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転生じゃないのに転生って付けるのやめて欲しい

作者: 鳥野啓次

 なろうの転生の概念はガバガバもいいところだ。

 「元の世界で死んだ!」ここまではいい。しかしその直後、明らかに肉体年齢が青年で異なる世界に誕生しているパターンが多すぎる。

 最初から大人ということはつまり、最初から完成した状態で発生したということだ。それはイコールで、成長の概念が存在しない生物として誕生したということである。


 生まれた瞬間に完全な生物とは、その世界の法則でそのような形として発生する生物、ないしは何らかの超自然的法則によって生まれる概念生物だ。

 どこぞの神話の神様や、石像などに命が宿るパターンなどがこれにあたり、つまるところマテリアルボディを持った炭素系生物としてはありえない存在と言えよう。

 何故なら、炭素生物とはそのような物質でできた精密機械だからだ。偶然に自然物質が結合して生物として振る舞うことはまずないと言っていいレベルの分子集合体である。


 また、死した肉体に魂が宿って復活するというパターンもあるが、魂が宿った程度で壊れた精密機械が動くわけがない。それで動き出すようなら、それはゾンビかそれに準ずる存在だろう。

 つまり、それらフワッとした生物として誕生するなら確実に転生と言えるが、既存生物の完成状態として自然発生することはあり得ないと言っていい。



 しかし待って欲しい。何らかの魔法やら神様パワーで元の肉体が異なる世界に復活したのかもしれないじゃないか、という言い分もあるかもしれない。

 が、転生という言葉の概念を「死後に新しい肉体として発生すること」とおおらかに定義したとしても、それは「新しい肉体」ではないので転生ではないだろう。

 あえて言えば、「異世界復活」ないし「異世界再生」とでも定義すべきか。



 では次に、神様などが肉体を用意してくればパターンはどうなのか?

 確かに新しい肉体、新しい形態で異世界に発生していることになるので、転生と定義はできる。

 できるのだが、筆者はこれを転生とは認めたくない。その理由は主に二つある。


 まず神様が適当な理由で個人を優遇するわけないじゃん、という身もふたもない理由が一つ。

 神様が世界を管理する存在だとして、その管理する神様とはどう言った存在なのか。という問題があり、これには二つほどパターンが存在する。


 一つ目は神様システム説。システマチックに世界を管理するAIのような存在で、その場合バグが出たら逐次修正する程度のリアクションをする程度だろう。よって主人公だけが優遇されることは100%ない。

 修正不可能なバグだった場合はデリートする。それすらできずにシステムから独立するような魂があったとするなら、その魂はまず間違いなく転生のシステムに正常に関わることができないため、まず肉体を持つことが不可能だろう。

 どのみち主人公が自我を保ったまま都合よく転生する可能性はゼロに等しい。


 二つ目は神様に人格がある説。この場合何のために管理するのかという部分が問題になり、それは自分または神様の世界にとって利益になるから管理している以外に理由は存在しない。

 この場合でもやはりバグに対しては逐次パパッと修正する程度で、明らかに自分より劣った存在に対して優遇策を取ることはまずない。

 例えるなら、蟻の観察をしていて間違えて一匹を潰してしまったとして、それに対して謝ったりする人間がその作業をやるわけがないという話である。


 これらの理由により、神様からのプレゼントパターンは全否定させていただきたい。ぶっちゃけ説得力がなくて超つまらないと思うからという理由もあるが。



 そして神様プレゼントパターンを転生と認めたくないもう一つの理由が、個体としての連続性の問題である。


 転生とは新しい肉体、新しい形態として再誕することであると定義した場合、つまりこれは肉体としては一度完全に連続性が途切れていることを示している。

 卵(人間にも卵はある)から幼体として成長することが発生プロセスであるならば、一度四肢どころか脳も失われ、そこに思考能力の発生する余地はないし、そもそも脳の構造そのものも異なっているかもしれない。

 また、ゴーレムやゾンビや精霊などの不思議生物の場合、肉体を動かす仕組みは通常の生物とは明らかに異なるだろう。

 よって新しい肉体を動かすということは、前世の経験の大部分を捨てるということなのである。


 つまり逆を言えば、十全に動く肉体から再開した場合というのは、肉体性能、その動かしなど、経験のほとんどが継承されているということに他ならないのだ。

 肉体的経験の連続性を考えれば、死ぬ前の人生が継続していると言って過言ではない。

 まぁそれでも、新しい肉体には変わりないので百歩譲って転生と言えなくもないが、魂や存在としては転移しているだけとも言える。


 というか転移した時に勇者的パワーを神様がくれるのと何が違うのかと言いたい。

 不思議パワーが付与された肉体も元の肉体とは組成などが変わっているだろうことを考えれば「新しい肉体」と定義することすら可能であり、つまりこの二つに大きな差はない。

 ただちょっと見た目とパワーが変わっているだけの転移だろうと個人的には定義したいところである。




 と、まあ長々と書いておいて何だが、正直なところ「異世界転生」で検索してクソ小説読んで文句が言いたくなったからエッセイを書いたというだけの話である。

 赤ん坊から産まれてその世界を徐々に知っていくような話が読みたいのに、読者数を増やしたいがために「異世界転生」と無理やりつけているようなクソ小説が多すぎて邪魔すぎるのだ。


 また、ハイファンタジーで検索して異世界転生や異世界転移が出てくるのも個人的には文句が言いたい。

 現代の知識やキャラクターが混じる時点で、ファンタジーとしては純度が低すぎるのだから、「ハイ」ではないだろう。

 かと言ってローでもないし、ミドルファンタジーとでも定義して欲しいところだ。


 ストップザジャンル詐欺

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― 新着の感想 ―
[良い点] タグ検索で浅く検索すると膨大。ニッチに検索すると該当なし。それが『なろう』(他サイトでも同じですが)です。ある程度諦めましょう… [気になる点] (概念として)神様という存在がどんなものか…
[一言]  なるほど。転生に対してそんな考え方もあるのですね。 確かに神様、主人公贔屓しすぎ問題は往々にしてあると思います。 それに、転生したチート持ち主人公って、時として筋肉断裂するんじゃね? 酷い…
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