殺戮の依頼書
◆◇◇
「……んむ?」
しばらくの休憩を挟んで、ようやく5人の体力が回復した頃。口笛交じりに、異形兵の残骸を確認していた七川があるものを発見していた。
それは一枚の羊皮紙で、そこには『始末の報酬はウィチメルのティーハウス・ブラックキャットの前、零時に渡す』という文言と『百式の旅行魔女エンジェ』の署名があった。
「ねえ、これ」
七川は、すぐに残りの4人に声をかけてそれを見せる。
殺戮の依頼書。
これから推測すれば、どうやら殺戮者は百式の旅行魔女エンジェが仕向けた刺客だったらしい。
しかし、どうしてこの蒸気機関車を狙ったのか。
まさか、すでにリックたちの追跡を感知しているのか。
それとも。
「やつはもう俺たちから追跡されていることを知っているのかもな。それで刺客をこの機関車に放ったんだろうか」
リックがそう言って、嘆息をついた。
しかし杞憂だったようだ。
まもなく、七川からそれを受け取ったグリモワが微笑を浮かべて首を横に振る。
「いや、違う。たぶん、そいつは意図的にワタシたちを狙ったわけではない。もしそうだとすれば、真っ先にコンパートメントにいるワタシたちを見つけ出して暗殺することもできたはずだからナ。偶然、ワタシたちが乗り合わせてしまったんだよ。百式の旅行魔女が狙っていたのは、おそらくウィチメルに向かっていた敵国側の者たちだろう。中にはスパイのようなやつらも交じっていたのだと思うぞ、ワタシはな」
「なるほどなのです」
「それを聞いて、少々安心しました」
シアラとキアラはほっと胸をなで下ろした。
「いや、それどころか。追い風はわたしたちに吹いているよ」
七川は得意げに口笛を鳴らした。
「え?」
「だって、これで旅行魔女がウィチメルにいることが分かった。しかも、零時にティーハウスにいることまでつかめたんだ。つまり、決戦は零時だ。やつをそこで始末すればわたしたちの元に黒猫は帰ってくる。つまりはミッション達成というわけだよ」
「「うん、確かにね」」
間もなく。
「とりあえずは出るか」
「そうだね」
誰が言う訳でもなく、5人はそこから出ることを決めた。
だが、車両の外は、中とは違い、蒸し蒸しとしていた。
それに加えて、降りしきる小雨が一行の身体に容赦なく冷たい跡を付けていくのがよく分かった。
「…………」
ただ、幸運なのは機関車の停止した場所から国まで距離的に離れていないこと、か。
というわけで、5人はそれぞれの足で向かうことにした。
すなわち、「魔道国家ウィチメル(旧・魔女の国)」へ。
百式の旅行魔女との決戦の地へ。
刻一刻と『零時』が迫ってくる、その前に。




