第30話 危うし!ドクターのタイムスリップ
ある日の昼下がり、つぼみたちはポートフロンティア学園中等部の中庭にいる。
「そういえば、この楠は大きいわ」
「今から10年前に植えられたらしい」
「学校とともに見守ってきたんだね」
「すごく立派な楠です」
「どれほど大きくなるのかな?」
すると、楠から光が放たれる。
「あ、あれは…」
「キャー!」
「わー!」
不思議な光の正体は、別の時代へと導く光だった。
つぼみたちが目を開けると、18年前の2001年にタイムスリップしていた。
「ここは…どこなの…?」
「携帯電話の電波も圏外となっていますし」
「電話もメールもできない」
と困惑するつぼみたち。
すると、晴斗が何かに気づく。
「今のポートフロンティア学園が建てられる前は、工場だったのか。確かに、無残なすがたをしている」
蘭も、
「ここで大規模な爆発事故があったばかりね。街の人からは『夢の跡地』と呼ばれていたわ」
とポートフロンティア学園の前身である工場が爆発事故で多くの犠牲者を出しつつ全壊してしまったことを理解した。
「よくこのことを知っているのか」
「あの声、どこかで聞いたことがある!」
すると突然、ドクターがつぼみたちの目の前に現れる。
「気づいてしまった…だけど、君たちに見せたいものがある」
とドクターは何らかの合図をする。
「話はそれからだ。今から、君たちを未来へと連れていく」
すると、ドクターはつぼみたちを連れて、2020年の東京へとタイムスリップする。
「さあ、目を開けろ」
「見たことがない景色です」
「何なのよ、これは」
そこで目にしたものは、猛烈な雨風と共にいつまでも雷鳴が止まることのない東京都心だった。
「この荒れた天気は、ネメシス財団が仕組んだのか?」
「その通りだ。『ワルプルギスの夜』と呼ばれている異常気象だ。我々が求めているイノセントワールドの理想の形だ」
「イノセントワールド?」
「世界中から争いごとをなくす代わりに輝きを失ったこと、つまり、純粋な世界のことを指す」
イノセントワールドについて知ったつぼみは怒りを露にすると、
「許せない、こんなことするなんて」
とドクターに投げかけると、
「じゃあ、君たちを元の時代に戻す方法を教えてあげよう。この魔獣を倒すことだ!」
とドクターは再びサインを送る。
「本日の魔獣はこれだ!時間の魔獣だ!これは途轍もなく強い力を持っている。さあ、命を懸けてかかってこい!」
すると、青い宝石の粒でできた砂時計をイメージした時間の魔獣が現れた。
「さあ、変身よ」
「うん」
つぼみ、沙奈、アリスはプリンセスミラーで、蘭はプリンセスムーンスターで、それぞれドールプリンセスに変身する。
「ピンク・ジュエル・パワー!」
「ブルー・ジュエル・パワー!」
「イエロー・ジュエル・パワー!」
「スター・アンド・ムーン!」
「ドレスアップ!」
「愛のプリンセス・ラブリーピンク、見参!」
「水と氷のプリンセス・アクアブルー、見参!」
「花のプリンセス・シトラスイエロー、見参!」
「星と月のプリンセス・トウィンクルパープル、見参!」
「私たち、プリンセスドールズ!プリンセスステージ、レッツスタート!」
プリンセスドールズが現れると、晴斗は彼女たちにアドバイスを送る。
「いいか?この砂時計を壊すしか、僕たちが元の時代に戻る方法はない」
「やってみるわ」
「でも、条件がある」
「条件って?」
「この砂時計の粒が全て落ちるまでに魔獣を浄化しなければならない」
「分かったわ」
「行くよ」
「うん」
トウィンクルパープルがプリンセスムーンスターにダイヤモンドのマジカルストーンをセット。その力をプリンセススタータンバリンに授ける。
「つないで!」
ラブリーピンク・アクアブルー・シトラスイエローは、ローズクォーツ・アクアマリン・トパーズのマジカルストーンをそれぞれのプリンセスミラーにセット。その力をプリンセスバトンロッドに授けると、
「プリンセスステージ、ライブスタート!」
プリンセスドールズによる魔獣の浄化がはじまった。
「瞳を閉じて」
「あのことを思い出してよ」
「嬉しいこと 楽しいこと」
「いっぱいあるはず」
「見えるもの 聞こえるもの」
「すべて知ってるとは限らない」
「だからこそ」
「今を生きていくしかない」
「一人じゃできないことも」
「みんながいればできるよね」
「1の力が100になる」
「不思議な魔法」
「心重ねる私たち」
「揃ったときに初めて」
「嘘なんて もういらない」
「真実の友情を感じたい」
「今こそ、心を一つに!プリンセス・ワンダフル・ギャラクシー!」
プリンセスドールズはひし形にフォーメーションを形成し、プリンセスバトンロッドとプリンセススタータンバリンを魔獣に向ける。ラブリーピンク・アクアブルー・シトラスイエローがプリンセスバトンロッドで自分たちのシンボルマークを描き、トウィンクルパープルがプリンセススタータンバリンを響かせる。すると、パステルカラーの光によって砂時計のガラスが大きく破損した。
「まだ終わりではない」
「みんなで浄化しよう」
「うん」
今度は、ルビー・サファイア・シトリン・アメジストのマジカルストーンで浄化を試みる。
「Shining! 輝きを」
「いっぱい集めて」
「そのボルテージを」
「高めていこう」
「ここからまた始まる」
「私たちの物語」
「Star Light Stage」
「ときめいて」
「アイドルになっちゃおう」
「恥ずかしがらずに」
「Star Light Stage」
「一緒に」
「盛り上げていこう」
「一体感を高めて」
「Stardom!」
「今こそ、心を一つに!プリンセス・クアトロ・ストリーム!」
プリンセスドールズは円形にフォーメーションを形成し、プリンセスバトンロッドとプリンセススタータンバリンを魔獣に向ける。ラブリーピンク・アクアブルー・シトラスイエローがプリンセスバトンロッドで自分たちのシンボルマークを描き、トウィンクルパープルがプリンセススタータンバリンを響かせる。すると、ビビットカラーの光によって魔獣は跡形もなく消えて、晴斗とともに元の時代に戻っていった。
「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」
とマジカルストーンの気配を察知した。マジカルストーンが落ちていく方に行くと、
「キャッチ!」
とチララがマジカルストーンを回収することに成功した。それを沙奈のプリンセスミラーに認識して、
「ラピスラズリ。人類に認知され、利用された鉱物として最古のものとされている。エジプト、シュメール、バビロニアなどの古代から、宝石として、また顔料ウルトラマリンの原料として珍重されてきた。日本ではトルコ石と共に12月のほかに9月の誕生石とされる。主成分にもラピスラズリとは異なる日付が誕生石として設定されているロイヤルブルーのマジカルストーンだ」
「それではまた次回、輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」
プリンセスドールズが勝利宣言する一方で、
「覚えとけよ」
とドクターはこう言い残してどこかへと去っていった。
放課後、つぼみたちは例のことを伝えるためにプラチナの家に行く。
「実は、あなたに伝えなければならない大事なことがあるの」
「何かあるのか?」
「今、ネメシス財団がイノセントワールドという争いが起こらないものの輝きのない世界を実現しようとしているみたい」
「確かに、ネメシス財団はプリンセスドールズによる業務の妨害に業を煮やしている。ドクターももう黙ってはいられないらしい」
と示す。
そのうえで、
「イノセントワールドが発生するための条件が一つあるわ。その名も、ワルプルギスの夜」
と蘭が語ると、
「ワルプルギスの夜か。普通の人はゲリラ雷雨や暴風雨と誤解されがちな異常気象だが、勘違いしないでほしい」
と、プラチナは語る。
「いつ、どこに?」
「東京オリンピックが開かれるであろう2020年の夏ごろ、君たちのいる横中を含めた関東地方南部にコンパクトで猛烈な台風が襲撃することに違いはない。北太平洋で温帯低気圧が台風に変わり、東日本の太平洋側に向け勢力を強めていく。それが、ワルプルギスの夜の特徴だ」
「ついに横中にも未曾有の大規模災害が来るのか」
「横中といえば、平和な印象がありましたので、まだ信じられません」
とつぼみたちはプラチナから衝撃な事実を聞いて呆然としている。
その一方で、
「でも、プリンセスドールズのおかげでたくさんのマジカルストーンが集まってきている。集まったマジカルストーンは、おとぎの世界のプリズムパレスにある瓶に輝きが抽出されているようだ」
「ネメシス財団を中心とした闇の力から世界中の輝きが守られている証拠だ。君たちは闇の力に対抗できるように強くなれたと思っている」
と、晴斗とプラチナがプリンセスドールズの活躍をたたえていると、
「みんながそれぞれの力をつけてたくましくなってきた。それを受けて、君たちに新たなる試練を与えよう」
とプラチナはつぼみたちに新たな試練を与える。
「それは、おとぎの世界にあるプリズムパレスに4人で行くことだ。もうすぐ、次のおとぎの世界の女王候補となる女の子の赤ちゃんが生まれると光の女神から聞いている。満開になると女王が誕生するという100年に一度しか咲かない奇跡の薔薇であるプリンセスレインボーローズが咲くプリズムガーデンで、新たなる命の誕生となる一世紀に一度しかない瞬間を見届けてくれ」
「つまり、プラチナがお兄さんに?」
「そうだ。僕は光の女神の息子だからね」
「心境を聞かせてください」
「兄になる覚悟はできている。あとは誕生するその時を待つだけだ」
と新たなおとぎの世界の女王が誕生することを知る。
そのうえで、
「君たちのいる人間界からおとぎの世界に行ける日は、満月の夜だけだ。光が反射する場所に行けば、月の光に照らされて、おとぎの世界へと通じる扉が開かれるだろう」
「では、健闘を祈る」
「はい」
「みんな、がんばって」
つぼみたちがおとぎの世界に行くことになり、
「4人で迎えに行こう」
「今からワクワクしちゃう」
「すごく気になります」
「楽しみね」
と期待を寄せるつぼみたち。
そして、
「満月の夜」
「おとぎの世界へ」
と、決心するのであった。
その頃、ドクターはネメシス財団本社ビルのモニター室でおとぎの世界の様子を見ていた。
「ついに光の女神の後継者が現れるとは。また一人、我々の邪魔者が増える。新たな時代の幕開けだ」
ドクターはこのことを知っているようで、
「未来のカギを握るのは、この人しかいない」
と、警戒心も強めているようだ。




