第28話 旬のスイーツでみんなを笑顔にしちゃおう!
中等部と高等部が一つになって開かれるポートフロンティア学園の文化祭をいよいよ数日後に迫ったある日、一年一組はそれについて話し合っている。
「私たちのクラスでは、模擬店を出し物にすることにしました。そこで皆さんに提案があります。模擬店でどんなものを出品したいのですか?」
「たこ焼き!」
「クレープ!」
と様々なアイデアが出る一方で、
「秋らしいスイーツを出してみたい!」
とつぼみから思わずあの発言が飛び出す。
「…これにしましょう!」
神門先生はしばしの沈黙の後、こう受け入れた。
その後、
「一生懸命頑張ろうね!」
「みんなを笑顔にしよう」
つぼみたちクラスメイトは決意を語った。
その頃、一年二組では、
「出し物は何にしますか?」
「劇がいい!」
「意見が多かったので、劇にしましょう!」
「でも、物語は?」
「私が決めます」
出し物がどうやら決まったようだ。
つぼみが家に帰ると、早速アイデア探しに取り掛かる。
「秋はおいしい味覚がいっぱいね!りんごやさつまいも、ぶどうにかぼちゃ…いろいろありすぎて…」
しかし、すぐには思いつかない。
そのため翌日、つぼみは近所のスーパーマーケットへ向かう。
「何かいい食材があればいいな…」
中へ入ると、秋の味覚がずらりと並んでいた。
「どれもおいしそうね!ん?値段が上がっているわ」
「すみません!」
「どうかしましたか?」
「おすすめの秋の食材は?」
「実は、今月から消費税が10%に引きあがったんですよ」
「本当に?」
つぼみは思わず困惑してしまう。
一方、怪盗トリオのベータとガンマは公園にいる。
「パンやのおみせにならんだ」
「しなもの みてごらん」
「よくみてごらん かんがえてごらん」
「あったらふたつ てをたたこう」
「アンパン(あるある)」
「メロンパン(あるある)」
「ショクパン(あるある)」
「ジャムパン(あるある)」
「キリン(ブブー)」
しかし、サラリーマンやOLが昼食として食べているパンの値段がなんだかおかしい。そう、10月から消費税が10%になったのだ。
「ついこないだまで108円に売っていたパンが110円に値上げして、買えなかったんじゃないか!」
「お腹空いたんだし…」
と何も食べていない二人だが、
「そうだ!七輪でさんまを焼こう!」
「そうしよう!」
とさんまを七輪で塩焼きにして食べる。
「よし、決めた!」
「食欲の秋だからこその収穫祭をやろう!」
ベータとガンマは、さんまの塩焼きから何かしらのヒントを得て、魔獣の生成に取り掛かる。
その頃、つぼみが品物を見ていると、
「動いているわ、この商品」
と商品がなぜか動いているのを発見する。
「すいません」
「何ですか?」
「商品がなぜか動いています」
「すぐそちらに向かいますので…」
すると、店員の後ろから何者かが現れた。
「本日の魔獣はこちら!」
「収穫祭の魔獣だ!」
スーパーマーケットの店員に扮したベータとガンマが現れるとともに、秋の味覚をふんだんに使った収穫祭の魔獣が商品棚から現れた。
「さあ、変身よ」
つぼみは、プリンセスミラーでラブリーピンクに変身する。
「ピンク・ジュエル・パワー!ドレスアップ!」
つぼみをピンクの光が包む。
「愛のプリンセス・ラブリーピンク、見参!プリンセスステージ、レッツスタート!」
ラブリーピンクが現れると、魔獣は特大の鍋を構えた。
「今年も実りの秋がやってきた!」
「第一回収穫祭、通称・令和元年度ハーベストフェスティバル!」
「始まるぞ!」
ベータがさつまいもとかぼちゃといった野菜やしいたけやかぼちゃといったキノコ類を鍋に入れると、
「お次はこちら!」
ガンマはさんま、かつお、鮭といった魚介類を入れる。
「仕上げ、行くぞ!」
「やっちゃえ!」
最後に魔獣が、巷では一度食べたら死ぬとうわさされている毒キノコのドクツルタケを加えると、
「完成!」
「俺たちのスペシャル鍋だ!」
とベータとガンマと魔獣の特製鍋が完成した。
「こんなの絶対まずいよ」
つぼみが鍋を見て言葉を荒らげると、
「すいません、店員さん!この鍋を廃棄してください」
「分かりました」
店員はベータとガンマが魔獣とともに作った鍋を処分する。
「今がチャンスだ」
「うん」
ラブリーピンクは、ローズクォーツのマジカルストーンをプリンセスミラーにセット。その力をプリンセスバトンロッドに授けると、
「プリンセスステージ、ライブスタート!」
ラブリーピンクによる魔獣の浄化が始まった。
「きれいごとは完全に」
「耳を向けないで」
「ずっと心の中に」
「正義があるよ」
「君が語る言葉に」
「なぜか 勇気が」
「湧いてくる」
「It’s all right.」
「一人じゃない」
「仲間がいる」
「喜び抱きしめて」
「It’s all right.」
「La la la…」
「It’s all right.」
「その先の未来へ」
「見果てぬ世界へ」
「歩いていこう」
「ローズクォーツの輝きでパワーアップ!乙女の愛!ローズクォーツ・スイート・ハート!」
プリンセスバトンロッドでパステルピンクのハートを描き、魔獣に向けて放つ。すると、魔獣は消滅した。
「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」
とマジカルストーンの気配を察知した。マジカルストーンが落ちていく方に行くと、
「キャッチ!」
とチララがマジカルストーンを回収することに成功した。それをつぼみのプリンセスミラーに認識して、
「ラリマー。シーブルーのマジカルストーンだ」
「それではまた次回、輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」
ラブリーピンクが勝利宣言する一方で、
「なんだか俺たち」
「とっても嫌な感じ!」
ベータとガンマはこう嘆いて未来世界へと帰っていった。
その後、つぼみが、
「さつまいもとかぼちゃがある!これなら秋らしいスイーツができるかも!」
とさつまいもとかぼちゃを使った新たなスイーツを閃く。
「すいません、これをください!」
「お待たせしました」
「ありがとうございます!」
こうして、つぼみはさつまいもとかぼちゃを買って家へと帰っていった。
「さて、作るよ」
「私も手伝うわ!」
つぼみは、ピルルと協力してさつまいもとかぼちゃを使ったスイーツを作成する。
「まずは、さつまいものタルトから!」
「さつまいもを一口大にカットし水にさらす」
「さつまいもを耐熱容器に入れラップをして、レンジで6分加熱」
「さつまいもをつぶして砂糖、バターを加えよくまぜる。生クリームも加えてよく混ぜる」
「絞り出し袋に入れタルトに絞り出したら、ツヤ出しの卵黄を塗り黒ごまを散らす」
「オーブントースターで焼き色がつくまで焼いたら出来上がり」
「できたよ!」
「次は、かぼちゃのプリンを作るよ!」
「オーブンを160℃に予熱する」
「小鍋に砂糖、水を入れて中火で熱し、茶色くなるまで煮詰める。火を止め、お湯を加えて混ぜる。火からおろして粗熱をとり、ココットに均等に流し入れる」
「かぼちゃは一口大に切って皮を切り落とす。耐熱容器に入れてふんわりとラップをし、600Wのレンジで4分程加熱する。取り出して熱いうちにフォークなどで粗くつぶし、粗熱をとる」
「裏ごししてなめらかにする」
「別のボウルに卵を割り入れて混ぜ、砂糖を加えてすり混ぜる」
「小鍋に牛乳、生クリームを入れて弱火で熱し、小さな泡が立ってきたら火から下ろす。そこに少しずつ加えてその都度混ぜる」
「かぼちゃにそれを少しずつ加えて、泡立て器でのばす。こし器に通してなめらかにする」
「ココットにプリン生地を等分に流し入れる」
「天板にバットをおいて8を並べ、バットの高さ半分程度のお湯(分量外:適量)を注ぐ。160℃に予熱したオーブンで20〜25分蒸し焼きにする」
「いい感じね!」
しばらくすると、スイーツが出来上がった。
「みんなに食べてもらって、評価してもらおうよ!その方がお客さんに喜んでくれるかも!」
「ナイスアイディア!」
翌日、つぼみは沙奈たちのところにできあがったスイーツを持ってくる。
「パクパク…ん…」
「すごくおいしい!」
「甘さも控えめで、糖分もちゃんと抑えていて、いい感じね!」
「野菜が嫌いな子供たちが多いので、これなら大丈夫そうですね」
「ありがとう!」
すると、つぼみたちのいる食堂のテラスに神門先生が現れた。
「愛沢さんの作ったスイーツ、とてもいい出来栄えね!これなら文化祭にやってくるお客さんも喜んでくれるかも!」
「ありがとうございます!」
こうして、一年一組ではつぼみが考案したさつまいものタルトとかぼちゃのプリンを出品することにした。
一方、その頃ネメシス財団本社ビルの会議室では、怪盗トリオとドクターが何かを話している。
「イノセントワールドという言葉を君たちは知っているのか?」
「何?」
「どういうこと?」
「あの国民的ロックバンドのヒット曲?」
「違うだろ!」
「まあまあ、落ち着け。そんな君たちに説明しよう。我々が実現すべき世界のことをイノセントワールドと呼んでいる。詳しいことはまだ言えないが、すでに幹部とともに計画を着々と進んでいる」
ドクターはイノセントワールドについて怪盗トリオに説明する。
そのうえで、
「もう時間だ」
「何しに?」
「どこへ?」
「ドクター、ちょっと待ってください!」
「行かなければならない場所がある」
とドクターは怪盗トリオにその目的を明かさぬままどこかへと去っていった。
そして、毎年秋に開かれるポートフロンティア学園の一大行事である文化祭の幕が上がった。
「いらっしゃいませ!」
「こちらはカフェプリンセスです!」
一年一組の模擬店には、長蛇の列が連なっている。
「さつまいものタルトとかぼちゃのプリンをそれぞれ一つずつください!」
「かしこまりました!」
「さつまいものタルトとかぼちゃのプリンを一つずつね!」
「はい!」
さつまいものタルトとかぼちゃのプリンは飛ぶように売れている。
「みんな、私のスイーツを気に入っているみたい!」
「それはよかった」
店番をしているつぼみと晴斗に、アリスが現れる。
「私たちのクラスでは、『ヘンゼルとグレーテル』という劇を講堂で行います。つぼみさんと晴斗さんは、これを見に行きますか?」
「うん!」
「もちろん」
つぼみと晴斗は劇を見るために講堂へと向かい、
「後は任せて!」
「頑張るからね!」
「いってきます!」
と、沙奈と蘭に店番を託すのであった。




