第22話 ルルル!未来からのメッセージ
ネメシス財団の発表会まで残り十日をきった夜、一筋の流れ星が横中の空に降ってきた。
「待ってて、みんな…すぐに行くからね…」
流れ星はこう囁いて、つぼみの家へと落ちていく。
その時、光の女神は、
「プリンセスドールズ、そろそろ試練の時が近づこうとしています」
とささやくと、プラチナも
「ついに、未来からのメッセージが届くのか」
とその先の未来を予知していた。
夜が明けると、
「おはよう、チララ」
「おはよう…ん?あそこに何かいるみたい」
「これはもしかして!」
つぼみは、自分のベッドの枕元に、突然妖精がいるのを目撃する。
「しかも、新しいプリンセスジュエルの妖精…!」
「そうよ。私はプリンセスジュエル・パープルの妖精、パルルよ。あなたたちがラブリーピンクの愛沢つぼみとそのパートナーのチララなのね」
「私たちのこと、もう知っているの!?」
「うん」
「どうして!?」
「ずっと、未来からあなたたちのことを見てきたのよ」
パルルは、すでにつぼみたちについて知っていることを語ると、
「実は、あなたたちの時代から遥か遠い未来からやってきたプリンセスジュエルの妖精なの。おとぎの世界にいる光の女神からの命令でネメシス財団の様子を調査していると、何やら黒いドールプリンセスがいることを発見したわ」
とネメシス財団本社ビルを隅々まで偵察していたことを明かす。
そのうえで、
「そこであなたたちにお願いがあるの。ネメシス財団によって奪われてしまったダイヤモンドのマジカルストーンを取り戻すと同時に、黒いドールプリンセスを助けてほしいわ!」
とパルルはつぼみたちにあるお願いをする。
「やるしかないよ」
「みんなの力で助けよう」
つぼみたちはこう受け入れた。
一方その頃、ダークミラージュは横中駅前の商業施設にいる。
「ここが、朝晩に人が集まりやすいところね…そこは駅に近いのだから」
とつぶやくと、
「見つけた」
と4Kと8Kに対応している大型の液晶テレビに目を向ける。
「さあ、始めるわ」
ダークミラージュは早速魔獣の生成に取り掛かる。
「じゃあ、またね」
「明日も元気で会いましょう」
「また明日ね」
ポートフロンティア学園中等部からの帰り道、沙奈は何やら怪しい物体を発見する。
「この物体、なんだかおかしいわ」
すると、
「大変だ!怪しい予感がする」
とチララは危険を察知する。
「一体何が起こっているの?」
「この立方体を見た大人たちは、魔獣の虜となってしまう!気を付けて!」
その立方体には、ダークミラージュが歌う「黒いダイヤモンド」のミュージックビデオが映し出されている。
「きっと誰かが救いの手を」
「差し伸べてくれるのなら」
「私は構わないわ」
「街に灯るネオンの光」
「もう見飽きちゃったの」
「そう 私はもう」
「見慣れた私ではない」
「生まれ変わるのだから」
「今」
「探しているの ほしいもの」
「時を超えて 空を超えて」
「まだ見たことない宝石」
「それが黒いダイヤモンド」
その歌声を頼りに先へと進んでいくと、液晶テレビをかたどった箱の魔獣とそれによって操られたサラリーマンとOLの姿があった。
「私が助けるしかない」
「準備はいいか?」
「分かったわ」
沙奈はプリンセスミラーを使ってアクアブルーに変身する。
「ブルー・ジュエル・パワー!ドレスアップ!」
青い光が沙奈を包む。
「水と氷のプリンセス・アクアブルー、見参!プリンセスステージ、レッツスタート!」
アクアブルーが現れると、操られている人々の異変に気付く。
「首元に刺青のようなものが!これは?」
「『魔獣のくちづけ』だ。これは魔獣によって操られている証拠だ」
「その人たちの輝きを取り戻さなくちゃ!」
アクアブルーは、魔獣の浄化と人々の救助を決意。
「行くわよ」
アクアブルーはサファイアのマジカルストーンをプリンセスミラーにセット。その力をプリンセスバトンロッドに授けると、
「プリンセスステージ、ライブスタート!」
アクアブルーによる魔獣の浄化がはじまった。
「青い夏の空の下で」
「君が自転車を進んでいく」
「ペダルをこいだ先には」
「私が待っているから」
「幼い頃 二人で見ていた」
「あの景色を見てみたいから」
「もう一度」
「思い出の海」
「青く澄んだ世界が」
「忘れられない」
「ここをたとえ離れても」
「ずっと頭の中に…」
「思い出の海よ…」
「サファイアの輝きでパワーアップ!乙女の美しさ!サファイア・プリズム・ブリザード!」
アクアブルーがプリンセスバトンロッドでダイヤを描くと、魔獣は消滅していった。
「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」
とマジカルストーンの気配を察知した。マジカルストーンが落ちていく方に行くと、
「キャッチ!」
とチララがマジカルストーンを回収することに成功した。それを沙奈のプリンセスミラーに認識して、
「トパーズ。語源ははっきりしておらず、ギリシャ語で『探し求める』を意味する『topazos』からという文献もあれば、サンスクリット語で『火』を意味する『tapas』からという文献もある。産出地である紅海の島の周辺が霧深く、島を探すのが困難だったからとされる。但し、古くはトパゾスはペリドットを意味し、『ペリドット』と現在のトパーズが混同されていた。レモン色のマジカルストーンだ」
「それではまた次回、輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」
こうして、市街地の平和は守られた。
「やっと解放された!」
「やったー!」
「これで仕事に行けそう!」
さっきまで魔獣によって操られていたサラリーマンとOLたちの様子も元に戻ったようだ。
その翌日、つぼみ・沙奈・アリスは、つぼみの家でパルルからのメッセージを聞く。
「みんな、よく聞いてね。ネメシス財団が生み出した黒き闇のドールプリンセス・ダークミラージュの正体が分かったの。それは、星空蘭という少女よ」
これを聞いたつぼみたちは、
「嘘でしょ…」
「あの蘭ちゃん、私とつぼみちゃんと同じクラスで仲良くしていたのに…」
「ショックが止まりません」
と思わず言葉を失ってしまう。
すると、チララは、
「お姉ちゃんがネメシス財団にとらわれていることを思い出した。確か、ボクを残してたった一匹でダイヤモンドのマジカルストーンを探していた途端に何者かによってさらわれたような…」
とふと何かを思い出す。
それは、プリンセスドールズが結成する二年前のこと。チララの姉はダイヤモンドのマジカルストーンを求めて南極にいた。
「これが、白銀に輝くダイヤモンドのマジカルストーンね!」
チララの姉がそこに近づこうとした。
しかし、その時だった。事件が発生したのだ。
「ダイヤモンドのマジカルストーン、発見!」
なんと、ネメシス財団の幹部だと思われる人物が現れたのだ。
「しかも、邪魔者まで!」
「今すぐ捕まえろ!」
「了解!」
チララの姉はダイヤモンドのマジカルストーンとともにネメシス財団の元に渡っていった。
その時、チララは、
「お姉ちゃん!!」
と叫ぶしかなかった。
その時のことを、チララは、
「もしその時ここにいたら、お姉ちゃんは助かっていた」
と悔やむも、
「お姉ちゃんの敵を討ってほしい」
と訴える。
「そこでお願いがある」
「ネメシス財団の発表会までもう時間がないの。だから、私と協力してほしいわ!」
「ダイヤモンドのマジカルストーンをその手から取り戻すだけではない。ボクの最愛のお姉ちゃんとダークミラージュを救ってほしいんだ!」
と落ち込んでいるつぼみたちに協力を依頼するチララとパルル。
「どうしよう…」
「蘭ちゃんのことも考えないと」
「難しい質問です」
と戸惑うつぼみたち。
しかし、
「やるしかないわ」
「一生懸命、がんばるのみです」
「絶対、大丈夫だよ」
とダイヤモンドのマジカルストーンの奪還、ダークミラージュとチララの姉の救出を決心する。
「場所は横浜国際アリーナだ。発表会までもう時間がない。ボクたちも精いっぱい戦うしかない」
「今こそ、心を一つに」
チララとパルルも決意を固めたようだ。
「みんなを守るため」
「大切なものを取り戻すため」
「がんばるよ」
つぼみたちは、ダークミラージュが待ち構えるネメシス財団の発表会に向けて力強く宣言した。
その頃、テレビのニュースでは、横中でネメシス財団の発表会が開かれることを連日のように報道されている。
「全国の皆さん、こんばんは。時刻は午後六時になりました。イブニングニュースをお伝えします。横中市で開催予定のネメシス財団による大規模な発表会が刻一刻と近づいています。最新情報も合わせてお伝えします」
東京都心にあるとある民放キー局のスタジオに、突如として怪盗トリオが未来世界からやってきた。
「あら、顔見知りの人が多いのですわ」
「そんな人のために自己紹介だ!」
「誰かの声が聞こえたのなら」
「すかさずここにやってくる」
「世界の危機を救うため」
「今日も明るく出動だ!」
「レッド・アルファ!」
「ブルー・ベータ!」
「グリーン・ガンマ!」
「三人そろって、神出鬼没の怪盗トリオ!」
怪盗トリオは、全国ネットの夕方のニュース番組を担当するアナウンサーやスタッフに自己紹介をする。
「我らが、ネメシス財団が誇る地下倉庫課だ!」
なんと、怪盗トリオがニュースの進行を妨げに来たのだ。
「あなたたち…何者ですか?」
「だから、怪盗トリオ…いや、地下倉庫課ですわ!」
突然の訪問客に困惑しているアナウンサーに、アルファはご立腹の様子。
「宣伝、行くぞ!」
「ガッテンだ!」
それでも、ベータとガンマはアナウンサーとスタッフの指示を無視してまでネメシス財団の発表会を告知する。
「一週間後、横中で我々ネメシス財団の発表会があるぞ!」
「世紀の瞬間を見逃すな!」
これをアナウンサーが、
「人の番組で勝手に宣伝するのはおやめください!」
と注意するも、
「気まぐれにやっちゃいますわ!」
「ガッテンだ!」
「ちょっと、カメラを止めて!」
「キャー!」
「誰か助けて!」
とあまりにも身勝手すぎる放送事故を起こし、しばらくフィラー映像を流さなければならない事態となってしまった。
このことを未来世界のネメシス財団本社ビルに滞在していたドクターはこう述べる。
「いくつものドタバタはあったが、電波ジャック作戦はある程度成功したようだ」
すると、ある人に電話をかける。
「もしもし」
「もしもし、私は今横中にあるポートフロンティア学園中等部にいますが…」
「ああ。それなら例の作戦を実行しろ」
「分かりました」
「では、健闘を祈る」
その相手は、つぼみたちのクラス担任である西野先生だった。
「さあ、今度は生徒たちをつぶそうか」
とあることを目論んでいるようだ。




