表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/45

第17話 マルティナと屍竜使い7

「数十年も前の約束を守り、修業を続けるとは……! そして相手もそなたを信じて、秘かに支え続けるとは……! 人の一生は短く、それだけに我々よりも一時一時に価値がある。それをそのように使うとは……! 美しいではないか……っ!」


 凶悪な人相? 竜相? のバーヴェルが涙を拭いながらうおんうおん言っているのは、ある種衝撃というか、何というか――


「お、おぬし……案外ロマンチストじゃのお。そんな風に言われるとこっぱずかしいわ。単に諦めが悪かっただけじゃよ。それに、ティナの考えはワシの想像に過ぎんしの」

「いいや、あちらもお主を待っているはずだ! 急いで確かめに行けばよい……! 全速力で飛ぶぞ!」


 グンとバーヴェルの飛ぶスピードが上がる。


 アンギャア――! アンギャア――!


 行く手に立ち塞がる飛竜。かなりの数が集まっている。

 その数は十は下らないだろう。


「どけええぇぇぇぇぇいっ!」


 気合十分のバーヴェルは、スピードを落とさず突っ込んだ。

 そして勢いを乗せた剣で、飛竜の翼を斬り刻む。

 堪らず飛竜は、地面に墜ちて行く。


「アッシュよ! 振り落とされるなよ!」


 更に空中での回し蹴り、反転して太い丸太のような尾による殴打を駆使して、血路を切り拓いていく。


「おう……! ワシも黙って見てはおらんぞ!」


 敵は多く、ワシの動きも制限される。

 こういう時には――ワシは呪文を詠唱し、発動をする。


「我が僕となり、出でよ炎よ赤き矢よ……! ファイアアローッ!」


 無数の紅蓮の火線が、王都の空に舞い踊る。


 まともに喰らった飛竜は地面に落ちて行き、避けようと動き回る飛竜同士が混雑して混乱を来たす。


「ならば我も続くぞ――! 『竜破撃』ッッッ!」


 バーヴェルの剣から、青白い色をした光で形成された、巨大な竜の顎が生み出された。


 グルオォォォォォォォォーーーー!


 それが唸りを上げながら空中を疾走。飛竜を次々に捉えて咥え――


 バシュウウウゥゥゥゥン!


 音を立てて弾けると、巨大な光の柱となって飛竜達を包み込んだ。

 ズタズタに引き裂かれた飛竜達が、次々と地面に墜ちて行く。


 ――前が開いた!


「突破する!」


 すかさず突破をするバーヴェル。上手く囲みを抜け出せそうだ。


「あれが『竜破撃』か……! 最後の弾け方が『乱命波動撃』に似ておるのう」

「うむ。あれは『生命の宝珠』に集めた力を『竜破撃』に乗せたもの、元はこの技だ」

「……『生命の宝珠』か。あれワシが持っておるんじゃが――?」

「くれてやる。あれは、我が封印を解くための借り物に過ぎん。こうなった以上、我には不要の長物よ――」

「元々お主のものではないのか?」

「そうだ」

「で一体どこの誰の――」

「む……新手だぞ!」


 そこで話が中断される。

 もうバーヴェルは王都の街上空を突っ切り、王城付近まで到達していた。

 だがそこに――それまでとは違う、迎撃者の姿が。


 竜の顔だが二足歩行の、人体に近い骨格――

 背に大きく開く翼。身につけた武器と鎧――

 大きさこそバーヴェルより一回り小さいが、見た目は酷似している。


 それが十人近く、こちらの行く手を阻んだのだ。


「!? あれは……!」

「……お主にそっくりじゃのう」

「ああ同じ竜人……ドラゴニュートだ――かつては我の部下だった者達よ……! おのれドルミナが……! 勇敢に戦ったあの者共を安らかに眠らせぬ気か……!」


 バーヴェルはギリギリと歯ぎしりをしている。

 元バーヴェルの部下だという竜人達は、先程のテントでのバーヴェルのように、目が禍々しい真っ赤な光を放っている。


 バーヴェルは復活した上で、支配されずに正気を保つという離れ技をやってのけているが、彼等にそれは難しいようだ。


「おやおやおや……? バーヴェル様じゃないっスか?」

「お久しぶりっスねえ――?」

「でもここは行かせませんよォ? ドルミナ様のためっス」

「……正気に戻れ! ドルミナはお前達を利用しているだけだ!」


 バーヴェルの説得も、しかし今の彼等には届かないようだ。


「そりゃああんたも同じっス!」

「あんたに従ってたら俺達死んだっス!」

「ドルミナ様の下なら死んでも生き返るから、安心して死ねるっス!」

「くっ……! アッシュよ、先に行ってドルミナを倒してくれ! 我はこやつらを食い止める! ドルミナが倒れれば、安らかに眠れよう……!」


 しかしその言い方には――気になる所があった。


「い、いいのか……!? それが事実なら、おぬしも――」

「構わん! 元々そなたに負けて散っていた命! 最後に美しい話を聞けて、生き返った価値があったわ!」

「……分かった!」

「ようし……! では少々荒っぽく行くぞ! それぇぇぇぇぇいっ!」


 バーヴェルはワシの首根っこをむんずと掴むと、王城の敷地に向けて思い切り投げ飛ばした!


「うおぉぉぉぉっ!? 本当に荒っぽいぞおぬし!」

「フッ――ここまで運んだのだ、文句を言うな!」


 表情の読み取りに食い竜顔だが――ほんの少し、微笑んだようにも見えた。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


『面白かったor面白そう』

『応援してやろう』

『続きをがんばれ!』


などと思われた方は、ぜひ積極的にブックマークや下の評価欄(☆が並んでいる所)から評価をお願い致します。


皆さんに少しずつ取って頂いた手間が、作者にとって、とても大きな励みになります!


ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ノベルピア様にて新作連載中!】
異世界鉄姫団 ~最強ロボオタJK達の異世界エンジョイ無双~

html>

◆◆ハイスペックでロボットオタクの女の子達が、ロボのある異世界に召喚されて楽しそうに暴れる話です! よかったら見に行ってみて下さい!◆◆
― 新着の感想 ―
[気になる点] 誤字報告  表情の読み取り『に食い』竜顔だが――ほんの少し、微笑んだようにも見えた。              ↓  表情の読み取り『難い』竜顔だが――ほんの少し、微笑んだようにも見…
[一言] トラゴニュートの皆さんが、語尾のせいで脳内イメージが某ゲームのペンギンっぽい何かに固定されてしまった
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ