3.叫び
赤から青へ。
駅へと歩みを進める俺は、疲れた体を引きずり横断歩道を渡る。
闇の中に光る青の信号。
疲労がのしかかる重い足取り。ゆっくりと進む町中では楽しげに歩くカップル、飲み会帰りの会社員がぞろぞろと練り歩いている。
(...あそこに向かう道はあったのかな。俺にも)
そんな事を考えながら、自身の半生を振り返ろうとしたその時。
微かな女性の声が聞こえた。
そこは暗く光のとどかない裏路地。かろうじて二人居ることが確認できた。
そのうち一人がこちらに気がついたのか手を向けてきた。
「...た、助けて」
心臓が跳ねる音がした。
その女性は今朝、満員電車で見かけた女子高生。こんな時間にどうしてこんな所に?と疑問が頭を過ぎるが、しかしその疑問を掻き消すように、彼女の腫れた顔が目に入った。
「...ッ!?」
女性の髪を鷲掴みにした男が低い声で俺に警告する。
「おい...さっさと失せろ」
殺気のこもったその声に脚が震えだす。
「...す、すみま、せ」
震えた声が情け無くこぼれ出た。見てはいけないものを見てしまった。
(ひ、人を...警察を呼ばないと!)
そう思い、帰路へ戻ろうとしたとき。微かに見えた彼女の怪我が過ぎる。
この場を離れている間に殺されるんじゃないか?
(...結構な出血だぞ...早く助けないとヤバいんじゃないのか)
しかしすぐに首をふり否定する。
(...いや、無理...無理無理、無理だ!俺には出来ない!)
ただの冴えないオッサンだぞ?そんな正義の味方みたいな...無理だろ。脚震えてるし。
それに、ほら...ニュースとかでさ、ああ言うのに関わって殺されちゃう奴、ね?あるだろ。
ましてや見ず知らずの人間の為に...無理だ。
命は大切にしないと...
いや、まて
俺の命って、そんなに大切か?
...。
俺の人生は...この先、多分明るくはない。
きっとあの会社で消耗され尽くすか、自分で見切りをつけて...この世を去る。
だったら
今、使ってもいいんじゃないか?
彼女のあの怪我...襲われているのは間違いない。理由はわからない。
でも、助けてと言った。
このまま見過ごせば、多分、死ぬまで後悔すんじゃないか。多分、俺はこのことを忘れることは無いだろう。
どうせ無価値の命だろ。
潰されるくらいなら、ここで潰すか。
...いや、違う。
ここで、使う。
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