第5話 力になりたくて
ラブリーピンクがわかば幼稚園のピンチを救った翌日、ポートフロンティア学園中等部での休み時間でのこと。
「そういえば、昨日の夜のニュース、見た?」
「ラブリーピンクが大活躍だったね!」
「すっごく目立ってた!」
クラスメイトの話題が昨日のことでもちきりとなっている中、つぼみと沙奈、晴斗はさらなるドールプリンセスの存在について語る。
「そういえば、二組の野々原アリスという少女を知っているか?」
「もちろん。知ってるよ。クラス委員で頭がいいと巷では噂になっているの」
「たしか、昨日わかば幼稚園で見かけた気が」
「実は、彼女もドールプリンセスだ」
「えっ!」
「本当に!?」
「ああ。黄色いプリンセスジュエルを首にかけていてね。プリンセスジュエル・ホワイトも身に着けていた」
「それって、ドールプリンセスであることの証だよね?」
「そうよ。ドールプリンセスとして活動していることに加えて、おとぎの世界に行くために必要なものなの」
晴斗は、つぼみと沙奈にアリスもドールプリンセスとして活動していることを伝えると、つぼみと沙奈は驚きを隠せない。
「それじゃあ、会いに行こう」
「なぜドールプリンセスになったかを知るためにね」
つぼみと沙奈は、アリスの元へと向かう。
そこには、アリスが一人で本を読んでいた。
「アリスちゃん!」
「あっ、愛沢さん、雪海さん」
「こっちにきて!」
「分かりました」
アリスがつぼみと沙奈の元に行く。
「みなさんはじめまして。私は一年二組のクラス委員を務めております、野々原アリスです。よろしくお願いいたします」
「私、愛沢つぼみ!つぼみと呼んでね!」
「私は雪海沙奈。よろしくね」
自己紹介のあと、つぼみと沙奈はアリスになぜドールプリンセスになったのかを尋ねる。
「アリスはどうしてドールプリンセスに?」
「それは、ある日の夜のことでした。星空がとてもきれいに見えた日の夜、私は自宅にいました」
それは、つぼみがラブリーピンクに覚醒する三か月前のこと。アリスはその時、自分の部屋にいた。
「このままでいいのでしょうか…」
当時のアリスは、自分のことについて悩んでおり、友達もできず学校にいけない日々を過ごしていた。
「どうしたら、自分の殻をやぶれるのでしょうか…」
すると、夜空に一筋の流れ星が。
「あっ、流れ星です!」
アリスが流れ星にお願いをする。
「なりたい自分に生まれ変わりますように…」
すると、アリスのベッドにプリンセスミラー、プリンセスジュエル・イエローとプリンセスジュエル・ホワイトがあった。
「これは、もしかして!」
こうして、アリスはドールプリンセスになった。
それから、つぼみはなぜ自分たちとともに戦ってくれないかをアリスに質問した。
「どうして私たちの仲間に加わらないの?」
「すいません、それはちょっと…」
「アリス!」
「待って!」
「ごめんなさい!」
アリスは突然、つぼみと沙奈のもとを去ってしまった。
「どうして私たちと協力しないのかな…」
つぼみはアリスが気になる様子。
その頃、買い物客に変装した怪盗トリオはアリスの自宅であるお花屋さんに潜入していた。
「あら、きれいなお花ですわ」
「これ、すごくいいぞ!」
「おばさん、すいません!このお花をください!」
「はい!じゃあ、お釣りを…」
「いだだいたのですわ!」
「綺麗なお花をゲットだ!」
「おばさん、あばよ!」
怪盗トリオはお花を強奪すると、アリスの母親でお花屋さんのオーナーである野々原花子は、
「キャー!強盗!」
と大きな声で叫んだ。
そのことをアリスが電話で伝えると、
「もしもし?」
「キャー!アリス、助けて!」
「そ、そんな…」
「花屋が大変なの!」
「嘘でしょ!?」
アリスは言葉を失っていた。
その時、怪盗トリオはポートフロンティア学園高等部の花壇で魔獣を生成していた。
「さあ、魔獣ちゃんがそろそろできますわ!」
「ワクワクドキドキだ!」
「楽しみ!」
「そんなことより、早く準備するのですわ!」
「ガッテンだ!」
ベータとガンマは、アルファの指示に従う。
「大変だ!怪しい予感がする」
チララが怪盗トリオと魔獣の気配を察知すると、
「また魔獣が現れた!」
「とにかく行きましょう!」
つぼみと沙奈は、魔獣のいる花壇へと向かう。
そこには、怪盗トリオの姿があった。
「あら、また会うことができて本当に光栄ですわ」
「本日の魔獣はこちら!」
「花園の魔獣だ!」
怪盗トリオの合図で、ひまわりやチューリップなどの色とりどりの花をあしらった花園の魔獣が現れた。
「つぼみちゃん、変身よ」
「うん」
つぼみと沙奈は、プリンセスミラーでドールプリンセスに変身する。
「ピンク・ジュエル・パワー!」
「ブルー・ジュエル・パワー!」
「ドレスアップ!」
「愛のプリンセス・ラブリーピンク、見参!」
「水と氷のプリンセス・アクアブルー、見参!」
「プリンセスステージ、レッツスタート!」
ラブリーピンクとアクアブルーが現れた途端、アリスが現れた。
「私は、どうすれば…」
と見届ける中、
「さあ、はじまりですわ」
「今日は、すごく手強いぞ!」
「ついていけるか?」
ドールプリンセスと魔獣の戦いの火蓋が切られた。
「さあ、やっちゃいなさい!」
ラブリーピンクとアクアブルーは、魔獣との戦いに大苦戦してしまう。そんな中、アリスは
「何もできません、私…」
と言うしかなかった。
しかし、その時だった。アリスが身につけているプリンセスジュエル・イエローから要請が現れた。
「さあ、君も戦って。ドールプリンセスのピンチを救えるのは、君しかいないの。このプリンセスジュエル・イエローで変身よ」
「は、はい!」
「行くわよ」
「一生懸命、頑張ります!」
アリスは、プリンセスミラーでドールプリンセスに変身する。
「イエロー・ジュエル・パワー!ドレスアップ!」
アリスが黄色い光を包む。
「花のプリンセス・シトラスイエロー、見参!」
パフスリーブとバルーンスカートが特徴で黄色と白を基調としたコスチュームに小さなカノチェがついたオレンジ色のセミロング姿のシトラスイエローがラブリーピンクとアクアブルーの目の前に現れると、
「新しいドールプリンセス!」
「かわいい衣装だね!」
「あ、ありがとうございます」
シトラスイエローは照れながら答えた。
「心のトゲトゲ、癒して見せます」
そして、シトラスイエローがラブリーピンクとアクアブルーの仲間に加わった。
「怪盗トリオ、もう遊びはおしまいよ。さあ、私たちのステージの幕が上がる!」
ラブリーピンクが怪盗トリオに忠告すると、
「プリンセスステージ、ライブスタート!」
ドールプリンセスによる魔獣の浄化がはじまった。
「暗くて深い 闇の向こうに」
「一人さびしく たたずんでいた」
「だけどもう 怖がらないで」
「それは迷いを 断ち切ったしるし」
「春風に向かって 旅立っていく」
「さあ 夢の扉を開こう」
「輝く未来に向かって 放つよ私だけのメロディ」
「愛を守るため みんなを守るために」
「きらめく世界に奏でる 私とあなたのハーモニー」
「あなたのそばにいる それがプリンセスなんだから」
ドールプリンセスがワンコーラス歌い終えた後、
「さあ、シトラスイエローの番だよ」
「歌って!」
「はい!」
今度はシトラスイエローのソロパフォーマンス。
「輝く未来に向かって 放つよ私だけのメロディ」
「愛を守るため みんなを守るために」
「きらめく世界に奏でる 私とあなたのハーモニー」
「あなたのそばにいる」
「みんなのためにいる」
「それがプリンセスなんだから」
シトラスイエローがソロパフォーマンスを行った後、
「乙女の勇気!ハニー・フローラル・セラピー!」
とプリンセスバトンロッドで花の形を描いて、魔獣は消滅した。
「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」
とマジカルストーンの気配を察知した。マジカルストーンが落ちていく方に行くと、
「キャッチ!」
とチララがマジカルストーンを回収することに成功した。それをアリスのプリンセスミラーに認識して、
「シトリン。黄色く光るマジカルストーン。花の魔法を使えるよ」
「プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」
ドールプリンセスが勝利宣言する一方で、
「もう、また負けちゃったじゃないの!」
「ちくしょう!」
「次という次こそ絶対に勝つ!」
怪盗トリオはこう捨て台詞を吐いて、未来世界へと帰っていった。
「そういえば、先程はご心配とご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ございませんでした」
アリスがつぼみと沙奈に謝ると、
「いいわよ。許してくれるなら」
「気にしないで」
と受け入れた。そして、
「これからは、三人力を合わせて頑張ろうね!」
「三人なら、絶対に怖くない!」
「三人の力を一つにして、一生懸命、頑張ります!」
と意気込んでいた。
「私と沙奈とアリスの今の気持ち、すごくキュンキュンしてる!」
「友情って、本当に素敵ね!」
「さすがです、つぼみさん、雪海さん!」
「私のことは沙奈でいいよ!」
「ありがとうございます!」
「これからずっと一緒だね!」
三人がこう語ると、
「決めぜりふ、どうするの?」
「私たち、プリンセスドールズ!」
「というのはどうかな?」
「賛成です!」
「これで決まり!」
「プリンセスドールズ、誕生ね!」
こうして、愛沢つぼみ・雪海沙奈・野々原アリスからなる女子中学生三人組のプリンセスドールズが誕生した。
一方、プリンセスドールズに惨敗した怪盗トリオは、ネメシス財団の本社ビルにある怪盗トリオの基地で反省会を行っていた。
「このカップヌードル一個を」
「三人で食べなければならないのか…」
「もう嫌だ、こんなブラック法人…」
すると、いつもプリンセスドールズによって事業が妨害されていることに業を煮やしているドクターが現れた。
「お前たち、一体何をやっているんだ!罰としてこの倉庫一体を掃除してくれ!」
「り、了解…」
プリンセスドールズによって業務の失敗が続いている怪盗トリオは、地下倉庫の清掃を行うことになった。
その時、ドクターは、
「いいか、プリンセスドールズ、忠告しておく。ダイヤモンドのマジカルストーンをどっちが早く手に入れるのかを勝負しようではないか。世界で一番輝いているとされているダイヤモンドと命をかけて、我らがネメシス財団にかかってこい」
と宣戦布告した。