさん……。

 さてさて……この後どうなる事やら。

 そんなフローラさんに、やがて一人の女性が地中にある穴の中からフワリと浮かび上がったのだった。


 それは、黒のTシャツにフード付きの赤いパーカーと、茶色のハーフパンツジーンズを着て、赤い色をしたひとみにブロンドの髪を背中にかかるほどの長さのみにした、細身ほそみの綺麗な女性である。

「ただの通行人。ってわけじゃ無そうね、アナタ」

 ストッ。と、ゆっくりとした動きで地面に着地した彼女は、目の前に居る彼女、フローラさんにするど口調くちょうで問いかける。

「う~ん……通行人って言えばそうだし~、そうじゃないって言えば、そうかも?」

 相変あいかわらずな、ひょろんっとしたまま彼女の問いに返したフローラさん。

 そのまるでおちょくる様な言葉と態度たいどが彼女をさかでたのだろう。フローラさんを見る彼女の視線がさらに鋭くなり、明らかに怒った様子が見て取れるのである。

「……そう。ここはエナの領土りょうどだってアナタは知っててここに立っているんだよね? ここで起きた事は全て自己で責任を持つって事。だから例え殺されたって文句もんくは言えないって事を」

「あらら、そうだったのぉ~。フローラちゃん、そんな事を全く知らないまま知り合いと逢う為だけにここに来たからー……ごめんなさいね~」

 その言葉に、ピンッと来た彼女は、状況じょうきょう把握はあくし、

「あの子達は何処(dこ)に? 素直すなおに話すのならそれほど痛い目にわなくても済むけど……そんなつもりはここに立っていた時点でないみたいね」

 たん々と語りながら一つ横に飛び退いたのだ。

 この子、頭もいい子なのねぇ~。力も十分じゅうぶんあるみたいだし。

「まーね~。それじゃ話が早いし、ちゃっちゃっと始めましょ~か?」

 ニッコリと笑顔で返すフローラさん。

 その瞬間、はらりとかすかに身を動かしたかと思えば、今までなんとも無かった地面に焼けげたあとがくっきりときざまれているのである。

「…………」

「う~ん、そことそことそこと、あっちとあっちに、そして後ろに二人。上空全部10人で間違まちがってないよね?」

 一瞬の出来事に沈黙ちんもくする彼女をさて置き、虚空こくうを順々に指差して、そう確認をうかがうフローラさん。

視界結界魔法ビジョルアかくれてるつもりだと思うけどぉ、これって大気中に微量びりょうの魔力を感じちゃうからわかる人には意味が無いって知ってたぁ? あ、でも森が発する力の流れの中で魔力をまぎれさせてるっていうのは、すごいと思うよぉ~」

 と、ニッコリと問いかけて感嘆かんたんするのである。

 魔法で姿が見えない相手を、大気中にただよう微量の魔力だけで見つけ出したフローラさん。しかも、森からも力が流れている中で、それだけを見つけたというのである……。

「やや上手うわての様ね。でも、それでも何とかしてみようじゃない」

 それだけを言うと、彼女はサッと瞬時に森の中に身をひそめたのだった。

 あ、さっきまでの気配けはいが感じ無ぁ~い。まだ幼そうなのによほどれてるのね~こうゆう戦闘。

 それって……何だか凄く不幸ね……。そうゆう技術がないとこの世の中では生きていけないって事だから。

 ふと、表情にかげりを見せたフローラさんは、さらにポツリと一つ胸の中で零した。

 これもランシャオ族ゆえにかぁ……。

 という言葉を。

 ! 右前方からっ!

 ビュォォオオオッ!!

 突然とつぜん感じたものに反応したフローラさんは、瞬時にはらりと燃えさかる炎の矢をけきったのだ。

 あぶなかったぁ~……ちょっと考え事して……!?

 まずいっ! 今度は全方向からだぁ~……。

 と、不意ふいを突かれた一撃を避けきったのもつかの間、次の瞬間には、全方向からおそい来る強い魔力を体が感じ取ったフローラさん。

 これでどう? いくら魔力を感じる事にすぐれていたとしても、不意の攻撃からてんじた全方向からの烈火炎矢フレア・アロー集中しゅうちゅう砲火ほうかは? 例え気がついたとしても魔法が間に合わないんじゃない?

 木のかげに隠れながら、胸の中で零す彼女。

 そして彼女の思惑おもわくどおりにか? フローラさんの立っていた場所から連続する大きな爆発音を森にひびかせたのだ。

 放たれた魔法によりモクモクと上る爆煙ばくえんに、うすみを浮かべる彼女の姿。

 やがてけむりれた時、彼女が見たものは……。

 そんなっ……風の結界けっかいだって!?

 そう。爆煙が晴れた時、彼女が見たのは淡い青色の球体に身を包み纏ったフローラさんの姿。

 あれだけの烈火炎矢フレア・アローを風の結界一つで……。

 その事実に驚愕きょうがくを見せる彼女。

 ふぅ~……呪文の詠唱えいしょう中途半端ちゅうとはんぱのまま発動させちゃったけど、何とかってよかったぁ……。

 と、フローラさんが苦笑にがわらいを浮かべるのと同時に、全方向からの炎の矢を防ぎ切った風の結界は、まるでガラスで出来た球体がパンッと粉々にくだれる様に綺麗に割れ、その場から消滅しょうめつしたのだ。

 そっか……解った……アナタの特化とっか属性ぞくせいもあの子の様に『風』ね。特化属性には本来の力よりも数段の力が上るからねぇ……。

 木の陰から気が付かれない様に覗き見ながらそう分析ぶんせきする彼女。

 動きもかんも良く、防御系・即発そくはつ性にもけた風を特化してるか……。正直しょうじきやりにくいわねアナタとやるのは。

 ……でも、それでも私はこんな所で負けてなんか居られないっ。アナタなんかにつまずいてられないっ。

 と、彼女は強く心の中で思う。

 さぁ~てさて……気配は全く感じ取れないし~、魔法を放った後の魔力を消す技術も高いみたい……それに全方向から魔法を放ったおかげで辺りから魔力の流れが漂ってるから、探しにくくなってるっと。おまけに意外に統率とうそつ力もあるからややこしさ倍々よねぇ~……。

 この際、大技で辺り一面をはらっちゃった方がらくかも~?

 そう一つ右のてのひらほほにつけて考えるフローラさん。

 ビュッ! ピキペキピキッ!! ブゴォッッッ!!

 突如とつじょ真後まうしろからねらわれた氷の矢の魔法と、今まで立っていた足元から鋭くとがって突き上げる岩の魔法の二つを、高さのあるバク宙で軽々と優雅ゆうがに避けるフローラさんは、すぐぐ様一つ呪文を詠唱するっ。

浮遊空域結界エアリアルフィールっ!」

 ドドドドドンッッッ!!!!

 空中で魔法をき放った瞬間のフローラさんを、四方と上空からの烈火炎矢フレア・アローが包み込んだっ!!

 ちっ。

 爆煙を纏うフローラさんを見て、一つ舌打したうちする彼女。

 後方と地中からの魔力を感じて飛んだはいいけどぉ……直ぐにもう一つの魔法に気がついて反撃用に唱えてた呪文をキャンセルして、魔法を防御へと回して正解っ。あやうく黒焦げに成る所だったぁ……。

 ふぅ~っと風の結界に中で胸をで下ろすフローラさんは、直ぐに気配を探る。

 あちゃぁ、皆、魔力と気配を消すのが上手いから、見当みあたらないねぇ~。

 ふと心の中で零すフローラさんは、ゆっくりと地上に降り立ち風の結界を解いて、

「ねぇ~、何でそんなにあの子達を追ってるのぉ? あの子達が何か君達にしでかしちゃったりとかかなぁ~??」

 と、唐突とうとつに辺りに居るだろうシャロン達を追って来た彼女達に問いかけ始めたのだ。

 シャロンちゃん。なぁんてありふれてるけどぉ、名前で王女様ってバレたら大変だもんねぇ~。シャロンちゃんのあの口ぶりからすれば、きっとアーシャちゃんとかにことわり無く出て来てるだろうし~、後で怒られちゃうもんねぇ~。

 フローラさんの問いかけに、しばしの沈黙ちんもくを置いて、

「私達の目的の為にあの子が必要なのよっ! この世界を変える為の力が少しでも多くねっ!!」

 何処からともなく、返答へんとうが森の間を抜けて来たのである。

 そう、あの子の精紋ルマの無い底知れない未知の力が私達には必要不可欠……。世界からはじかれた私達がこの世界を創り直すにはねっ!

 だから、ここで負ける訳には行かないっ!!

 思わずにぎった手に力が入る彼女。

 ……あ、一瞬右の奥に方で気配が生まれた様なぁ……。

 グワッと漂った気配の方へと視線を向けるフローラさん。

 !!

 その瞬間、早口にて呪文を詠唱し、

浮遊空域結界エアリアルフィールっ!」

 再び風の結界を作り出したっ!

 ドドドドドドドドドッッッ!!

 先程よりも威力いりょくを増し、数も増えた烈火炎矢フレア・アローがフローラさんを襲うっ。

 何とかこたえは出来るかな?

 風の結界をりつつ、すさまじい烈火炎矢フレア・アローを防ぎながらそう思うが……。

 ズドォッ!!

 更に一段と大きい衝撃しょうげきの一撃が結界を襲ったのだっ。

 くぅぅぅ……これ、結構けっこういてるかも……。精紋ルマを発動させちゃうけれどぉ、もう一段上の『翔風域結界ウィンリア』に変えて方が……。

 爆煙に包まれる結界内で、一つ苦笑いを浮かべるフローラさん。

 「厚い風の結界を作る『翔風域結界ウィンリア』をもつらぬくこの『烈貫炎撃矢ディアフレア・アロー』を防いでるなんて……」

 強力な魔法さえもえるフローラさんの風の結界をたりにして、彼女は思わず驚愕の言葉をらしたのだ。

 ならもう一撃っ! ってしたい所だけど、さっきまで追っていた時の魔力の消耗しょうもうと、術者のレベルを考えると無理むりね……。

 仕方しかたない……もしかしたら魔法の完成前に気が付かれて反撃されるかも知れないけれど、私がこの術で何とかするしかないっ……。

 彼女は一つ苦渋の決断けつだんくだし、呪文を詠唱し始める。

 すると、フローラさんの上空にて空間がややゆがみを見せ、それと同時に大きな魔力がたくわえられて行くのである。

「……え?」

 爆煙に包まれ辺りが見えず、強力な一撃を堪えてながら中々新しい魔法の呪文を詠唱出来ないでいるフローラさんは、頭上に集められていく魔力に反応した。

 が、

「どうしよぉ……早く何とかしないと大変な事にっ。でもこの状態じゃ完璧かんぺきに呪文の詠唱が出来ないで不完全なままで発動する事になっちゃうし~……」

 その存在に反応するも、それに対して上手く対処たいしょ出来ない様子。

 まよってるひまは無ぁ~いっ、不完全でもいいから何とかしなくちゃっ!

 と、直ぐ様に頭を回転させて、そのままの状態で呪文の詠唱をし始めた。

 やがて彼女の呪文の詠唱が終わり……。

重魔降雷轟撃ラグ・サングラッシャーっ!」

 力ある言葉と共に魔法を解き放ったのだっ!

 ズガズガシャァァァッッッンッッッ!!!

 物凄い轟音ごうおんを森に響かせ、迷いの無い太い一筋ひとすじの青白くかがやいた道を、上空で歪めた空間から降臨こうりんさせたのだ……。

 その凄まじい威力に、大地を大きく亀裂きれつさせドス黒く焦がし、降り注いだ一面の草を消滅させている。

 そして、風の結界を張りつつ呪文を詠唱していたフローラさんの姿は……。

「間に合ってよかったぁ……」

 と、冷や汗を腕でぬぐいつつ、安堵あんどの声を漏らすフローラさん。

 その足場を見ると、黒く焦がし亀裂で窪んだ大地の直ぐとなりに立っていたのである。

「……避雷撃ひらいげきねぇ」

 彼女がゆっくりとしたくやしそうな口調で、ポツリと零したのだ。

 良かったぁ、一瞬『突貫岩撃グレイド』か『雷招撃サンダー』で迷ったけど、こっちの『雷招撃サンダー』で遠くに誘発ゆうはつさせて~……。

 まじまじと、その誘発させた場所の痕を見て、軽い身震みぶるいがするフローラさん。

 で、やっぱりこんな大きな魔法をしたって言うのにぃ……隠れるのが上手いまいのねぇ~……。魔力もいっぱい漂ってるし~。

 う~ん……それじゃコレで何とかしてみようっかなぁ?

 フローラさんは一つ呪文を詠唱して解き放ち、三度みたび風の結界を張って空中に浮かび上がるのである。

 浮かび上がり、何をするかと思えば、その空間に止まりつつ新しい魔法の呪文の詠唱に取り掛かったのだ。

 何か来るっ! ……クソっ、力が全力で出せない夜以外で強い魔法を放った影響で体が頭についていけないっ。

 ガラ空きのフローラさんに反撃に移りたい彼女だが、先程の魔法で少々力を使ってしまった反動で、上手く体が動けない様子。

 よいしょっと。あとこれと……。

 ふと呪文を詠唱し切ったフローラさんは、その魔法を待機たいきさせつつもまた新しい魔法の呪文を詠唱し始めたのだ。

 十分に力が発揮はっき出来る夜でも無いと言うのに、風の結界を張りつつコントロールし、完成させた魔法を待機させ、さらに新しい魔法を準備するフローラさんは、やはり只者たたものでは無いのかも知れない……。

 やがて呪文が詠唱し終わり魔法の準備が出来たフローラさんは、右の掌を下の森へと向けて、

魔風圧激波エアルプレスっ!」

 待機させていた魔法を解き放ったのだっ。

 バフゥゥゥッ!!

 魔法を解き放つと同時に、フローラさんを中心としてやや激しい風が辺り一面の森に波紋はもん状に広がったのである。

 風の力に木の先がやや折れそうになるものがあれば、全く風を受け流している木もあり、その威力はどうやらそれ程強いものでは無いらしい。

 ? 一体これで何をしようと??

 攻撃らしい攻撃を受けた訳では無い彼女は、そのフローラさんの行動に困惑こんえわくの表情を浮かべる。

 が、しかし次の瞬間、突如唱えてもいないのに包み込んだ風の結界に、一つ悪い予感が脳裏のうりを走ったのだ。

 突如出現した風の結界は、彼女だけではなく、辺りに隠れていた10人へもそれぞれ包み込んでいたのである。

 クソっ、急げっ!

 悪い予感が走った彼女は早口に呪文を詠唱し始めるっ。

 ……流石さすがぁ~、やっぱり頭がいいのねあの子。この感じからすると何が起ころとしてるか理解が出来てるみたいだしねっ。

 二つ目の魔法を解き放ったフローラさんは、更に魔力をそそいで行く。

 すると、風の結界で包み込まれた彼女の仲間達が、次々とうずくまり、そして苦しそうに倒れては気を失って行く……。

 よっと。

 と、しばらくしてから地上に降りたフローラさんは、

「起きていいよぉ~。倒れたフリだって解ってるから」

 にっこりと微笑んで、倒れている彼女へと声をかけた。

「……アナタ、本当に強いね」

 ゆっくりと立ち上がった彼女は、その恐怖に震えながらもフローラさんににらみを利かせるのである。

「魔力も気配も出来るだけ消してた私達をどうやって見つけたかは解らないけど、アナタってそれ以前に凄いわ」

 恐ろしさにかわいた笑いを浮かべつつ、彼女は言う。

「ん? あ~、ホント君達って凄いのっ、フローラちゃんって、魔力とかそうゆうの凄く敏感びんかんな方なんだけど、何も感じ無いし、やたら攻撃した魔力は漂うしで探すの大変だったよぉ~。

 だ・か・らっ、辺り一面をフローラちゃんの魔力でおおって真っ白にして、その中でふと浮かんだ違和感いわかんがする場所を見つけ出したって訳よぉ~。

 で、見つけ出した人達を風の結界で包んで、結界内の酸素を死なない程度徐々に抜いて行ったのよねぇ~」

 そうフローラさんは、凄い事をしつつも物凄く恐ろしい事を、それはまるで子どもの様な笑顔で説明したのである……。

「でも凄いねぇ~、それに気が付いて風の結界の内側から自分の風の結界を作って無効化させるなんて、やっぱり凄いねぇ~……」

 敵である彼女を前に、感嘆するフローラさん。

 私、勝てないかも知れない。でも……。

「私はもう逃げも隠れもしないから、たがいに力を込めた一撃の真っ向勝負を受けてっ」

 うんうんとうなずくフローラさんに、真っ直ぐな瞳で決闘けっとうを申し込んだ彼女。

 ここでどうにも成らなければ、もう先なんて進めそうに無いかも知れない。

 ……けれどっ! 私は自分自身とも戦うっ!!

 気迫きはくのあるその真っ直ぐな瞳に、フローラさんは「うん、やろうっ」と頷いたのだった。


 ここは、先程の森からやや離れた辺り一面の木々がひらけた場所。向かい合って決闘するには持って来いな場所である。

「私はコレでキメるっ!」

 と、互いに十分な距離きょりを取った場所から彼女は、パーカーの背中裏から、掌よりやや大きいサイズの真ん中に穴の空いた円盤えんばん状の刃物はものを取り出したのだ。

「あれって確かぁ~、チャクラムだっけ?」

 ふと目にした武器に首をかしげるフローラさん。

 チャクラムなんかじゃフローラちゃんの風の魔法には勝てないけれどなぁ……。

 そう思っていると、突然彼女の左肩ひだりかたが緑色に輝きだしたのだ。

 それは、二重の円の中に何やら文字が描かれており、円の中央にトランプのダイヤの形が刻まれている精紋ルマが緑色に輝いているのだ。

 クッ……精紋ルマを発動させると体力を消耗し続けるから……今の状態だときびしいかも知れない……。

 でもっ! 全力でぶつかるのみよっ!!

 彼女はそう思いながら、呪文を詠唱し、

重魔降雷轟撃ラグ・サングラッシャーっ!!」

 力ある言葉と共に魔法を解き放ったのだっ。

 すると、やや上空を歪め解き放たれた一筋の凄まじいいかずちは、彼女の手に持たれたチャクラムへと力を宿やどしたのであるっ!

 へぇ~……。一部の特別な人にしか特化として使えない『雷』の属性魔法を使える時点で凄いって思ったけどぉ~……精紋ルマの能力も凄いね。多分たぶんあれは、となえた魔法を手に持った物に付加ふか定着ていちゃくさせる能力かも。それが証拠しょうこに、流れ消えてしまう『雷』が消えずに武器に宿ったままだしねぇ~。

 彼女の様子から、分析をするフローラさん。

 この『雷』が宿ったチャクラム……その速さは神速しんそくを越え、威力は何倍にもなった雷と同等程度っ。今、私が出来る最大攻撃にかけるっ!!

 グッと、チャクラムを握る手に力がこもる彼女。

 それじゃぁ……こっちも。

 何やら思いつき、右手を地面につけて呪文を詠唱し、

突貫岩撃グレイド

 何故か語尾ごびにハートマークが付きそうなくらいにやわらかい口調で魔法を解き放つフローラさん。

 ググゴボッ。

 その影響えいきょうかどうかは解らないが、やや軽い音を響かせて、大地から同じく掌よりやや大きめの黒い石で出来たチャクラムを作り出した。

 そのチャクラムを作り出すと、突然フローラさんのジーンズ風のショートパンツに隠された左足の太腿ふともも付け根辺りが青い光で輝き始めたのだ。

 うぅ……久々の精紋ルマの発動だから、この疲労感ひろうかんにものすっごく違和感を感じるぅ~……。

 なんて思いながらも再び呪文を詠唱し始め、チャクラムを持ったまま右の手を彼女へと向けて、

風束滅波域バンデガンドフィールっ!」

 魔法を解き放ったのだっ。

 それは、彼女へと向けた手の前で空間がゆららめき、それと同時にまるで辺りの空間が歪められた一点に収束しゅうそくされる様に大気が集まり、作り出したチャクラム事飲み込んだのだ……。やがて歪みが止まったと思えた時には、掌の前に掌大の緑色の球体が現れたのである。一見普通よりも小さな風の結界にも思える球体。

 ……あの球体、あんなに小さいのに凄くヤバい。そう全身で警告けいこくらしてる様に感じる。それにあの光、きっと精紋ルマだと思うけど……発動した瞬間から身がピリピリしてくる……。

 発動されたフローラさんの精紋ルマと生み出されたその球体を前に、嫌な汗が背筋せすじつたい流れ落ちた彼女。

 そして、ふー……っと、ゆっくりと大きく息をいて、

「準備はいいっ!?」

「うん、いいよぉ~」

「それじゃ、互いに『1・2・3』のタイミングで勝負っ!!」

 勝負の仕方を確認する。

「1っ!」

 彼女が始めのカウントを叫び、

「にぃっ!」

 フローラさんがセカンドカウントを上げ……。

 そして、

『3っ!!』

 互いにラストカウントを気合と共にえたのだっ!

 その刹那せつな、互いの手から撃ち出されたチャクラが、音も無く凄まじいスピードでらいにゆくっ!!

 彼女の手から撃ち出されたその瞬間、強大な雷の威力で大地が大きく半円状に削り取りながら真っ直ぐに向かうチャクラム。

 フローラさんの手から撃ち出されたその瞬間、走る空間を連続して小さく歪めながらも真っ直ぐに向かうチャクラム。

 互いにそのすさまじい威力と共に衝突しょうとつし、そしてっ!!!!

 バタンッと、人が後ろへ倒れたのと同時に、雷が落とされて轟音をとどろかせるのと大爆発を起こした様な爆音が重なったのだ……。

 倒れた相手へと歩み寄ってくる足音を、耳にする。

 と、言う事は負けたとしても生きてはいる様である。

 ふと、その手を負けた相手へと差し出す勝利者。

「……なぜ?」

 そう問われて、差し出した手がピクリと止まる。

「なぜ?? う~ん……フローラちゃんには言ってる意味が解らないんだけどなぁ~……」

 差し伸べながら、不思議そうに首を傾げたフローラさんの姿。

「なぜ……殺さなかった。私のチャクラムを打ち消すほどの威力なら……この程度で済むハズが……無いじゃないっ」

 凄まじい攻撃で着ていた服はボロボロになり、やぶれた服から大きく胸などが露出ろしゅつした彼女は、悔しなみだで顔をクシャクシャに歪めながら問いかけたのだ。

「え? 殺されたかったのぉ?」

 涙でクシャクシャの彼女に、いつもと変わらない何気ない口調で問いかける。

「私は全力で……私の運命をもかけて臨んだの……。なのにっ、負けて死ぬのならまだしもっ、敵になさけをかけられて生かされるなんて……」

 全身の痛みと疲労感で体が思う様に動かせられないながらも、悔しさからくちびるをキュッとむ彼女の姿。

「う~ん……殺して欲しいのならこの場で息の根を止めてあげてもいいけどぉ……別に殺さなくてもいいんじゃない? と、言うか今のでフローラちゃんも楽しめたし、そこに生き死にが何とな~く付いてくるかもってくらいでいいじゃなぁ~い。何もそれだけが全てじゃないって思うしねぇ~。それに『生きるって事』はそうやって簡単に『死ぬ事よりも大変な事』だとフローラちゃんは思うし~、それが『生き残った事が屈辱くつじょく』なんて思ってるなら考え方を変えてみたらどうかなぁ?」

 そんな彼女の血をく様に言う言葉に、ニッコリと微笑ほほえみを浮かべて悠長ゆうちょうに答えるフローラさんは、続け様に、

「う~ん、それじゃこう言う事でいいじゃん。そう『運命が、君はまだ生きて居なさいって言っていた』って事でぇ~」

 語尾にハートマークが付く、甘く柔らかい声で完結かんけつさせるフローラさん。

 その言葉に、

「『運命が生きて居なさい』ね……。なら、私はこのまま自分がやるべき事・やろうとしてる事を続けてもいいのかも知れないのね……」

 あつい涙を零しながら言う彼女の姿。

 世界をかぁ……。同じランシャオ族だから気持ちは少しは解るかなぁ、フローラちゃんも。

 でもね。

「あの子達にまた手を出すって言うならフローラちゃんが何度でも立ちはだかって邪魔じゃまさせてもらっちゃうからねぇ~」

 と、右の人差し指一つ立てて、ウィンクをしながら警告するフローラさん。

 そして、

「心にめておくわ」

 涙を零しながらも微笑みを返した彼女。

 そんな二人の姿が、ここにはあったのだった。



 ボクと彼女と彼女の縁結び記

 番外縁『王妃おうひ様と彼女と負けられぬ気持ち』

 と、言う訳で、ここまで読んでくださってありがとございましたっ! お疲れ様でした!!

 今回、何気にいつもより長くなってるという罠(なのか??)で、すみませんでした~……。ある意味で番外って事だったので、前編後編と続きにしないで書き切ってしまったので長くなってしまいました(反省)。

 さて、そんな今回のお話ですが、どうだったでしょうか? 妖一君もシャロンちゃんも出て来ない、あの二人のお話。何となく、ここ(番外縁)を全部切ってしまうのは勿体無いなぁって思えて、時間はかかったものの気合で書いてみました(テヘッ)。まぁ……楽しんで読んで貰えたら、凄く嬉しいなっ☆ と、いった感じです(輝)。

 またいつかこんな感じに『番外縁』をやるかも知れませんが、良かったらその時もお付き合いして頂けたらなって思います。では長々と話すのも何なので、後書きもこの辺に。それではまた次回に皆様と逢える事を楽しみにして、この辺で~(ペコリと一礼と共に)。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ