表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/38

第二十七縁。

 お待たせいたしました! 色々あって、やっとこさ書き上げた『第二十七縁』です!(輝)

 今回もいつもの様に簡単な感じまでルビがいっぱい振ってあるので……読み難いかも知れませんが……。良かった読んでみてくださいね(苦笑)。

 ではでは、本文へどうぞ~~。

 彼女の言葉に、両手をこしかくしてべーっとしたを出して返したシャロンちゃんは、

『何とか一瞬のすきを作るから、その時に逃げるね……お兄様』

 小さな声で彼女に聞こえない様にボクに教え、そして小さく呪文じゅもん詠唱えいしょうに入る。

「ま、どっちにしろもう追いかけっこは終わりにしようか? おじょうちゃんは強いけど、私には勝てないと思うしね」

 話しながらゆっくりと近づく彼女。

 そう勝ちほこっている彼女にシャロンちゃんは、一つ詠唱を終えたらしく、少々呼吸を整えてから、

「何で? もしかしたら勝てるかも知れないよぉ?」

 彼女に合わせて問いかけ、再び聞こえない様に小さな声で新しく呪文の詠唱に入ったのだ。

 となりで立ち上がったボクは、これが彼女に気取けどられないかと少々不安な気持ちを押し殺す。

 森の中だと言っても、きっと距離が縮まれば呪文の詠唱だって聞こえてしまうかも知れない。

 そしたら、ボク達に勝機しょうき多分たぶんおとずれはしないと思うのだ。

 やがて、彼女が話しながらも大分だいぶボク達との距離をめた時、シャロンちゃんの呼吸が整い、詠唱を終えて魔法が完成した様である。

「さて、長話もここで終わり。観念かんねんしてもらうおうかなぁ」

 フッと、彼女の空気がするどく恐ろしいものに変わったその瞬間っ!

 シャロンちゃんは渾身こんしんの力と共に、

烈波風昇陣ブレイズ・ブラストっっ!!」

 魔法を解き放ったっ!

 すると、地面に突如とつじょ現れた風と共に白くかがやく光の線で魔法陣がえがき出され、そしてその刹那せつなには、ビュォォォオオオッッッ!! と、魔法陣の外枠がいわくいきよいよく高く激しく風が舞い上がって周りを囲ったのだ。

 それは砂埃すなぼこりと共に舞い上がり、ボク達と彼女の前に境界壁きょうかいへきの様なものを作り出すかの様だった。


 魔法にて生まれし突風に周りの景色をさえぎられた空間。

「しゃ、シャロンちゃん!?」

 何かをするとは思っていたけれど、急な突風とっぷうおどろいて声がれたボク。

「お兄様っ、彼女がこの魔法をくずし切る前にその魔錠マブリズ開錠かいじょうをしますっ。きっと彼女の力量では崩し切るなんて時間の問題ですし……なので早く手を貸してくださいっ」

 ボロボロの体で必死ひっしの表情のシャロンちゃんが言うままに両手を差し出すと、何やらマブリズの上に両手をやって難しい顔をする。

 どうしたの?

 なんて問いかけたいけど、そんな事を問いかけられる状況じょうきょうじゃないのは、一生懸命いっしょうけんめいなシャロンちゃんの顔を見ればじゅうわかるボク。

「……ちがう、三つ目のかぎは風じゃない……」

 ふと、つぶやくと、カチカチカチと何かが動く様な感覚を手首に感じ、

「後一つっ、きっと最後は水氷すいひょうの魔法っ」

 カチカチカチと、今度は首元に感じたその瞬間、ゴロッと腕輪と首輪のマブリズが抜け落ちたのだ。

「ぉお……」

 身にれたそのものから開放された事に、感嘆かんたんの声がこぼれた。

「お兄様、走りますのでそれを持ったままついて来て下さいね」

 そうニッコリとボクへと笑ったシャロンちゃんは、地面に片手をつけるなり、

地導魔穴球ディグゲンドっ」

 魔法を解き放ち、黄色く輝く光の球の中に何やら回転するてのひらサイズのものを誕生させる。

 すると、その誕生と同時に、立っていた地面が大きく割れて魔法陣と同じぐらいの大穴を開けるのだ……。

 グゴボッ。と、真下に大穴を開けたのち、球体を横に向けて穴を開け進めるシャロンちゃん。

 随分ずいぶんと固そうな地層なのに、その輝く球体が地層にれた瞬間に大きく削り消滅しょうめつさせ、やや大きな大人の背丈せたけくらいがスッポリと入る空間を作るのである。

 こんな小さな球体の何処どこに、そんな力があるんだろう……。

 なんて思いながら、走るシャロンちゃんの後ろをついて行くボクは、ふと、シャロンちゃん右胸が服の下から黄色く輝いているのを目にする。

 この光、さっきの青いのと同じ原理だとすると、もしかしてアーシャと同じルマが輝いてるのかな? 確か効果こうかは肉体強化って言ってた様な……。

 そこまで浮かび、気がついたボク。

 そっか……。シャロンちゃん、今までの戦いでこのルマを使わなきゃ動けない体なんだ……。

 と。

 ……ごめんね、ボクのせいでそんなにも無理むりさせちゃって。

「ごめんなさいお兄様」

 急にそう呟くと、先を進むシャロンちゃんは、歩みのスピード下げたのだ。

 え? 何で謝るの??

 もし、謝らなくちゃいけないとしたら、断然だんぜんボクの方なのに。

「シャロンちゃんが謝る事なんて無いと思うよ? むしろボクの方こそシャロンちゃんに感謝しなきゃいけない事はあっても、謝られる事なんて無いよ~」

「ううん……。やっぱり私のタイプがすごくやしいって思う。もし私がアーシャお姉ちゃんみたいに『戦タイプ』だったら、もっとちゃんとお兄様の事を守ってあげられるのになって……。体力も力も魔力も全然ぜんぜんらない自分が、戦場に立ってみていやってほど思い知らされる。

 もしかしたら、このまま逃げられないかも知れないし……最悪の結果にだって。だからアーシャお姉ちゃんみたいに強くなくってごめんね……お兄様」

 何処か涙声なみだごえにも聞こえたシャロンちゃんの声が、魔法球の輝きだけで照らされるこのトンネルに小さくひびいたのだ。

 くじけそうなそんなシャロンちゃんの小さな背中にボクは、

「そんな事無いよ、シャロンちゃん。シャロンちゃんは力とかそうゆう物じゃない強さがあるとボクは思うよ? だって、だれかを傷つけたくないって信念しんねんつらぬいてるじゃない。それに、実際にあそこからボクを助けてくれたのはアーシャでもなくて『シャロンちゃん』なんだよ? それだって凄く勇気がる事だと思うし、全然弱いなんて思えない。だからシャロンちゃんはシャロンちゃんのやり方で、アーシャはアーシャのやり方でいいじゃないっ。

 それにね、あの炎の矢の雨からだって、目の前まで追って来たあの彼女からだって、今もこうやって立派りっぱにボクを守ってくれてるのは、シャロンちゃんだよ。大丈夫、シャロンちゃんは自分で思ってるより弱くは無いから、きっと大丈夫だよ。

 ありがとう、シャロンちゃん」

 優しく語りかけた。

「ふふっ。やっぱりお兄様って不思議ふしぎな人」

 一つ振り返ったシャロンちゃんの顔には、優しい表情と共に笑顔が浮かんでいたのだった。


「ここはいったい……?」

 地下の穴の中から地上に出て辺りを見ると、そこに広がるは木々が立ち並ぶ森の中。大分だいぶ走ったけれど、空から見えた感覚から言えば、きっとあのさっきの森の中から抜けてはいないだろうなと思うボク。

「大分掘り進んだけど、風の魔法とくらべたらスピードは遅いし、さっきの所からはそんなに離れてないかも。お兄様」

 と、フワリと風の結界けっかいに身を包みながらゆっくりと上がるシャロンちゃん。

 もう少しやる事があるからお兄様は先に上がってね。と、言われてボクは外したマブリズを手渡した後に、先に同じ風の結界で地上に上がったのだ。

「歩くスピードとあの飛行スピードじゃ違い過ぎるし、それは仕方ないよ、シャロンちゃん」

 フワリとゆっくり上昇してくるシャロンちゃんにニッコリと微笑ほほえむと、

「あ……」

 ふと零れた言葉と共に一瞬よろめき、結界が消滅して再び地下へと落下を見せたのだ。

「危ないっ!」

 ボクはそれに気がつき、咄嗟とっさに手を差し出したボク。

「ありがとぉ、お兄……」

 地上に引き上げられ、そんな安堵あんどと共に出た言葉が、ふと目の前の人物を目に硬直こうちょくして途切とぎれるシャロンちゃんの姿。

 ゆっくりとシャロンちゃんを片手で引き上げたのは、一人の美少女である。

 それは、背中まで伸びた水色の綺麗きれいなロングの髪を一つに結い、背は低めながら見事なプロポーションを黒のハイソックスにジーンズ風のショートパンツとこんのブラウス、そして紺色のマントに身をまとった17、18の高校生くらいの少女が、ニッコリと笑顔を向けながら自分より少し背が小さいくらいのシャロンちゃんを軽々と片手で持ち上げているのだ。

「え……」

 その状況に驚愕きょうがくするボク。

 いや、それよりも、いつの間にかに音も気配けはいも感じさせぬまま現れた彼女に驚くべきなのだろうけどね……。

「あ、あのー……」

 と、ボクが問いかけようと声をかけたその瞬間、

「シャロンちゃぁ~んっっっ」

「はぅ……」

 目の前の彼女は、ふんわり甘い声を森に響かせて、引き上げたシャロンちゃんを、ぎゅぅぅぅっっっと、思いっきり遠慮えんりょ無しに抱きしめたのである。

 その熱い抱擁ほうように、何処かたましいの様なものがシャロンちゃんの口からはみ出ていた様に見えたのは、きっと気のせいじゃないと思うのはボクだけだろうか?

 一つうめいてピクピクとしながらも、抱きしめられるその腕にポンポンと手で叩くシャロンちゃん。

 ロープ、ロープ……。と、まるで言わんばかりに……。

「あら? こんなにボロボロでどうしたのぉ~シャロンちゃん?」

 その抱きしめた腕で今にもトドメを刺しそうな彼女は、そんな姿のシャロンちゃんにどうやら気が付いたらしく、ちょんっ。と、地上に返す。

「あ……相変あいかわらずお元気そうで何よりです……フローラお母様」

 血のが引いた青い顔をしながらも、無事ぶじ生還せいかんを果たしたシャロンちゃんは、ニコッと彼女へと苦笑にがわらい混じりに微笑んだ。

「シャロンちゃんはー……今は元気なそうだけど、大丈夫ぅ?」

 苦笑いを浮かべつつ、なんとか平気です。と、返す。

「そう、良かった。で、こんな所で何をしてるのぉ? シャロンちゃんとー……」

 ふと向けられたボクへの視線に、

「あ……妖一よういちです」

 彼女に名乗なのったのだ。

 と、言うか、この人って一体何者なんだろう……? さっきシャロンちゃんは『フローラお母様』って言ってたけど……。

 ン? お母様??

「シャロンちゃん、この方はもしかして……」

 つんつん。と、ひじで軽くシャロンちゃん小突こつつきつつ小さな声で問いかけると、

「……ぅん、お兄様の思ってる通り、この人は私のお母様……第二王妃のフローラ=クライン様。いつも『世界探求の旅』とか言って、一年に一回書きめた研究書とか置きにしかほとんど家に帰って来ないから、こうやって姿を見るのは1年ぶりかも」

 少々疲れた口調くちょう丁寧ていねいに説明してくれるのである。

 確かに言われて見れば、髪型と髪の色以外は目元とか鼻とか可愛かわいらしい所がシャロンちゃんにてるけど……って、いやぁ待てまてマテ……どう見たって17、18歳しか見えないこの人がシャロンちゃんのお母さんだって!?

 あまりの現実離れした真実に驚きを隠せないボクは、目をシバシバとしばたたかせてしまう。

「フローラお母様こそここで何を? って、くのも意味は無いのかも……。

 私達はちょっと色々あって、追っ手から逃げてる途中とちゅうなの」

 と、お母様……フローラ様に軽く説明するシャロンちゃん。

 するとその瞬間、ふと笑っていたフローラお母様の表情からスーッと笑顔が消えたのだ。それは表情だけではなく、その場の空気さえも一瞬で鋭いものへと一変いっぺんさせる。

 スッと、鋭い視線をシャロンちゃんにけ、

「ボロボロになりつつも逃げ出してる途中なの? シャロンちゃんは」

 冷たくも淡々とした口調で問いかけたフローラ様。

 その姿に、心臓を突き抜かれたかの様に動けないシャロンちゃんは、静かにゆっくりとした動きで一つうなずいたのだ。

「フローラちゃん、前にシャロンちゃんに言わなかったっけ? 『最初から勝機がみい出せない物には手を出してはいけない』って。

 シャロンちゃんはアーシャちゃんの様に実際に激しい戦闘せんとうをしながら戦略を見出す『いくさタイプ』とは違って、最初から何百通りの秘策ひさくを瞬時に描いて、その中から見つけ出した最良さいりょうの作戦で戦にいどむ『策士さくしタイプ』なんだよって。だからアーシャちゃんの様に激しい戦闘が出来る様な身体からだじゃないんだから、身体がえ切れなくなってボロボロになるんだからねって、フローラちゃんが言ってあげてたでしょ……?」

 と、ふんわり甘い声とは打って変わって、重く低い声でまゆ一つ動かさずに告げるフローラ様は、まるでかえるを物静かににらみつけるへびの様にシャロンちゃんを見下ろして問いかける。

 そんなフローラ様に口籠くちごもりながらもシャロンちゃんは、

「した……私がしたかったから、体が動いちゃったからそうしたのっ! 考える前に体が動いちゃったんだから仕方ないじゃない!? ……考えも無しに出てきちゃったから、こんなさまにもなっちゃってるけどぉ……」

 そうぐな瞳で必死に言い返したのだ。

 必死に言い返すシャロンちゃんに、しばしそのまま冷たい表情で沈黙ちんもくすると、次の瞬間には唐突とうとつに、

「うぇ~ん、シャロンちゃ~んが反抗期はんこうきぃ~。フローラちゃん悲しいぃ~」

 グスンと、可愛く泣き真似まねをするフローラお母様の姿。

 その姿に、さっきまでただよっていたり詰めた様な空気は何処にやらと言わんばかりに、パッとはなやいだのだ。

『へ……』

 と、フローラお母様の突如とつじょ豹変ひょうへんに、抜けた声を二人して零したボク達。

「なぁんて、シャロンちゃんもそろそろそんな乙女おとめな時期なのよね。フローラちゃんもちゃんとが娘の成長をみとめてあげなきゃっ。シャロンちゃんがそこまで思うなんて、きっと隣の子は、凄くいい人なんでしょうね」

 ニッコリと、最初に出逢であった素敵すてきな笑顔をボクへと向けるフローラ様。

 ……え? それって、ボクが女の子の姿をしてるっていうのに、しっかりボクが『男の子』だって見えてるって事? あの魔法を使えなくさせるとかいう魔石を打ち負かしたというに??

「あ、あのー……もしかして本当の姿が見えてたり……します?」

 苦笑いを浮かべながら問いかけると、

「そうね~、このくらいの仕掛しかけなら簡単かんたんに見抜けるけどぉ~?」

 実にあっさりと言いのけたのだ。

「あはは……流石さすがはフローラお母様。娘ながらフローラお母様の眼力にはお手上げですよぉ……」

 同じく苦笑いを浮かべたシャロンちゃんは、

残念ざんねんながらお兄様はアーシャお姉ちゃんのお婿むこ様になる方ですよ、フローラお母様」

 そう言い返したのだ。

 しかし、その言葉にフローラお母様は、ちっちっちっ。と、左手を腰につけて右手の人差し指を立てて横に振り、

「この世界には種族はいっぱいるけれど、性別はこまかいのを抜けば『男と女』しかいないのよぉ~シャロンちゃん。男と女は至極しごく単純たんじゅんでね、一緒いっしょに居ればその内どちらかがかれちゃってとぎっちゃうもんなのっ」

 グイッとシャロンちゃんに顔を近づけて熱く語るのである。

 いや……あのー……フローラ……様?

 何か声をかけようとするボクをよそ目に、フローラお母様は続け様に、

「シャロンちゃんはまだ11だけど、もう半年くらい待てば12でしょ!? 12歳といえば婚姻こんいんの儀は出来できなくとも婚約こんやくの儀は出来るのよぉ~? だ・か・ら、このさい、気にってるならここは上手うまくやって既成事実きせいじじつとか何でも作ってうばっちゃおうっ! ね、シャロンちゃん」

 何だかとんでもない提案ていあんを、右手に作った拳をニギニギしながら熱く語って進めるのである……。

「……はいはい。その『半年』って口で言うのは簡単だけど、実際にしてみれば長い期間だし、だからフローラお母様の冗談じょうだんはここまでにしましょうね。それに、そんなアーシャお姉ちゃんから奪う様な事は出来ないし、しない私の性格を知ってるでしょ? フローラお母様??」

「ぇ~、何だか1年見ない間にノリが悪くなったよぉ~シャロンちゃん。フローラちゃん、半分本気だったのになぁ。それにフローラちゃん公認こうにんなんだからしちゃってもいいのにっ。バルドちゃんには後で会えた時にでもフローラちゃんが上手く言ってあげちゃうしぃ~」

「前から私はこうゆう性格ですフローラお母様……。そんな事より、今こっちは大変な事になってるし、先を急ぐねっ」

 ふぅ~……。と、タメ息交じりの息をいて立ち上がシャロンちゃん。

「あら、そうみたい。シャロンちゃん達が通って来た地下の方から、シャロンちゃんより強そうな魔力を持ったのが遠くの方……400メートル後ろの方から段々と近づいてくるし、その上空にも10人近づいてるのねぇ~」

 ふと、フローラ様が何気なく零した言葉に驚愕するボク。

 え!? 何でそんな事が解るんだろう……。それにこっちにだって人数とかまで把握はあくしてないのに……。

「流石はフローラお母様……。それぞれが持つ魔力の力とその数をそんなに離れた場所でも感じれるなんて、相変わらず桁外れな潜在能力せんざいのうりょくだよねぇ……」

じつはもっと前から気がついてたけど、シャロンちゃんといっぱいお話したかったから言わなかったのよねぇ~」

 キャハッと、一つうれしそうな表情を浮かべながら、やはりとんでもない事を零すフローラお母様。

 いったい……この方って何者なんだろう……。でもきっと、そんな事を考えるだけ無駄むだなんだろうな。

 何処となしか、全くつかめないフローラ様を見てそう思うボク。

 すると、一つ手をポンッと打ったフローラ様は、

「そうだ、たまには親らしい事もしてあげなくっちゃね。シャロンちゃん、ここはフローラちゃんが引き受けるから逃げてよぉ」

 ニッコリと微笑みを浮かべて10人以上もの相手をたった一人で戦うと、そうたん々と言うのである。

「え、そんな無茶むちゃな!?」

 思わず言葉が零れたボクに、

「だいじょ~ぶ~。未来の義母様おかあさまに任せなさいって。それにヨウイチちゃん? だっけ? ウチのシャロンちゃんの事ヨロシクねっ。親ばかじゃないけど、ウチのシャロンちゃん凄くいい子ちゃんだからね、好きな人のために無茶を通り越して頑張がんばっちゃう様な子だし、ちゃんと見ててあげてね。まぁ~当人とうにんは否定するかも知れないけれどっ」

 と、ウィンク一つして言うフローラお母様。

 いや……未来のって……。

「フローラお母様っ!」

「やんっ、怒っちゃ、メ~。……と、これ持って行きなさいシャロンちゃん」

 声を上げたシャロンちゃんに、ひょいっと何やらを手渡すフローラ様。

「エリクアクア付近に三年に一度しか咲かない花から採取さいしゅした蜜星玉みつぼしだま。ボロボロの身体だから完全には体力は回復はしないかも知れないけれど、少しはそのバルドちゃんの精紋ルマに頼らなくて済むくらいは動ける様になるとは思うから」

「フローラお母様……こんな稀少なもの……」

 手に渡された黄色いあめの様な物にふと視線を落として、言葉が零れたシャロンちゃん。

「ふふっ。いっつも離れてるけど、フローラちゃんシャロンちゃんの事忘れた事無いし、ちゃんと心配もしてるんだよぉ、口にはした事無いだけでね」

 と、シャロンちゃんの頭を優しくでて、次の瞬間には突然抱きしめ、

「ガンバッ、恋する乙女っ。フローラちゃんがしてあげれる事はしてあげるけど、最終的に選択するのはシャロンちゃん自身なんだよぉ~。

 だからガンバッ、何を選ぶのもどうするかもシャロンちゃん次第。まよったってもいいしかべにぶつかってもいい。ただ……一つだけ、その道を選んだからには自分を疑っちゃダメよぉ? 立ってた場所が見る見る内に崩れ落ちちゃうから。ね、フローラちゃんの自慢じまんの可愛い可愛いシャロンちゃん」

 そう、ギュッと抱きしめた顔が、優しい母親の様な表情を見せるフローラお母様の姿が、そこにはあったのだった。



 ボクと彼女と彼女の縁結び記

 第二十七縁『ボクとシャロンちゃんと意外いがい救世主きゅうせいしゅ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ