第19話 マルティナと屍竜使い9
「そうか、壊すといかんということか……!」
ならば――!
ワシはまだ無事なフレイルを持つガーディアンに突っ込む。
こちらの踏み込みの速度に、あちらは反応が全く間に合わない。
簡単に間合いを侵略。
フレイルを握った右手を、『黒竜鱗の大剣』の斬撃が切り落とす。
そして地面に落ちた無事なフレイルを拾い上げ、すかさず【収納】した。
「よし……! さて『武具変形』というが……!?」
フレイルの鎖が伸びていたから、ワシの場合刃が伸びたりするのだろうか?
ドシュウゥゥッ!
即反応して『黒竜鱗の大剣』の刃が伸びる。
そして、運悪くその先にいたガーディアンの腹を貫く。
刀身はそのまま、後ろの扉に突き刺さって穴を開けた。
「ほほ……! いい反応じゃわ! ならば……!」
腰を落として体を捻り、そのまま力任せに円を描くように剣を振り抜く!
「まとめて薙ぎ払ってやるぞいっ!」
ズガガガガガガガガガガッ!
壁をぶち抜き柱を斬り倒しながら、ガーディアン達を薙ぎ払った。
その一撃で、ガーディアン達は壊滅だ。
――部屋のほうも少々壊滅的に事になってしまったが。
「ふむ。ちとやり過ぎたか……? ティナには後で謝っておかねばのう――」
しかし一体ティナはどこに?
少々荒れてしまったが、部屋に手掛かりは無いだろうか?
ワシは部屋の中をぐるりと見渡す。
先程の伸ばした『黒竜鱗の大剣』の一撃により、物が散乱しているが――
倒れた箪笥の棚から、古ぼけた木箱が転げ落ちているのが目に入った。
先代女王の持ち物にしては、随分と質素な品だ。貧相とさえ言える。
それが逆に目立ったので、目に留まったのである。
細長いそれを拾い上げて、中身を見てみると――
中には、これもまた古ぼけて質素な、単眼鏡が入っていた。
「う……!? これは――!?」
見覚えのある品だった。
これかかつて、ワシがティナの誕生日にプレゼントしたものだ。
子供の頃はよく冒険だ探検だと無茶をするワシの後ろを、ティナはいつも怖い、心配だと言いながらついて来ていた。
ワシはティナが周りを見て教えてくれれば、危なくないと主張し誕生日にこれをプレゼントしたはず――
ティナは一生懸命これで回りを探り、ワシに危険を避けさせようとしてくれていた。
相手はダブルスキルで、しかも最高峰の【聖戦士】と【大賢者】を持つ天才だというのに――恐ろしい事をさせていたものだ。
だがあの頃のワシは、自分がティナの前に立ち、守りながら生きて行く事を疑っていなかったのである。若気の至りというやつだ。
「ティナ……まだこれを捨てずに持っておってくれたんじゃのう。こんなに大切そうな場所に――」
しんみりとしてしまう。やはりティナは、今でもワシを待っていてくれて――
ワシは箱の中の単眼鏡に触れる。すると――
【思い出の単眼鏡】
収納時、特技『気配察知』を使用可能。
情報が飛び込んでくる。
「おお……これがあれば――」
手掛かりがつかめるかもしれない!
ワシは大事にそっと、『思い出の単眼鏡』を【収納】した。
「これで大きな敵の気配を――」
探る事が出来るだろうか。
瞳を閉じて精神を集中してみる。
――分かる! 分かるぞ!
頭の中に敵や味方の気配と、その距離感を点で記したような球体図が浮かんでくる。
この感じだと、バーヴェルはまだ先程の王城付近の空に留まっている様子。
無数の敵の気配が近くにあり、あれから更に敵が集まっているようだ。
だがバーヴェルの事なので、心配はいらないだろう。あいつは強い。
敵がギュッと一塊になっているような密集具合でもあるので、まとめて縛り上げでもしているのかも知れない。
その他の気配は――? ワシは更に探り続け――
「……!? 下……! 地下か!? 巨大な気配を感じるぞい……!」
とても強力な、禍々しい気配がする。
只事では無い気配だ。
「そこにティナが……!? 行くしかないのう!」
ワシは部屋を出て階段に戻る。
構造は、下まで吹き抜けの螺旋階段だ。
ならば――
「伸びろっ!」
一階の床に突き刺さるまで、刀身を伸ばす。
ガスッ!
床に刺さる手応え。
「それいっ!」
柄を掴みながら階段から身を躍らせて――
「戻れいっ!」
ギューンと剣が縮んで元の長さに。
ワシの体は一階に運ばれていた。
「うむ! 移動にも便利じゃわい! さて地下への道は……!?」
巨大な気配はまだまだ下なのだ。
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