第二十五縁。
お待たせしました!! 第二十五縁の更新です!!
またこれも、今までの様に数多くの漢字にフリガナを振ってますので、もしかしたら読みづらいかも知れません(汗)。そして、作中には振らなくてもいいだろうと思われる漢字までにフリガナを振ってますが、これは皆様をバカにしてる訳では無く、漢字に対する抵抗感が少しでも無くなる様にと思って振ってあるだけですので、ご了承願えれば幸いです(汗)。
それでは、久々の更新となる第二十五縁をお楽しみください!!
ガラーンコローン ガラーンコローン。
何処とも無く、少々重い鐘の音が鳴り響いてくるのを耳にしたボク。
それは街の外から聞こえてくる様だ。
起床時刻の鐘の音? かな??
眠い瞼を擦りながら窓から外を眺めれば、朝日の光が眩しく差し込み、もう夜は明けている事を告げている。
「眠れたかな?」
そんな女性の声が突然聞こえ、ボクは驚きつつもその声の方へと振り向くと、そこにはあのリーダー格の彼女の姿があった。
「この鐘の音色が聞こえた様に、今日が『聖樹の日』で、連れて来た娘が売られる日よ。と、言ってもまだ夕方まで時間はあるわ。
それで、あれから気は変わった?」
腕を組みながら、部屋の扉に背をもたれさせて問いかける彼女。
彼女の言葉からすると、この鐘の音は『ユマグラナルの日』を告げるものらしく、そして彼女がただたんにソレだけを告げに来ただけでは無いらしい。
「その顔からすると、いい答えはまだ貰えそうも無いわね。
OK。時間ならまだあるからよく考えておいて」
そう言い残して彼女が部屋を出て行く、その瞬間だった。それが起きたのは……。
ズンッ!!
この建物を揺らし、体に伝わる大きく重い振動。そしてその刹那に轟音と爆発が起きたのだ。
「えっ!? まさか無闇に殺生をしてはいけないこの日に攻撃を受けたとでもっ!?」
思わず驚愕の声を漏らした彼女は、ボクが居る部屋の窓から外を覗き、一つ舌打ちを響かせて部屋を出て行くのだった。
え……。一体何が起こったの?
煙がモクモクと昇る窓の外を覗き見ながら、ふと思うボク。
今は何時だか解らないけれど……日差しの感覚からきっと10時は回ってないのかも?
そんな早い時間帯から、どうやら何者かに奇襲を受けたらしい事は何となく解るけれど、でもどうやって奇襲なんてかけられたんだろう? 眠らない街って言うだけあって、夜の間は魔石による街灯が街を明るく照らしてたし、窓から覗いてみただけでも、この館の外には結構な見張りの人も居たはずなのに……。
そこまで考えて、ふと浮かぶは『プリティー不思議少女 空ちゃん』の存在。
あー……。
昨日の易々とここへ侵入した事を考えると、何も見当たらない所からの奇襲なんてありえない話でもないかな。
なんて、何処か納得がいってしまう。
それに『何かを探してる』って空ちゃんが言ってたしね。
と、そこまで思いつつもポツリと何かが引っかかるボク。
あれ? 警報は鳴ったものの、昨日は破壊も無く侵入出来たのに、何で今日は破壊なんてしなくちゃいけないんだろう? 昨日と同じ経路を通れば破壊なんてする必要もないハズ。そんなの、まるでここに居るよって来てるよって自ら知らせる様なものだし……。
そもそも空ちゃんにかかったら、容易に巨大な出入り口を秘密裏に建造できそうだしねー……。
そうなると、侵入する為以外の何か目的があって爆発をさせたとしか思えないかも。例えば映画とか漫画にある様な『とある所への道案内をさせる為』とかね。昨日侵入させている事から厳重に警備はしてるだろうから、何かあれば大事なものを守りに行くだろうし、そうゆう風に使うかも知れないからね。
なんて考えていると、突然部屋の扉のロックが外れる様な音を耳にしたボク。
そして、グルリ……とドアノブが回る。
さっきの彼女? それとも空ちゃん??
やがて、ガチャリと開いたそこに現れたのは……。
「大丈夫ですか? お兄様」
と、知っている声と共に現れた、黒のロングストレートを二つに結った少女の姿が一つ。
「シャロンちゃん!?」
意外すぎる人物の登場に、驚愕するボク。
しかも、シャロンちゃんの姿は、あのまま白のワンピースに透かし編みのカーディガンという姿にも関わらず、その服装には少々の汚れはあるものの大した汚れは無いのだ。
「ど、どうしたの……? というか何でこんな所にシャロンちゃんが……」
「あはは、なんだか凄い顔。私、お兄様を助けに来たんですよ?」
クスクスと可愛い笑みを零すシャロンちゃん。
そんなシャロンちゃんに思わず問いかけてしまうボク。
「え?? それじゃさっきの爆発ってシャロンちゃんが?」
と、目が点になりそうな気分で。
すると、ボクの問いに、一つニッコリ微笑み返して、
「うん、私だよぉ。
あ、でも厳密に言うと爆発なんてしてなかったりするんだけれどね」
「え、だって煙だって上がってるし、それにあの振動と爆音……」
そう窓の外を指差すと、シャロンちゃんは、あぁ~なんて言って頷いて、
「それは、風の魔法で一瞬だけ建物を揺らして爆発の音を建物にだけを響かせてから、建物の全部の窓に視界結界魔法をかけて煙と爆発を見せてるだけだよ~。だから外からは何も壊れてもいないし、音が聞こえない外の人は平然としてるしね」
右の人差し指一つ立ててボクに説明する。
え? でもここって魔法もルマも無効にしちゃうんじゃ……。
説明を聞いて、ふと浮かぶとある疑問。
けれどボクの表情からシャロンちゃんは言いたい事を読み取ったらしく、
「そうみたいだよね。中に入って幾つものそれらしい魔石を見つけたから。
でも、それって中は無効化しちゃうかも知れないけど『建物の表面』には効果は無いみたい。だから視界結界魔法を窓の外側表面にかけたんだぁ」
なんて嬉しそうに満面の笑みで話すのである。
「でも魔法は中で無効化しちゃうなら、その風の魔法とかで音を伝えるのは無理なんじゃない?? それにあんな大きな爆発音なら外に居る人にだって聞こえちゃうだろうし……」
「聞こえないよ~。だって『音は外に出して無い』から」
「…………?」
そんな言葉を遮って答えたシャロンちゃんの説明に、思わず困惑するボク。
出さずに音を聞かせる? あんな大きい爆発音を??
いや……確かに音は聞いたんだけれど……。
「う~ん。それじゃお兄様、音ってなんだと思う?」
困惑するボクに、ニコヤカに一つ問題を出すシャロンちゃん。
音って何って……言われても『音は音』だし、それ以上も以外でも……。
なんて考えて、昔テレビでやっていた事をふと思い出した。
あ、そういえば確か新しいヘッドホンだかイヤホンの説明で……。
「流石お兄様、解ったみたい。
うん、答えはその通り『振動』だよぉ。音って耳で振動を受けて聞き取ってるからねっ。
だから簡単に言えばね、建物に魔法で作った『爆発の音の振動』を与えてるだけだから、魔法が中に届かなくても振動が中の人の体の一部に届けば聞こえるんだよぉ。」
サラリと、難しい事を言ってのけるシャロンちゃん……。
この歳でそんな事まで解ってるなんて凄いと思うボク。
そう言えば前にアーシャがこんな事を言ってたっけ。
『戦タイプじゃないって言ったけど、シャロンは頭がいいし、戦おうと思えば敵と直接対峙しないで十分戦えるくらいの才能はあるわ。
でも、その才能は診療薬師としての才能に使う事をあの子自身で選んでる。『傷つけるばかりが力じゃない』って思うくらい優しい子だからね』
なんて。
ボクはシャロンちゃんの凄さを目の当たりにして、ふとアーシャの言葉を思い出したのだ。
「さっ、お兄様。皆が視界結界魔法の方へ気をとられてる内にここから出ようよっ。近くに行けば直ぐに偽物って解って『罠』だって気がつかれちゃうし、アーシャお姉ちゃんと一緒に来てる訳じゃないから敵と鉢合わせになると大変だもん。それに……出来るだけ傷つけあう事なんてしたくないし、戦闘をしなくて済むならそれが一番いいからね」
少し辛そうに苦笑いを浮かべて手を差し伸べるシャロンちゃん。
でも、ボクは差し伸べられたその手に、ふと戸惑ってしまう。
このままシャロンちゃんと一緒に逃げていいのかな……。それってやっぱり、昨日空ちゃんに言った通り……。
すると、ボクが表情を濁したのを見てシャロンちゃんは、
「お兄様、今しなきゃいけない事・出来る事をしないで後で何かが出来る事って無いと思うよ? きっと優しいお兄様だから、背負わなくていい問題とかを抱えて、それが重くて動けないんじゃないかなって思うんだけどね。
アーシャお姉ちゃんみたいには成れないこんな私だけど、それを少しだけでも一緒に持ってあげるから一緒に行こうよ。今ここでお兄様が動けなくなっちゃうと、その問題だって解決出来るモノでも出来なくなっちゃうからね」
優しい微笑と共に、ボクを外へと誘うシャロンちゃん。
そっか……。
小さい子でも解ってる事を、ボクは解ってる様で解ってなかったんだなぁ。ここから逃げる事が問題から逃げてるなんて思えてたけど、本当はここから逃げる事は、落ち着いて物事を考える為でもあるって前向きな事なんだって。
うん、そしたらあのクローバーの子を本当の意味で助けられる方法だって浮かぶかも知れない。
ボクは胸の中で渦巻いていたモヤモヤが取れた様な気がして、シャロンちゃんが差し伸べた手を握りに行く。
……すると、シャロンちゃんの後ろに人影が現れたと思った次の瞬間、
「きゃっ」
ドカッという音を響かせて床に倒れこむシャロンちゃん。
「大丈夫っ!?」
「子どもの悪戯の様なマネをしてくれてなんて思ったら、本当に子どもがやってたなんて思いもしなかったわねぇ」
倒れこんだシャロンちゃんの姿を睨みながら、突然戻ってきたあのリーダー挌の彼女は嘲う様な口調で言う。
「どうやってここまで来れたかなんて解らないけれど、よくここまで来たねお嬢ちゃん。ご褒美にオークに出す娘と一緒に出品してあげるわ。まー、まずは品定めしてからだけれどね」
そう薄笑いを浮かべながらゆっくりと近寄る彼女に、
「この子は関係無いだろっ」
ボクはシャロンちゃんを庇う様に前に出て睨みを利かせる。
まずい……シャロンちゃんがババルゥの王女だってバレたら、敵対してる彼女の事だから何をするか解らない……。もしかしたら何かしらの戦争の道具にさせられちゃうかも知れないし……。
「そう……。それじゃこの子を魔錠をしたまま街の外に放り投げてもいいけれど? そしたらどうなると……思う?」
意味深な笑いを含みながら淡々と語る彼女。
そんなの答えなんて訊かなくても、ボクにでも容易に想像は出来る。魔法もルマも使えないシャロンちゃんはただの子どもでしかなくて、きっと……。
「……やめろ。望み通りにボクはするから、この子は街から出してあげて」
ボクは覚悟をしてゆっくりとした口調で彼女に告げた。
今、目の前のシャロンちゃんさえ救えなくて、一体ボクに何が救えるの!?
その時だった、二回目の爆発音と振動で館が揺れたのは。
「また悪ふざけ? もうその手は食わないし、今更何の効果があるっていうの?」
厭きれた様な素振りでシャロンちゃんに言う彼女。
けれど、言われたシャロンちゃんはその言葉に驚きつつ、
「わ、私じゃないよ、これは」
腰に手をやりながら決め付けていた彼女に返したのだ。
「ここからじゃ魔法も使えないし、今更目の前で偽物の爆破なんてしたって意味が無いもん……」
確かにその通りである。それにシャロンちゃんの性格からして、誰かを巻き込む様な爆破を意図的にするなんて思えないし。
すると、下の階の方からこんな女性の声が聞こえて来たボク達。
『嘘でしょう!? 今の衝撃で壁にあった結界層まで爆破されてるなんてっ!』
と。
聞こえて来たそんな言葉に、思わずシャロンちゃんの顔を驚愕の表情で見る彼女。
「何をしたの……?」
「だから、私は何もして無いよ」
「くっ……。今入った侵入者を捕らえなさいっ! 侵入者はこの街で暗躍しつつ壁の結界層を破壊出来るくらい上手らしいから、この館の中だとはいえ十分に気をつけてっ! それと万が一があるからあの娘とアレをシッカリ守りなさいっ!!」
嘘を吐いていない様子のシャロンちゃんから、キリッと後ろへと向き直って檄と共に指示を送る彼女。
そして彼女が視線をこちらからずらしたその微かな一瞬に、ボク達は……。
「お兄様っ、行きますっ! シッカリと手を握ってっ!!」
シャロンちゃんの力強い言葉と共に、一緒に窓から飛び降りたのだ!
ちょっとシャロンちゃんっ!? 勢いで一緒に飛び降りちゃったけど、ここって地上から7階もあるんだよ!!
凄い勢いで空気が上昇する様な感覚を全身で感じながら、半ば泣きそうになるボク。もちろん空気が上昇してる訳ではなくて、ボク達が下降して空気を切っているだけである。
ボクの手を掴みながら、何やらを口元で唱えている様なシャロンちゃんは苦笑いを浮かべ、
「浮遊空域結界っ!」
魔法を解き放ったのだ。
バフゥッ!!
地上にぶつかるすれすれで、ボク達二人の体はフワッと柔らかくワンクッションをして、淡い青色の球体に包まれながら浮かび上がる。
それは後数ミリで鼻先が地面にめり込む、そんなギリギリまで一度は下がったのである。
「よかったぁ……『間に合わなかったらごめんね』って言ったけど間に合って」
安堵のタメ息を吐いて、あはは……と渇いた笑いを浮かべるシャロンちゃん。
「あはははは…………」
その言葉と笑いに、釣られる様にボクも一つ渇いた笑いを浮かべた。
正直、死ぬかと思いました。
耳の鼓膜が痛くなりそうなくらい激しい鼓動が、ボクのそれを物語っているのだ。
「とりあえず、この街を抜けるね、お兄様っ」
「う、うん……」
グイッと体が上昇し、徐々に飛行スピードが上がるボク達。しかしそれは、目に映る感覚からいって時速45キロ程度くらいで、それほど速い感じはしない。
なのに、飛んでいるシャロンちゃんは凄く辛そうに額に汗を浮かべているのだ。
「大丈夫? シャロンちゃん」
「う、うん、大丈夫。少し辛いけれど、追っ手が来るかも知れないから少しでも出来るだけ遠くへ行かなきゃいけないしね」
ボクの問いかけに苦しそうにしながらも、ニッコリと笑顔を見せるシャロンちゃん。
少し? いや、凄く苦しいんだろうな。
それは、ボクの手を握る手が汗ばんでくる事からも感じれる。
「降ろしてシャロンちゃん。そんな無理しないでいいから……走って街を出よう、ね?」
「無理だよぉお兄様……。さっきの爆発で街の人は異変に気がついてるし、とてもじゃないけど走って逃げるなんて不可能だよぉ。それにこの風の結界を解いたら、この結界壁が無くなって魔法の狙い撃ちされちゃうし……」
なるほど、この淡い青色の球体は身を守る為の盾にもなってるんだ。
それじゃ、
「この結界を張りながら走ったらどうかな? ボクを持ちながら浮かぶより少しは楽になるかも知れないし」
なんて提案してみるボク。
けれど、その言葉に首を横に振って、
「この魔法は風の結界を纏って空中を飛ぶ魔法だから、結界を纏うと浮かび上がっちゃうし、浮かばない様にして走る方が魔法のコントロールが難しいよぉ……」
そう返されたのだ。
どうしよう? このままじゃシャロンちゃんの身が危なそうだし……。
ふと考えながら、何気なく後ろを見れば、一つ、遠くの方で何やら輝くのを見つけたボク。
「あれ? 今何かが光った様な気がしたんだけど?」
「え? 何? お兄様」
と、言葉が零れた瞬間、目の前で何かが結界の外で大きく赤黄色の光を散らして、グンッ! と、やや大きくボク達を揺らしたっ!
「瞬遠撃烈火炎矢!?」
「え??」
「普通、数十本の燃え盛る炎の矢を飛ばす『烈火炎矢』の力を一つにまとめた、超長距離用の炎の矢の魔法ですっ! 炎の矢の標的までの距離によって威力が下がる特性を無くし、更にスピードまで上げた火炎中級魔法の一つですよぉ!」
そう説明すると、シャロンちゃんは顔色を曇らせて、
「一撃ずつなら何とか続けて二回まで防ぎ切れるけど……いっぺんに三本も四本もくらうと、流石に魔力が弱ってる今の私の風の結界じゃ貫かれて落下するかも……」
恐ろしい未来を零すのだ。
それって、今はいいけど、このままじゃ危ないって事だよね……?
ゴクリと固唾を飲み込むボクは、
「シャロンちゃん……避けてっ!!」
今、とても見たくない状況を目にしたりする。
それは、一つや二つや五つという生温いものではなく、ボク達の後方に無数に見せる嫌ぁ~な輝き達だった。
ボクと彼女と彼女の縁結び記
第二十五縁『ボクと血路と聖樹の日。それは鐘の音と共に訪れた道なのかも知れない……なんてボクには思えたんだ』
また何週間か後になっちゃうかも知れませんが……良かったらまた読みに来てみて下さいね☆
では、今度の第二十六縁にてお逢いしましょう(輝)、
あ、因みに、最近ですが『つぃったー』を始めました☆(だから何?w