第31話 新しい命の誕生
おとぎの世界の中心にあるプリズムパレス。その庭園であるプリズムガーデンに、光の女神がいる。
「これが、100年に一度しか咲かない幻の花・プリンセスレインボーローズ…」
そこに、不思議な白い生き物が現れる。
「チャミィ、どうしましたか?」
「ボクを人間界へ連れてって!」
「分かりました」
「横中に行ってくる」
チャミィはプリンセスドールズのいる横中へと旅立っていった。
「今宵は満月の夜、そう、人間界とおとぎの世界が一つになるのです」
光の女神はこう呟いた。
その頃、ほぼ一ヶ月に一度におとぎの世界と人間界が繋がるという満月の夜につぼみたちは、つぼみの家にいる。
「みんな、準備はできた?」
「もちろん」
「ばっちりです」
「さあ、変身よ」
「うん」
おとぎの世界へ向かうため、つぼみ、沙奈、アリスはプリンセスミラーで、蘭はプリンセスムーンスターで、それぞれドールプリンセスに変身する。
「ピンク・ジュエル・パワー!」
「ブルー・ジュエル・パワー!」
「イエロー・ジュエル・パワー!」
「スター・アンド・ムーン!」
「ドレスアップ!」
「愛のプリンセス・ラブリーピンク、見参!」
「水と氷のプリンセス・アクアブルー、見参!」
「花のプリンセス・シトラスイエロー、見参!」
「星と月のプリンセス・トウィンクルパープル、見参!」
「私たち、プリンセスドールズ!プリンセスステージ、レッツスタート!」
プリンセスドールズが現れると、
「行くわよ」
つぼみの部屋の鏡が月の光に照らされて開かれた扉の中へと入る。
「ここが、おとぎの世界ね」
「現実の世界とは全く違った雰囲気です」
とおとぎの世界の独特の世界観に圧倒されるプリンセスドールズ。
「見えたよ、プリズムパレス」
「中へ入ろう」
プリズムパレスの門に入ると、プリンセスドールズは約束の場所であるプリズムガーデンへ。
「色とりどりの薔薇が咲いていますね」
「みんな、見て!」
「あれが、プリンセスレインボーローズ!」
「急ごう!」
プリンセスドールズはプリズムガーデンの中心にあるプリンセスレインボーローズが植えられている場所へと向かう。
そこには、蕾がだんだんと大きくなっている。
「蕾がふくらみ続けている!」
「もうすぐ、生まれそう!」
すると、その時だった。プリンセスレインボーローズが咲いて、中から女の子の赤ちゃんが出てきた。
「生まれたわ!」
「待ってて!」
ラブリーピンクが赤ちゃんを抱きかかえ、プリンセスドールズは光の女神がいるプリズムパレスの謁見の間へと向かう。
「失礼します!」
「女王様、赤ちゃんが生まれました!」
「なんということでしょう。私の後継者となる女の赤ちゃんが生まれたとは!」
光の女神は赤ちゃんが誕生したことを祝福すると、
「では…この赤ちゃんに名前を付けてください」
「どうしよう…」
プリンセスドールズが悩むこと3分、ようやく赤ちゃんの名前が決まったようだ。
「そうだ!『カレン』という名前はどうかな?」
「プリンセスレインボーローズのように可憐で清楚な女の子になってほしいというメッセージが込められていますね!」
「その通りよ」
「では、その子の名前はカレンでいいですね」
「はい」
こうして、おとぎの世界の次期女王候補となる女の子の赤ちゃんにカレンという名前が付けられた。
しかし、喜びも束の間、突然大きな揺れがプリズムパレスを襲う。
「みなさん、落ち着いてください!」
すると、赤い目をしたユニコーンが現れた。
「大変です、ユニコーンが暴れています!」
「恐ろしいわ!」
「カレン、危ない!」
「女王様、カレンは任せてください!」
「分かりました!」
ラブリーピンクはカレンを光の女神に託す。
「う、う、うわーん!」
すると、カレンが泣き出してしまった。
「ユニコーンの暴走を止めなくちゃ!」
「みんな、行くよ!」
「うん!」
プリンセスドールズはユニコーンを落ち着かせるために、おとぎの世界の国歌を歌う。
「プリンセスステージ、ライブスタート!」
「暗くて深い 闇の向こうに」
「一人さびしく たたずんでいた」
「だけどもう 怖がらないで」
「それは迷いを 断ち切ったしるし」
「春風に向かって 旅立っていく」
「さあ 夢の扉を開こう」
「輝く未来に向かって 放つよ私だけのメロディ」
「愛を守るため みんなを守るために」
「きらめく世界に奏でる 私とあなたのハーモニー」
「あなたのそばにいる それがプリンセスなんだから」
「砂漠の街に 住んでいても」
「氷で覆われた 場所にいても」
「心はいつだって 一つだから」
「それは つながっているしるし」
「桜が舞う空 勇気を出して」
「さあ 一歩前へと踏み出そう」
「輝く今へと響く みんながつなぐメロディ」
「世界を守るため 宇宙を守るために」
「きらめく夢を目指して 一つになったハーモニー」
「みんなのためにいる それがプリンセスなんだから」
「人はみんなときめいている」
「だから ずっと忘れないで」
「心の輝きを信じて」
「輝く未来に向かって 放つよ私だけのメロディ」
「愛を守るため みんなを守るために」
「きらめく世界に奏でる 私とあなたのハーモニー」
「あなたのそばにいる」
「みんなのためにいる」
「それがプリンセスなんだから」
「今こそ、心を一つに!プリンセス・クアトロ・イリュージョン!」
プリンセスドールズはハート形にフォーメーションを形成し、プリンセスバトンロッドとプリンセススタータンバリンを魔獣に向ける。ラブリーピンク・アクアブルー・シトラスイエローがプリンセスバトンロッドで自分たちのシンボルマークを描き、トウィンクルパープルがプリンセススタータンバリンを響かせる。すると、ユニコーンは正気を取り戻した。
「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」
とマジカルストーンの気配を察知した。マジカルストーンが落ちていく方に行くと、
「キャッチ!」
とチララがマジカルストーンを回収することに成功した。それを沙奈のプリンセスミラーに認識して、
「こ、これは…!オリハルコン!珍しいマジカルストーンだ!」
と珍しいマジカルストーンを見つけてびっくりするチララ。
「ち、ちぃらら~!」
これには、カレンも大喜びだった。
「もう一安心です。プリンセスドールズ、あなたたちのおかげです」
「ありがとうございます」
光の女神はプリンセスドールズにこう感謝した。
「プリンセスドールズ、あなたたちに渡さなければならないものがあります」
光の女神は、プリンセスドールズにあるものを渡す。
「未来と希望のカギです」
「これは?」
「プリンセスドールズがカレンを闇の力から守るためになくてはなりません。虹色の大きなハートの宝石にあなたたちのイメージカラーであるピンク・ブルー・イエロー・パープルがクローバー状に散りばめられているのです」
と希望と未来のカギについて説明する光の女神。
「さあ、かけるのです」
「あい!」
「大切にしてね」
ラブリーピンクはペンダント状の希望と未来のカギをカレンに与える。
「カレンのことを頼みましたよ、プリンセスドールズ」
「はい!」
「カレン、よろしくね」
「あなたのことは私が守るから」
「一生懸命、お世話も頑張ります」
「こんにちは、カレン」
「あい!」
「カレンを素敵なおとぎの世界の女王にするために、がんばってお世話してくださいね」
こうして、プリンセスドールズはカレンを受け入れたのであった。
その翌日の朝、つぼみたちはプラチナに例のことを報告するためにプラチナの家にいた。
「お邪魔します」
「ようこそ、僕の家へ」
「次のおとぎの世界の女王となる赤ちゃん、無事に生まれたよ」
「名前はカレン」
「だあ!」
「カレンか。それはよかった」
プラチナはつぼみたちの様子に安堵する。
「すいません」
「私たちが学校に行っている間、カレンはどうすればいいのですか?」
つぼみたちがポートフロンティア学園にいる間、カレンをどこかに預けなければならない。それもそのはず。カレンとプラチナの母親である光の女神はおとぎの世界で人間界の様子を見ているのだから。
「君たちはまだ中学生か。でも、安心して」
すると、不思議な生き物が現れる。
「紹介しよう、おとぎの世界からやってきた、チャミィだ」
「どうも。ボクは宇宙の管理人だ。地球上の輝きを守るためにここに派遣された」
「君たちが学校にいる間、チャミィがカレンのそばにいるから彼女のことを守ってくれる。あ、そうそう。大事なことを伝えなければならない。チャミィはほかの生き物とは違ってテレパシーで君たちと会話する」
「分からないことがあれば、気軽にボクに聞いて」
とチャミィについて語ると、
「よろしくね、チャミィ」
「よろしくお願いします」
「これからよろしくね」
「こっちこそ」
とつぼみたちはチャミィにあいさつする。
「あ!もう時間だわ」
「そろそろ学校に行かなくちゃ」
「では、カレンのことをよろしく頼むね」
「行ってきます!」
「気を付けていってらっしゃい!」
つぼみたちとプラチナはいつものようにポートフロンティア学園へ登校するのであった。
その日の昼下がりの出来事。
「まま、あいたい~」
「つぼみたちはまだ授業中だ。もう少し待ってておくれ」
とつぼみに会いたがるカレンにチャミィは困惑する。
すると、
「これ、おちょろい」
「そうだ」
カレンが肌身離さず身に着けている希望と未来のカギがチャミィのペンダントと同じであることに気づく。さらに、
「な~に?」
「これはボクにとって大切なものだから」
「カレン、これ、ちゃわる!」
カレンがチャミィのペンダントを触ろうとすると、
「だめだ。今はそっとしてほしい」
「あ~い」
とカレンを注意するチャミィ。
そんなチャミィは、
「今、この世界にドールプリンセスが4人存在しているが、もうそろそろ新たなドールプリンセスが現れるのだろう」
とチャミィが語った上で、
「ポートフロンティア学園で教師を務める神門あかりという美しき女性と、世界を明るく照らす黄金色の太陽、そしてクローバーの中心にある赤いダイヤモンド…緋色のような赤と金色の力を持つ…プリンセスドールズにとって、エースと呼ばれる存在がいるとより一層強さが増してくるだろう」
と太陽が見える方向に向かってチャミィはあるヒントを示すのであった。




