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第7話 【収納】スキル、熟練度9999その6

「一体何がおるんじゃ……!?」


 ワシは貯水池の端まで寄って、下を覗き込む。

 虹色のキラキラとした靄のようなものが立ち込めており、やや見辛いが――

 しかしそんなものでは隠しきれない程の巨大な影が、そこにはあった。


「何じゃあいつは――!?」


 背の大きさで言うと、ワシの二、三倍はある。

 二足歩行の骨格だが、顔は恐ろしくも威厳あるドラゴンのもの。

 全身を覆う水色の鱗は、水晶のようにキラキラと輝きを放っている。


 そして巨大な巨大な剣を腰に二本佩き、背にも二本背負っている。

 美しく装飾の施された白銀の鎧も身に纏っており、まるで騎士のいで立ちだ。


 竜顔を持つ巨大な騎士――見た目の印象は、そのような感じである。

 胸元に七色に輝く宝玉のようなものが埋まっており、それがもやを放っていた様子だ。


 これまでとは明らかに別格の、強烈な迫力を感じる。

 瞑目して、動かないようだが――


 ギラッ!


 魔物が唐突に、目を見開く。

 その視線は、確実にワシに向いていた。


「……知りたいか? 人間の翁よ」


 そして、よく通る低い声で話しかけて来る。


「ぬ……!? 起きて……!?」

「ハアアァッ!」


 魔物が身を屈め、飛び上がる。

 一瞬にして、その巨体は貯水池の底から広場へと飛び出し、ワシの背後に着地をする。

 その重みで、ズゥンと足元が揺れた。


 ――巨体の割に、恐ろしく俊敏な身のこなしである。


「我はバーヴェル――魔王軍八魔将が一、水晶竜将バーヴェル……!」

「ま、魔王軍!? 八魔将じゃと――!?」


 魔族の軍の大幹部とされる存在である。それがこんな所に……!?

 しかし、ワシらが若い頃、このラーシア王国周辺で魔族軍の動きが活発化したことがあったが、このバーヴェルの存在など聞いたことは無い。


 知っていれば、ギント水道遺跡はもっと警戒されているはず。

 という事は、更にもっと昔――人と魔族との、世界規模の全面戦争があったという神話の時代から、ここに眠っていたという事か。


「長き眠りであった――我が眷属に少しずつ精気を集めさせ幾星霜……ようやく今、復活が叶った……!」


 そう言うバーヴェルの体の背面のからは、透明な管のようなものが何本も生えており、その先は丸いゼリー状の球体へと繋がっていた。

 その中には――人骨が何十人分も、何百人分も、びっしりと詰まっていた。


「ぬうっ!? あれは……!?」

「眷属に集めさせた、贄どもよ――精気を吸いつくすとこうなる」


 長い時間をかけて、ギント水道遺跡を訪れた冒険者達を秘かに捕らえ、復活の糧としていたのか――

 恐らく調査に来た騎士団の騎士や、バンゲル達も……?


「いや、あれか……!」


 バンゲルや彼の仲間の冒険者だけは、気を失っているが、まだ白骨化を免れている様子だった。騎士達の姿は見当たらない。という事はもう既に――


「まだ生き残っておる者がおる。そやつらを離せい!」


 言っても恐らく無駄だろうが――しかし、バーヴェルの返答は意外だった。


「よかろう!」


 ブチブチと管が引き千切れて、バーヴェルの本体と引き離される。


「戦うには邪魔な足枷よ! そなたは枯れた年寄りだが、我が眷属を退けてここに立っておる――我が復活が本当に成ったのか、確かめるには手頃な獲物だ! さあ、力の限り抗って見せろ!」


 両腰の剣を抜き、バーヴェルは二刀の構えを取った。


「血の気の多いヤツめ……! じゃが、相手になってやろうではないか!」


 バンゲル達を見捨てるわけにはいくまい――というのは建前だ。

 悪いが、それはどうでもいいといえばどうでもいい。

 ワシは己の力を試したい。そして自分の力に確証を得たいのだ。


 もし魔族の大幹部クラスの魔物を倒せるほどならば――

 ワシは堂々と胸を張って、ティナに会いに行けるだろう。

 いよいよ。60年もかかったが、ワシがティナに追いついた証。


 こいつはそれを得るための、いわば卒業試験だ。自らにそれを課そう!


「ぜぇぇぇいっ!」


 バーヴェルが強く、剣を振り下ろす。

 間合いは遠い――ワシには届かない。が――


 ズガガガガガガッ!


 『ソニックブーム』だ!


「ならばのぉっ!」


 ワシも『ソニックブーム』を放つ!


 真っ向から衝撃波同士がぶつかり、うねり、巨大な竜巻のようになって巻き上がって消えて行く。


「――ほぅ! 人間にしてはやる! そなたさては、【勇者】や【剣聖】か!?」

「いいや、単なる【収納】スキル持ちのじじいじゃよ!」

「フフッ! 冗談は止めておけ、我には分かる!」

「ま、どう思おうが勝手じゃがな!」


 再び『ソニックブーム』をお互いが撃ち合う。

 また、巨大な竜巻が巻き上がる。


 だが今度は――


 竜巻の中を通り抜けるようにして、向こう側から衝撃波が!


「こちらは二刀なのでな!」


 向こうの方が速射性で上回る――という事か。


 ズガガガガガガッ!


 目の前にまで迫って来る衝撃波。


「はあぁっ!」


 ワシは横に跳躍して避ける――

 が、そこに真っ直ぐに、バーヴェルが突っ込んでくる。


「そこだっ!」


 向こうにとって、ワシが横に飛んで避けるのは予測範囲内だったのだ。

 当然跳躍の隙を見逃さず、烈火のごとく踏み込んできたわけだ。


 ――しかし、ここまではワシも想定内!


「『気弾』っ!」


 真下に向かって『気弾』を放つと、体がふわりと浮き上がって動きの軌道を変える。

 ワシはバーヴェルの頭を飛び越えて、その背後に着地をしていた。


「ぬうっ!?」

「隙ありじゃあぁ!」


 ――後を取った!


「おぉぉぉぉっ! 『百烈突き』っ!」


 ズドドドドドドドドドッ!


「うおおぉぉぉっ!?」


 無数の突きが襲い掛かり、バーヴェルも叫び声を上げる。

 のだが――


 キンキンキンキンッ!


 ワシの突きは、バーヴェルの鎧や表皮の上を、乾いた音を立てて滑るのみ。

 ――傷がつかない!?


 バリイィィン!


 ついには全体にヒビが入り、剣が粉々になってしまった。

 ワシの技とバーヴェルの硬度とのぶつかり合いに堪えられなくなったのだ。


「ぬう……!? 剣の強度が足りんか!?」

「ハッハア! そんななまくらではな!」

「ならばこいつはどうじゃ!?」


 『気弾』!


 バシュウゥゥン!


「はぁッ!」


 バーヴェルは振り向きざまに右の剣を薙ぎ払い、『気弾』を斬り払ってしまった。


「なんと……!」

「いい技だ! 手に痺れが残るぞ!」


 裏を返せばその程度の威力、と言うわけだ。

 さすがは八魔将。それまでの敵とは格が違うということか。


「これで終わりとは言うまいな!?」


 ブゥゥゥン!


 続けて大きく一歩踏みこみ、左の薙ぎ払いが来る。

 飛び上がって回避――!


 そして着地しつつ、次の攻撃に備え――ようとした瞬間、体に電撃が走る。


「ごああぁぁっ!?」


 コシが痛いのである! こんな時に――! 思わずワシは蹲る。動けない。


「ならばこれを受けよ!」


 それを必殺の好機と見たか、バーヴェルの剣が激しい輝きを帯びた。

 胸の宝玉と同じ、七色の光だ。それが剣にも伝わっているのか。


「うおぉぉぉぉぉっ! 砕け散れえぇぇぇい! 『乱命波動撃』ッ!」


 バシュウウウゥゥゥゥン!


 剣は確実にワシを捉え、爆発するような光の柱がその場に生まれる。

 足元の床が大きく抉れ、クレーターのような破壊痕を残す。


 こんなものまともに貰えば、枯れ木のようなワシの体などコナゴナのはず。

 だが――


「ぬ……?」

「な、な何だと……た、確かに手応えはあったのに……! 我の『乱命波動撃』を喰らい、全くの無傷だと――!?」


 バーヴェルは恐れ戦いて、二、三歩と後ずさりをしていた。


 そう、確かにワシはまともにヤツの必殺技を喰らったはずが――

 不思議な事に、何とも無かったのである。

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