拝啓 獣人さんがいるせかいより
ご都合、紆余曲折端折りまくりです
新芽萌ゆる季節となりました。
親愛なるお父様、お母様、そして皆々様はいかがお過ごしでしょうか。
私は今新天地におります…。
などという現実逃避をかましております私は、鈴木梨乃と申します。
齢は26の乙女です。ええ、乙女です。誰がなんと言おうと乙女です。
前文にて3月をにおわす表現をしていますが、実際の月はわかりません。
とりあえず今目の前に広がっている光景は春っぽいのでなんとなくです。
…「っぽい」という表現の理由は、ここが見知らぬ土地故です。
何故見知らぬ土地と断定するかというとですね?
みたこともない形状の草花(遠くに、顔のついた樹木、歯をガチガチ言わせているお花さんが見えるーー)、ふよふよとただよう羽のついた何か(ふふっ、妖精さんかな?)……
この地に来る前、私はまぎれもなく日本にいて、一日のルーチンワークを終えて大好きなお布団様に包まれて眠ったはずでした。それなのに。
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明るい日差しがあたり、朝だと告げている。
頭は起きているが、まだぬくぬくしていたい。
セットしたはずのアラームもまだなっていないので、布団に頭を潜り込ませて二度寝をしようとする。
ちちち…
(なんか鳥の声がやけに近い…)
おかしいな、アラーム音変えたんだっけ?
不思議に思い、離れがたいお布団様から顔を出す。と。
「あぇ?」
変な声が出た。だって。目に映りこんできたのは森。
森の中の広場に布団とわたし。
あ、木に小鳥がとまっている。さっきのはあの鳥かぁ。
っておい。ここどこだし。
布団から頭を出した状態でしばしフリーズ後、再起動した私は冒頭の現実逃避をすませた。
とりあえず掛け布団を羽織ったまま座り、自分の状況を顧みる。
森に布団敷いて寝てる。着ているものは昨日着て寝たスウェットに靴下。
うん、わかんない。余計混乱した。
ありえない状態にぐるぐると頭を悩ませていると、茂みがガサガサと音を立てた。
びくりと体を跳ねさせるも武芸や護身術をたしなんでいない一般人の私は再びフリーズする。
逃げなきゃいけないと思うも、体が咄嗟には動いてくれない。
どんどん近づいてくる音の方を凝視していると現れたのは…
「なんでこんなとこに人がいるんだ?」
二足歩行をして人語をしゃべる犬(狼?)だった。
わたしの脳は、理解をこえた存在の出現による驚きの余りシャットダウンした。
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そんな出会いからはや数ヶ月、彼(男性でした)ライナスに拾われ養ってもらって溺愛されてます。
急な話で申し訳ない。
怒涛の数ヶ月だったのだが詳しくは割愛させていただく。
この地は、人以外にも獣人やらドワーフにエルフといったような所謂地球で言うところのファンタジーあふれる世界らしい。
そして、地球から来た人間は「落ち人」といわれ、帰還した記録はないとのことだった。(しょぼん)
余談だが、私は両親ともにすでに他界している。親しくしていた親戚はおらず、友人なども指折り数えるほどなので、あちらに残してきた憂いもほぼない。いや、職場や住居に関してはどうなっているかは多少心配ではあるけれども。
それはおいといて、私が放り出されたこの土地では、獣人が主流とのことで純粋な血統の人間(ここでは純人というらしい)は珍しいとのこと。
んでもって、純人っていうのは獣人に好かれやすいものらしく、もとの世界では平均より下の見た目の私ですが、この地ではなかなか需要が高いようでして。
はい、ですよね。
ご想像通り、ハーレム状態になりました。
まさかのハーレム状態に辟易というか戦慄というか恐れ慄きました。
何故か女性にも好評ですのよ…(遠い目)
最初のうちはからかわれていると思ってたんですが、どうやら本気とかいてマジのよう。
そして美形に集られ迫られる日々…。
数日前までそんな体験したことないわたしのライフはガリガリガリガリ削り取られましたね。
やめろ、わたしのライフはすでにマイナスだ!むしろ生ける屍だ!!
と何度心の叫びをあげたことか。
そんな生活の中で私はライナスに惚れました。
ライナスの見た目は前述のとおり、二足歩行の白銀のわんこ…もとい狼である。
人の姿にもなれるらしいが、迫りくる周囲のイケ面(女性も含むので面)に疲弊して早々に愚痴を零していたのを聞いて、イケ面嵐の中での癒しであったの獣の姿でいてくれたのだ。
顔合わせるなり口説くとかいうこともせず、普通な態度で接してくれたのは彼だけだった。
そしてとどめはホームシックにかかり悲しんでいるときに優しくしてくれたこと。
(会いたい人がいるわけでもないのだが、やはり元居た環境が恋しくなるものだったらしい。)
素敵なもふもふ、低めなナイスボイスに慰められてイチコロコロコロ転がされました。
チョロいと自分でも思います。
でも、彼氏いない歴イコール年齢だったわたしに恋愛耐性などない。絆されるのは当然の理ですよね。仕方ない。(押切り)
そこから彼に色々とアピールをしまくったのですが、梨の礫で進展なし。
もしかしたら私に興味がないのかもしれないなぁとしょぼくれた時期もあったが、どうせなら思いを伝えてから思いっきりしょぼくれようと一念発起。
意を決して彼に思いを伝えたところ、両思いでした。
彼曰く私のアピールについては揶揄われている、または一時の気の迷いだろうと思っていたとのことで…。とっとと思いを伝えておけばよかった。無駄な時間を過ごしたものである。
「リノ、どうかしたのか?」
これまでの回想をしてぼんやりしていたわたしを心配してくれているライナスに微笑む。
「ちょっと幸せを噛み締めてただけだよ。」
答えれば彼も嬉しそうに微笑み、白銀のしっぽをブンブンふって抱きついてくる。可愛い。カッコいい。素敵過ぎる。わたしのライナスは最強だ。しかももふもふ!!この人に拾われてほんっとーによかった!!
「愛してるよ、リノ。」
「わたしもよ、ライナス。」
前略 お父様、お母様、友人、知人の皆々様。
わたくし鈴木梨乃は異世界でもふもふ且つ幸せな日々を堪能しております。 草々




