第8話 おとぎの世界の王子様
ここは、人間たちが地球から遥か彼方遠く離れたおとぎの世界。そこでは、いつも輝きに満ちている。ある日、そこにある優雅な城でのことだった。
「今日も、世界は輝きに満ち溢れています…」
光の女神が謁見の間でこうつぶやいていると、王子が現れた。
「母上様、マジカルストーンを集め続けているプリンセスドールズの力になるために、人間界に行ってもいいでしょうか」
「いいでしょう。私のまな息子でありますから」
「そこには、空からやってきたチララもいる。彼のことも心配だ」
「ええ。では、気をつけてください」
「行ってきます」
光の女神に見守られながら、王子は人間界へと旅立った。
「人間界の輝きを守るために…」
光の女神は王子の無事と人間界の平和を祈りながら。
「王子、これが人間界へと向かう列車です!」
「ありがとうございます」
執事たちが、王子のために列車を用意する。
「それでは、行ってきます」
「行ってらっしゃいませ、王子さま!」
王子を乗せた列車が人間界へと向かって出発する。
しばらくすると、地球にやってきた。
「ここが、瑠璃色に染まる地球か…」
すると、列車は深夜の日本へ向かう。東京駅から新大阪駅と博多駅までを結ぶ東海道・山陽新幹線の線路に沿って、新横中駅に到着した。
「ここが、人間界か…なんて美しい世界なんだ」
王子は初めて訪れる人間界をこう思った。
朝が来ると、つぼみたちはいつものようにポートフロンティア学園中等部に登校していた。
「おはよう!」
「おはよう、つぼみちゃん」
「おはようございます。つぼみちゃん」
すると、何かを発見する。
「あっ、あれ、見て!」
「素敵なイケメンね」
「カッコイイです」
つぼみたちは、高校生らしき青年を見かけると、
「やあ、おはよう」
「おはよう!あの制服、高等部のものだよね?」
「そうだよ。今日からここに通うことになって」
「なるほど!私たちと一緒の学校だね!」
「海外からの帰国子女としてね」
「すごいね!」
青年は、海外からポートフロンティア学園高等部へやってきた転入生であることをつぼみたちに明かした。そんな青年はつぼみたちに、
「せっかくここで出会ったのだから、今日の放課後、君たちを僕の家に招待するよ」
「ありがとう!」
「じゃあ、しばらくしたらまた会おう」
「うん!」
つぼみたちは、出会ったばかりの青年の家に招かれることになった。
「ねえ、晴斗くん。高等部の転入生、なんだか気になるんだけど」
「ああ。僕もこの青年を登校中に見かけた。確か、多くの女子たちに大人気だといわれているようだ」
晴斗もその青年を知っているようで、
「じゃあ、晴斗くんも招かれたの?」
「そうだ」
「私たちと一緒だね」
「じゃあ、放課後に正門前で集合で」
「分かったよ」
晴斗もつぼみたちに同行することになった。
放課後、つぼみたちは青年の家に行く。
「どんな風の家なのかな?」
「今から楽しみです」
「僕も気になるよ」
「そうね」
そこにたどり着くと、西洋風の家がそびえ立っていた。
「すいません、誰かいますか?」
そこに、青年の姿が現れた。
「やあ、よく来たね」
「お邪魔します!」
「さあ、中に入って」
「ありがとう!」
つぼみたちは青年の家を訪問する。
「みんな、初めまして。僕はおとぎの世界の王子、プラチナム・シャイニング・エスポワール。母親は、光の女神と呼ばれているおとぎの世界の女王だ。僕のことはプラチナと呼んでほしい。そういえば、君たちの名前を教えてくれないか?」
「私、愛沢つぼみ!」
「私は雪海沙奈よ」
「私は野々原アリスです」
「僕は藤村晴斗です」
「覚えておくよ」
「よろしくね」
「よろしくお願いいたします」
「よろしく」
つぼみたちは、自分たちのことを紹介した。
「あの、どうしてここに来たの?」
「プリンセスドールズを支えていくためだ。実は、こう見えて光の女神の息子だからね」
プラチナは光の女神を母親に持つことを明かすと、
「これが本当の姿?」
「違う。でも、人間界ではこの姿で暮らしている。王子はこれと別の姿だからね」
おとぎの世界の王子として振る舞うときが白い髪なのに対し、人間界ではブロンドヘアなのがプラチナの人物像である。
そのうえで、
「今、僕がプリンセスドールズに期待していること。それは、ダイヤモンドのマジカルストーンを手に入れることだ。ダイヤモンドは、世界で一番美しくて輝いているものだからね」
とプラチナは語った。
その時、怪盗トリオがプラチナの家に潜入してきた。
「あら、今、何といいましたの?」
「だ、ダイヤモンドだけど?」
「私たちが探し求めているものをよく当てたのですわ!でも、今日のご用はまったく別のものですもの!」
「本日の魔獣はこちら!」
「影の魔獣だ!」
怪盗トリオの合図で、影の魔獣が現れた。
「さあ、変身よ」
「うん」
つぼみ、沙奈、アリスはプリンセスミラーでドールプリンセスに変身する。
「ピンク・ジュエル・パワー!」
「ブルー・ジュエル・パワー!」
「イエロー・ジュエル・パワー!」
「ドレスアップ!」
「愛のプリンセス・ラブリーピンク、見参!」
「水と氷のプリンセス・アクアブルー、見参!」
「花のプリンセス・シトラスイエロー、見参!」
「私たち、プリンセスドールズ!プリンセスステージ、レッツスタート!」
プリンセスドールズが現れた途端、魔獣がそちらに襲いかかってくる。
「さあ、切り取りなさい!」
「アルファ様、行くぞ!」
「決めるんだ!」
魔獣がプリンセスドールズの影を切り取る。
「キャー!」
「しっかりして!」
「シトラス!」
シトラスイエローの影が切り取られたことで、プリンセスドールズは大ピンチに陥った。
「やっちゃいなさい!」
アルファはこう自信を見せた、その時だった。
「そこまでだ、怪盗トリオ!」
「あれは!?」
「新しい敵が現れた!」
そんなプリンセスドールズの前に、王子の姿のプラチナが現れた。
「待たせたね。これなら、魔獣をより浄化しやすくなった」
「私たちは一体何をすればいいの?」
「切り取られた影を狙うんだ」
「はい!」
「プリンセスステージ、ライブスタート!」
その後、プリンセスドールズによる魔獣の浄化がはじまった。
「暗くて深い 闇の向こうに」
「一人さびしく たたずんでいた」
「だけどもう 怖がらないで」
「それは迷いを 断ち切ったしるし」
「春風に向かって 旅立っていく」
「さあ 夢の扉を開こう」
「輝く未来に向かって 放つよ私だけのメロディ」
「愛を守るため みんなを守るために」
「きらめく世界に奏でる 私とあなたのハーモニー」
「あなたのそばにいる それがプリンセスなんだから」
「乙女の愛!ピュア・スイート・ハート!」
「乙女の美しさ!アクア・プリズム・ブリザード!」
「乙女の勇気!ハニー・フローラル・セラピー!」
プリンセスドールズはそれぞれの必殺技を繰り出して、切り取られた影を消滅する。
「今だ、魔獣を消滅するなら」
今度は合体攻撃で魔獣を消滅する。
「輝く未来に向かって 放つよ私だけのメロディ」
「愛を守るため みんなを守るために」
「きらめく世界に奏でる 私とあなたのハーモニー」
「あなたのそばにいる」
「みんなのためにいる」
「それがプリンセスなんだから」
「今こそ、心を一つに!プリンセス・トリコロール・イリュージョン!」
プリンセスドールズがそれぞれのシンボルマークを描き、魔獣に向かって放つ。すると、魔獣は跡形もなく消えていった。
「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」
とマジカルストーンの気配を察知した。マジカルストーンが落ちていく方に行くと、
「キャッチ!」
とチララがマジカルストーンを回収することに成功した。それをつぼみのプリンセスミラーに認識して、
「オパール。主に火成岩または堆積岩のすき間に、ケイ酸分を含んだ熱水が充填することで含水ケイ酸鉱物としてできる。そのほかにも、埋没した貝の貝殻や樹木などがケイ酸分と交代することで生成されたり、温泉の沈殿物として生成されるなど、各種の産状がある。特に、樹木の化石を交代したものは珪化木と呼ばれる。オーストラリアでは、恐竜や哺乳類の歯などの化石がアパタイトからケイ酸分に入れ替わり、オパール化して発掘されたこともある。透明なマジカルストーンだ」
「それではまた次回、輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」
プリンセスドールズが勝利宣言する一方で、
「もう、今日も負けちゃったじゃないの!」
「なんだか俺たち」
「とっても嫌な感じ!」
怪盗トリオはこう嘆いてどこかに飛ばされていった。
つぼみは、影の魔獣との激闘の末に手に入れたマジカルストーンをプリンセスポッドに入れる。
「これで、私たちが手に入れたマジカルストーンは全部で九個ね。プリンセスポットも少しずつだけど彩りが増えてきた」
「順調に集めているようで、ほっとしている」
「私たち、これからもマジカルストーンをいっぱい集めなくちゃね。守りたい。大切なものを」
「一生懸命、がんばります」
つぼみたちは、プラチナの前でこう誓う。それを晴斗は、
「つぼみたち…いや、プリンセスドールズによって世界の輝きは守られている。それにしても、彼女たちが放つ輝きは本物のようだ」
とつぼみたちがプリンセスドールズとしての実力を認めているようだった。
一方、その頃怪盗トリオはネメシス財団本社ビルで反省会をしていた。
「今日の敗因を探るため」
「どうすればプリンセスドールズに勝てるのかを見つけるため」
「反省会、始めますわ!」
「ガッテンだ!」
今回もなぜプリンセスドールズに負けた理由を語り始めた怪盗トリオ。そこに、ドクターが現れた。
「ドクター!」
「今回はどうかね?」
「それが、ダメでした…」
「いつも何をやってんだ、地下倉庫課。次という次こそはしっかりしろ」
「り、了解…」
「そういえば、お前たちに会いたいという人がいる。ちょっとついてこい」
ドクターは怪盗トリオを会議室へと案内する。
そこで待っていたのは、一人の少女だった。
「説明しよう。我がネメシス財団が生み出した闇のプリンセス・ダークミラージュだ」
「よろしく」
「よ、よろしくお願いいたします」
ダークミラージュは怪盗トリオにあいさつすると、
「甘えは絶対許さない」
「そうだ。では、罰として今回はトイレを清掃してくれ」
「さ、行くですわよ…」
「が、ガッテンだ…」
怪盗トリオはトイレへと足早に向かった。
その後、ダークミラージュはドクターに、
「ちょっと待ってくれ」
「お父様、どうかしました?」
「あるものを手に入れた。これを君に託してくれないか?」
「ありがとう、お父様」
「では、ダークミラージュ、これからの活躍に期待しているぞ」
「地下倉庫課のことは任せてください」
「さらばだ」
ドクターは、ダークミラージュのもとを去っていった。
「プリンセスドールズ、あなたたちのことを絶対に潰してみせる。だって、私は『輝き』という言葉の意味が一番嫌い…そう、ダイヤモンドはこの手にずっと離さない!」
ダークミラージュの左手には、ドクターから託されたダイヤモンドのマジカルストーンを肌身離さず握りしめていた。