第35話 最強!スカーレットエース登場!
その日の夕方、プラチナの家にいるチャミィはあることを琴音に伝える。
「明かりの灯る大きなお家に行ってくれ」
「どうして?」
「キミに伝えなければならないことがある」
「仕方ないわね。では、行ってくるわ」
「気を付けて」
琴音はプラチナの家を出る。
「ここが、ある少女の家ね…」
琴音はチャミィからの言葉を頼りに、つぼみの家にたどり着く。
「失礼するよ」
すると、つぼみの家に琴音が現れた。
「あなたは、誰なの…?」
「神門琴音。ポートフロンティア学園中等部で一年一組の担任を務めている神門あかりの姪よ」
つぼみの問いかけに、琴音は神妙な気持ちで答えた。
「そう。今日は大事なことを伝えに来たの。今年の大みそか、再びネメシス財団の発表会があるらしいわ」
「どういうこと!?」
「今度は、パールのマジカルストーンが埋め込まれた魔獣を連れて、ネメシス財団が再び横中に凱旋するらしいわ。ダイヤモンドのマジカルストーンが埋め込まれたものより強い力を持っているらしいの」
琴音はつぼみに例の件を伝える。
「そのことを、ほかのドールプリンセスたちにも伝えてほしい」
「分かったわ」
「では、そろそろ帰るね」
「あっ!ちょっと待って!」
琴音はつぼみの家を去ってしまう。
「私たちと同じドールプリンセスなのかな…大みそかまでに仲間になれるのかな…」
つぼみは不安そうにこう語った。
その頃、プラチナの家では、カレンとチャミィがプラチナの帰りを待っていた。
「あ~い」
「王子はそろそろおかえりになられる。それまではここで待ってておくれ」
すると、
「大変だ!怪しい予感が漂ってきた!」
とチャミィは闇の力の気配を感じ取る。
「ボクは現場へと向かうから、カレンはお留守番してくれ」
「あ~い!」
「では、行ってくる」
「いってらっちゃ~い」
チャミィはプラチナの家を出る。
その直後、チャミィがある光景を見る。
「街中がサーカス会場になってる!」
その様子を、おもちゃ屋さんにいる怪盗トリオは小型モニターを通して見ていた。
「あら、もうお気づきかしら。でも、本番はこれからですわ」
「行くぞ、サーカスの準備だ!」
「ガッテンだ!」
怪盗トリオは魔獣の育成に取り掛かる。
「め、メインストリートに強い気配がする!」
チャミィが怪しい気配がする商店街へと向かうと、そこには琴音が待っていた。
「琴音、どうかしたのか!?」
「もうすぐ魔獣が現れるわ」
すると、怪盗トリオが突如として現れる。
「あら、またお会いすることができて本当に光栄ですわ」
「本日の魔獣はこちら!」
「道化師の魔獣だ!」
怪盗トリオの合図で、ピエロをイメージした道化師の魔獣が現れた。
「さあ、ショータイムのはじまりよ」
琴音は、スマートフォン型のアイテム・エースミュージックポッドでドールプリンセスに変身する。
「スカーレット・プロミネンス!ドレスアップ!」
赤と黄金色の光が琴音を包む。
「炎のプリンセス・スカーレットエース、見参!プリンセスステージ、レッツスタート!」
スカーレットエースが現れた途端、つぼみたちも現れた。
「あなたこそ、新しいドールプリンセス!?」
「そう。でも、話はあとよ。あなたたちは向こうに下がってて」
「うん」
つぼみたちが安全な場所に身を寄せて、スカーレットエースと魔獣の戦いの火蓋が切られた。
「さあ、やっちゃいなさい!」
「ガッテンだ!」
魔獣がジャグリングすると、
「魔獣の動きを止めて見せる!」
スカーレットエースはすかさず魔獣の隙をつく。
「大変、大変!火事だ!」
「アルファ様、今すぐ消火器を持ってこい!」
「分かりましたわ!」
スカーレットエースが放つ炎を、怪盗トリオは必死で消そうとする。
しかし、彼女は言う。
「あなたたちの好きにはさせない」
と怪盗トリオに言い放つ。
「もう!せっかく消火器を持ってきたのに!」
「火事だと思ったら違うんじゃないか!」
「あいつ、一体何者なんだ!」
その言葉で、怪盗トリオはおびえてしまった。
「さあ、クライマックスよ」
スカーレットエースは両手にプロミネンスエースカスタネットを構えると、
「プリンセスステージ、ライブスタート!」
スカーレットエースによる魔獣の浄化が始まった。
「暗くて深い 闇の向こうに」
「一人さびしく たたずんでいた」
「だけどもう 怖がらないで」
「それは迷いを 断ち切ったしるし」
「春風に向かって 旅立っていく」
「さあ 夢の扉を開こう」
「輝く未来に向かって 放つよ私だけのメロディ」
「愛を守るため みんなを守るために」
「きらめく世界に奏でる 私とあなたのハーモニー」
「あなたのそばにいる それがプリンセスなんだから」
「砂漠の街に 住んでいても」
「氷で覆われた 場所にいても」
「心はいつだって 一つだから」
「それは つながっているしるし」
「桜が舞う空 勇気を出して」
「さあ 一歩前へと踏み出そう」
「輝く今へと響く みんながつなぐメロディ」
「世界を守るため 宇宙を守るために」
「きらめく夢を目指して 一つになったハーモニー」
「みんなのためにいる それがプリンセスなんだから」
「人はみんなときめいている」
「だから ずっと忘れないで」
「心の輝きを信じて」
「輝く未来に向かって 放つよ私だけのメロディ」
「愛を守るため みんなを守るために」
「きらめく世界に奏でる 私とあなたのハーモニー」
「あなたのそばにいる」
「みんなのためにいる」
「それがプリンセスなんだから」
「乙女の力!スカーレット・ファイヤーワークス!」
スカーレットエースがプロミネンスエースカスタネットを魔獣に向けて響かせる。すると、魔獣は跡形もなく消えていった。
「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」
とチララはマジカルストーンの気配を察知した。マジカルストーンが落ちていく方に行くと、
「キャッチ!」
とチララがマジカルストーンを回収することに成功した。それをエースミュージックポッドに認識して、
「ガーネット。結晶系は等軸晶系で、結晶は菱形十二面体または偏方多面体となる。その整った形状から、誕生石の一番目に選ばれたといわれる。ガラス状の光沢があり、透明度はさまざま、色は無色・黄・褐・赤・緑・黒などがある。炎の力を持つ赤いマジカルストーンだ」
「それではまた次回、輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」
スカーレットエースが勝利宣言する一方で、
「もう、今日も負けちゃったじゃないの!」
「なんだか俺たち」
「とっても嫌な感じ!」
怪盗トリオはこう嘆いて未来世界へと帰っていった。
すると、つぼみたちが琴音の元へと向かう。
「五人目のドールプリンセスって、スカーレットエースだったのね!」
「そう。あなたたちの名前は…」
琴音はまだ知らなかった。つぼみたちの名前を。
「私は愛沢つぼみ。ポートフロンティア学園中等部の一年生。ラブリーピンクに変身するよ」
「私は雪海沙奈よ。アクアブルーに変身するわ」
「私の名前は野々原アリスです。シトラスイエローに変身します」
「私、星空蘭。トウィンクルパープルに変身するの」
「へえ、あなたたちの名前はこんな名前ね」
つぼみたちの名前を聞いた琴音は、彼女たちの右手の中指にプリンセスジュエル・ホワイトをはめていることに気づく。
そう思った彼女につぼみは、
「ねえ、琴音。お願いだから私たちの仲間になって。パールのマジカルストーンをかけたネメシス財団との戦いの日が近づいているのだから」
と尋ねると、
「それは…できないわ」
と、琴音はきっぱりと断ってしまう。
それでも、あきらめきれないつぼみは、
「どうしても一緒に戦ってほしいの!」
と呼びかけると、琴音は、
「どうしてもというのなら…あなたたちがおとぎの世界で古くから代々伝わってきた伝説のアイテム『ピュアロイヤルメイクドレッサー』を手にすることができるのなら、私の仲間になっていいわ。でも、私もこれを見たことがないの」
と仲間になるための条件を語る。
「それはどこに?」
「今、ネメシス財団によってパンドラの箱の中に入れているらしいの。パンドラの箱とは、怪盗トリオが世界中を駆け巡りつつ死力を尽くして手に入れたものだからね」
琴音はつぼみたちにこう告げて、どこかへと去っていった。
「私たちで取り戻すしかないわ」
「パンドラの箱は、ギリシャ神話の言い伝えであらゆる悪や災いを封じ込めた箱であると聞いたことがあります。その箱をネメシス財団が開けさせないためにも、必ず浄化しなければなりません!」
「そのために、今こそ心を一つにしなくちゃね」
パンドラの箱に入れられたピュアロイヤルメイクドレッサーを取り戻すべく、つぼみたちは決意を新たにする。
その頃、怪盗トリオはネメシス財団本社ビルの地下倉庫で、会議をしていた。
「そろそろ、パンドラの箱をかけた戦いを始めようかしら?」
「そうだ、そうだ!」
「やっちゃえ!」
と作戦開始の宣言をすると、
「場所は、どこにしましょうかしら?」
「2019年のポートフロンティア学園中等部にしよう!」
「ガッテンだ!」
もう後がない怪盗トリオはプリンセスドールズとの戦いの準備に取り掛かり、戦闘モードに突入する。
翌朝、つぼみたちがポートフロンティア学園中等部でのホームルームをやっていると、
「先ほど、緊急の職員会議が職員室で開かれて、学校のメールアドレスに『月曜日の朝、ポートフロンティア学園中等部を破壊する』と書かれた爆破予告メールが送られてきました。したがいまして、生徒の皆さんは速やかに下校してください」
神門先生は一年一組のクラスメイトにこう告げる。
その時、つぼみの元に、
「ポートフロンティア学園中等部の皆さんへ パンドラの箱をかけて私たちと決闘ですわ!体育館で首を長くして待ってるぜ!勝つか負けるかはお前たちの運次第だからな! 怪盗トリオより」
と書かれた怪盗トリオからの予告状が送られてきた。
「きっと怪盗トリオはここで待ち伏せしているみたい!今すぐ行かなくちゃ!」
「みんなはお家に帰ってて!」
「私たちが何とかするから!」
つぼみ・沙奈・蘭が教室を出ると、アリスが待っていた。
「先生からの話によると爆破物はここにはないようです。つまり、これは怪盗トリオが仕掛けた嘘だとおもいます!」
「爆破予告って、怪盗トリオが仕組んだ罠だったのね!」
「そうよ。でも、行かなくちゃ」
「体育館へ行こう!」
つぼみたちは体育館へと急行するのであった。




