第38話 ピュアな心で氷を溶かせ!
カレンが幼稚園児くらいの見た目に成長したある冬の日、つぼみたちはカレンとともにお出かけに行く。
「今日は、どこへ行こう?」
「赤レンガ倉庫にある冬季限定のスケートリンクに行くよ!」
「今日から開始です!」
「ついにスケートの季節が来たわ!」
「楽しみ!」
カレンは、初めてのスケートを楽しみにしているようだ。
「ここが、アイススケートを楽しめるスケートリンクよ!」
「すごい人だかりですね!」
つぼみたちはスケート靴に履き替えて、リンクへと向かう。
しかし、カレンは初めての氷の上に大苦戦。
「うまく滑れないよ」
そんなカレンのために、蘭はお手本を見せる。
「カレン、見て!」
「すごい、すごい!」
蘭が、左足を上げたスパイラルにレイバックイナバウアーを披露したことに、カレンは大喜び。説明しよう。スパイラルとは、フリーレッグを腰より高い位置にキープして滑ることを言う。インサイドエッジかアウトサイドエッジか、前向きか後ろ向きか、フリーレッグの位置が前か横か後ろかによってポジションが区別される。また、イナバウアーとは、足を前後に開き、つま先を180度開いて真横に滑る技である。ストローク後に、長い距離または時間を、ある姿勢を保ったまま滑ることを「ムーヴズインザフィールド」という。イナバウアーはそのうちの、両足のトウ(つま先)を外側に大きく開いて横に滑る「スプレッドイーグル」の変形であり、片方のひざを曲げ、もう片方の足は後ろに引いて伸ばした姿勢で滑る。
「行くわよ!」
さらに、蘭がダブルアクセルを跳ぶと、
「蘭、かっこいい!」
カレンは思わず笑顔を見せた。
そんな中、
「怪しい音楽が流れてきましたね」
「何それ?」
「闇の力が近くに迫ってきているわ!」
と、スケートリンクにチャイコフスキーの白鳥の湖の音楽が流れてきた。
「オーホッホッホッホッホ!一般庶民の皆さん、耳を傾けるのですわ!」
曲が盛り上がっていくと、怪盗トリオが神出鬼没に現れた。
「本日の魔獣はこちら!」
「凍結の魔獣だ!」
怪盗トリオの合図で、氷でできた巨大な魚をイメージした凍結の魔獣が現れた。
「さあ、やっちゃいなさい!」
「ガッテンだ!」
魔獣は冷凍ビームを放ち、次々と人々を凍らせていく。
「カレン、ここで待ってて!」
「あい!」
カレンは安全な場所へ身を寄せて、
「さあ、変身よ」
「うん」
つぼみ、沙奈、アリスはプリンセスミラーで、蘭はプリンセスムーンスターで、琴音はエースミュージックポッドで、それぞれドールプリンセスに変身する。
「ピンク・ジュエル・パワー!」
「ブルー・ジュエル・パワー!」
「イエロー・ジュエル・パワー!」
「スター・アンド・ムーン!」
「スカーレット・プロミネンス!」
「ドレスアップ!」
「愛のプリンセス・ラブリーピンク、見参!」
「水と氷のプリンセス・アクアブルー、見参!」
「花のプリンセス・シトラスイエロー、見参!」
「星と月のプリンセス・トウィンクルパープル、見参!」
「炎のプリンセス・スカーレットエース、見参!」
「私たち、プリンセスドールズ!プリンセスステージ、レッツスタート!」
プリンセスドールズが現れるも時すでに遅し。スケートリンクにいた人々はみんな、魔獣によって氷漬けになってしまった。
「いいですの?もっともっとやっちゃいなさい!」
「ガッテンだ!」
ベータとガンマがプリンセスドールズの元へ襲いかかってくる。
「私たちも行くよ」
「うん」
それでも、プリンセスドールズもすぐさま反撃に出る。
「重力なんか関係ないのです!」
「わっ!何をするんだ!」
ラフマニノフのピアノ協奏曲がかかると、シトラスイエローは体重の思いガンマをリフトで持ち上げる。説明しよう。リフトの本来の意味は、男性が女性を頭上に持ち上げて降ろすことを指す。
「め、目が回る…」
「私はこれだけ回転しても平気でいられるわ」
アクアブルーがベータを相手にデススパイラルで回転する。説明しよう。デススパイラルとは、フィギュアスケートにおけるペアでの必須要素である。本来は男性と女性が手をつかみ合い、男性が中心となり女性をその周りで回す。女性の腰と頭が女性のスケーティングレッグの膝より高い位置にあってはいけない。また少なくとも一つの体勢で男性の臀部がピボットレッグの膝より高い位置にあってはならない。
「回り続けなさい!」
「ぐるぐる回されやがって…!」
ベータとガンマがスピンしているうちに、魔獣の動きは混乱状態になった。
すると、光の女神がおとぎの世界から現れて、
「今こそ、ピュアロイヤルメイクドレッサーの封印を解くのです」
とプリンセスドールズにアドバイスを送り、
「さあ、五人の力を、今ここに集うとき」
プリンセスドールズはピュアロイヤルメイクドレッサーに付属しているペンで華やかにメイクアップする。それから、ペンをマイクに変えると、
「プリンセスステージ、ライブスタート!」
ピュアロイヤルメイクドレッサーでパワーアップしたプリンセスドールズによる魔獣の浄化がはじまった。
「ウインクだけはなぜか」
「うまくできない」
「笑顔のまま 毎日を」
「過ごしてる」
「選挙の日などはなんか」
「出かけたくなる」
「正午まで数えると」
「眠ってしまう」
「抱きしめて」
「悲しくなったときは」
「抱きしめて」
「今は」
「もう大丈夫だよ」
「Yeah! Yeah! Lucky Every Day!」
「無限の可能性」
「みんなみんな」
「同じ」
「ひとりぼっちじゃない」
「Dash! Dash! Jumpingしよう!」
「心に翼がある」
「その先は」
「未来」
「Boys & Girls Don’t Think Feel!」
「今こそ、力を一つにするとき!プリンセス・ピュア・エクストリーム!」
プリンセスドールズが星型にフォーメーションを形成して、魔獣にマイクを向ける。すると、プリンセスドールズが、
「アンコールはお断り」
と言って、魔獣は跡形もなく消えていった。
「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」
とチララはマジカルストーンの気配を察知した。マジカルストーンが落ちていく方に行くと、
「キャッチ!」
とチララがマジカルストーンを回収することに成功した。それをつぼみのプリンセスミラーに認識して、
「アイスクオーツ。氷でできたマジカルストーンだ」
「それではまた次回、輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」
プリンセスドールズが勝利宣言する一方で、
「もう、今日も負けちゃったじゃないの!」
「なんだか俺たち」
「とっても嫌な感じ!」
怪盗トリオはこう嘆いて未来世界へと帰っていった。
「これでもう一安心ね」
その後、氷漬けにされていた人々は、氷が解けて動けるようになった。
その後、蘭はつぼみたちに、
「実はね、私、フィギュアスケートの選手になることを目指しているの。将来は、オリンピックや世界選手権、グランプリファイナルで金メダルをとることを目標にしているわ」
と衝撃の事実を伝えると、
「私たちも応援しているよ」
「オリンピックと世界選手権とグランプリファイナルを同時に優勝することは、夢ではないのです」
とつぼみたちは蘭にエールを送った。
「当面の目標は?」
「ノービスの大会で優勝することよ。三年後にシニアに上がるから、七年後のミラノオリンピックで金メダルをつかむために」
蘭は、当面のことにも触れた。
「これからここで演技するから、見ていて!」
蘭がラベンダーパープルのフィギュアスケートの衣装に身を包んで、この日のためだけの特別な演技を行う。
「星空蘭さん、ポートフロンティア学園中等部」
場内のアナウンスで蘭がリンク上に現れると、会場は大歓声に包まれる。
「がんばって!」
そんな声を胸に、蘭はリンクの中央に立った。曲は、ショパンのノクターン。
「まずは、私の代名詞!」
冒頭の大技のトリプルアクセルを綺麗に着氷する。説明しよう。アクセルとは、空中での回転の方向が反時計回りの場合、左足の(時計回りなら右足の)アウトサイドで前向きに踏み切って跳ぶジャンプである。このジャンプは、右足バックアウトサイドに重心を乗せた状態から、重心を左足フォアアウトサイドに移動させると同時に、右足を回転方向と同じ方向に振り上げ跳び上がり、なおかつ振り上げた右足をそのまま空中での軸とすることができるため、6種類のジャンプの中で最も回転力、飛距離を得やすいジャンプとなっている。しかし、前向きに踏み切り、後ろ向き着氷のため他のジャンプより半回転多く回らなければならずその難易度は最も高い。評価の基礎点も他ジャンプとは一線を画し最も高いものとなっているが、その分出来栄えによる加減点(GOE)幅も大きく設定されている。
「ここからは、私の真骨頂!」
続く三回転ルッツと三回転トゥループのコンビネーションジャンプとバタフライからのフライングシットスピン、それに足替えのコンビネーションスピンをミスなく決めると、
「みんな、見てて!」
華麗なステップシークエンスからの三回転フリップは、片手を挙げて跳んでいた。説明しよう。フリップとは、空中での回転方向と同じ方向のターンから即座に左足エッジに右足のトウを突いて跳ぶジャンプである。フリップジャンプでは、左足インサイドのエッジが描くカーブから生まれる回転力と、軌道の内側にトウを付く事によって後方への推進力がコンパスのように変換された回転力の2つが主な回転の原理となる。ただし、右足を引く際に体が回転方向とは逆向きに開く事になる点で難易度が上がる。ちなみに、後ろ向きの助走から左足(ジャンプの回転方向が時計回りなら右足)のアウトサイドエッジで跳び上がりのモーションに入り、離氷の瞬間に右足(時計回りなら左足)のトウを突き回転及び踏み切りの補佐とするジャンプをルッツジャンプという。
「すごいね、蘭!」
「トリプルアクセルに、三回転と三回転の連続ジャンプができるなんて、すばらしいよ!」
と、最後のレイバックスピンを決めてフィニッシュのポーズをとると、会場からは割れんばかりのスタンディングオベーションが鳴りやまなかった。説明しよう。レイバックスピンをンとは、アップライトスピンの姿勢で上体を後ろに反らしたまま行うスピンである。
「とてもいい演技だったよ!」
「素晴らしいシアターに引き込まれました!」
「さすが、蘭ちゃん!」
「感動したわ!」
「みんな、ありがとう!これからも、応援よろしくお願いします!」
こうして、蘭は、ドールプリンセスとフィギュアスケーターの両立を宣言するのであった。
一方その頃、未来世界にあるネメシス財団本社ビルの地下倉庫では、怪盗トリオがダンスを踊っていた。
「さあ、踊りますわよ!」
白鳥の湖のメロディーに乗せて、怪盗トリオが踊っていると、
「わ!」
「またドクター様だ!」
と、ドクターが突然現れた。
「また、本当にやらかしたんだな。次という次こそは絶対に許さない」
と怒りを露にしたうえで、
「大みそかまでもう時間がないぞ」
と怪盗トリオに奮起を促した発言を残して、どこかへと去っていった。
その後、ドクターは自分の部屋へと向かう。
「ついに孵化したのか…」
と、魔獣の卵がかえったことにこう感じたうえで、
「2019年12月31日の横中、我々ネメシス財団は発表会をここで行う。その日を覚悟してくれ、プリンセスドールズ、いや、すべての横中市民よ」
と、横中にネメシス財団が襲来することを予告した。




