第2話 新しい仲間はトップモデル
つぼみがチララとの出会いによってラブリーピンクに覚醒したその日の翌日、つぼみはいつものような朝を過ごしていた。
「おはよう!」
「おはようございます。つぼみさん」
「ところで、ママは?」
「すでにお仕事に行きましたよ」
「そうなのね、忙しいからね」
「そうそう、この間知り合いから美術館のチケットを二枚手に入れまして」
「本当なの!?ありがとう!」
「友達を誘って行ってくださいね」
「はーい!」
つぼみが美術館のペアチケットを手に入れた途端、テレビにつぼみと同じ年齢のモデルが映った。
「本日のイマドキウォッチを担当するのは、今月から中学生になるジュニアモデル・雪海沙奈です!」
「おはようございます。雪海沙奈です!よろしくお願いします!」
「今年のおすすめファッションは、こちら!全体をペールカラーに合わせたコーディネートです!」
「どう?似合うでしょう?」
すると、つぼみが
「あの子、ローティーン層の年代では、トップの座に位置するモデルさんだよ!今度、会って話がしてみたいな!」
と、沙奈に会いに行きたいと感じた。
「では、行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
「危ない人には気を付けてね!」
「うん!」
つぼみが出かけてからしばらくすると、公園で沙奈と思われる人物を発見した。
「あっ、沙奈ちゃんだ!」
つぼみが沙奈に声をかけると、沙奈はつぼみにむけて手を振った。
「あら、私のことをよく知ってるのね!」
「今日、テレビで見たの!」
「そう!それはよかったわ!では、あなたの名前を教えて」
「私、愛沢つぼみ!私のことは、つぼみと呼んでね!」
「よろしくね、つぼみちゃん」
「こちらこそよろしくね!」
つぼみと沙奈は、出会ってすぐに仲良くなった。
「そういえば、パパから美術館のチケットをもらったから、一緒に行こうよ。仲良くなったのだから」
「いいわよ!」
「じゃあ、明日、お気に入りのカフェで待ち合わせね!」
「そうしましょう!」
つぼみは、美術館に沙奈を誘うことにした。
一方その頃、2019年よりはるか未来の世界のどこかにあるハイテクシティの中心部にそびえ立つ超高層ビルでは、怪盗トリオが作戦会議をしていた。
「前回、私たちはドールプリンセスというわけのわからない少女にやられちゃったじゃないの!」
「同じ轍を踏まないためにも」
「ドクターに怒られないためにも」
「どうすりゃいいの?」
すると、ドクターと名乗る謎の男性が現れた。
「例の作戦は失敗に終わったと聞いている。お前たち、しっかりしろ!我らが『ネメシス財団』の運命がかかっているんだぞ!」
怪盗トリオがラブリーピンクによって作戦が失敗したことに業を煮やしたドクターが彼らに説教した後、
「そんなことより、早く輝きを奪いに行け!」
「了解!ベータ、ガンマ、行くわよ!」
「ガッテンだ!」
ネメシス財団の一員である怪盗トリオは作戦を実行しようとする。
「今回こそ、やってくれるんだろうな…」
ドクターはこうつぶやいた。
その翌日、約束のカフェで、
「つぼみちゃん、遅いね…」
沙奈がつぼみを待っていると。
「ごめん、寝坊して遅刻しちゃった!」
「でも、いいわよ。せっかくここに来たのだから、行きましょう!」
つぼみと沙奈は、美術館へと向かう。
そこでは、世界中の芸術家たちの作品を集めた展覧会が開催されている。水彩画、油絵、陶芸、彫刻…そのジャンルは多岐にわたる。
「すごく芸術的な作品!」
「これはとっても素敵ね!」
つぼみと沙奈は作品に感心している。
その頃、美術館の見物客に変装した怪盗トリオは、美術館に潜入した。
「あら、なんてアーティスティックな作品ですわ」
「おっ、いい作品だぞ!」
「これはよい魔獣が生み出せそうだ!」
怪盗トリオは、中心にある巨大な像を発見。早速、怪盗トリオは魔獣の生成に取り掛かる。
しばらくたった後、美術館に
「ゴゴゴゴゴゴゴ…」
という地割れのような音が響いた。
「ジリリリリリリ…」
「非常ベルが鳴りました。お客様は速やかに屋外に避難してください」
「地震か?」
「とりあえず逃げろ!」
地震と感じた見物客たちは、美術館の外へと避難する。
「これはもしかして…」
「嫌な予感がするわ」
つぼみと沙奈が怪しい予感を感じたあと、背後から魔獣と怪盗トリオが現れた。
「あら、ついに見つけましたわ」
「さあ、本日の魔獣ちゃんはこちら!」
「ゴーレムが動き出したぞ!」
怪盗トリオの合図で、ゴーレムをかたどった鉱物の魔獣が現れた。
「つぼみちゃん、ここは協力しましょう!」
「沙奈もドールプリンセス!?」
「そうよ。でも今は、説明は後回し。さあ、変身よ」
「うん!」
「ピンク・ジュエル・パワー!」
「ブルー・ジュエル・パワー!」
「ドレスアップ!」
つぼみと沙奈は、プリンセスミラーでドールプリンセスに変身する。
「愛のプリンセス・ラブリーピンク、見参!」
「水と氷のプリンセス・アクアブルー、見参!」
「プリンセスステージ、レッツスタート!」
ラブリーピンクが、ビスチェ風の青いドレスに長い黒髪をティアラで飾ったポニーテール姿のアクアブルーとペアを組んでいることに、怪盗トリオは驚きを隠せない。
「ドールプリンセスが二人に!?」
「おれたちの敵がまた増えた!」
「連敗だけは勘弁だ!」
魔獣がドールプリンセスたちに向かって襲いかかっていく中で、チララは彼女たちに指示を出す。
「いいか?一人ではできないことも二人ではできるという言葉の意味を知ってるのか?そこは二人で魔獣を浄化してほしい」
「私たちはどうすればいいの?」
「魔獣の両腕を狙うんだ」
「私は右腕を、ラブリーピンクは左腕を攻撃よ!」
「分かった!」
ドールプリンセスたちが作戦会議をした後、曲が流れてきた。
「よし、行くわよ!」
「二人のハーモニー!」
「プリンセスステージ、ライブスタート!」
ドールプリンセスたちは、魔獣を攻撃する。
「暗くて深い 闇の向こうに」
「一人さびしく たたずんでいた」
「だけどもう 怖がらないで」
「それは迷いを 断ち切ったしるし」
ラブリーピンクは魔獣の左手を攻撃し、動けなくする。
「次は、アクアブルーの番だよ」
今度は、アクアブルーが右手を攻撃する。
「春風に向かって 旅立っていく」
「さあ 夢の扉を開こう」
すると、右手も動けなくなった。
「さあ、ユニゾンしましょう」
「うん」
仕上げは二人で攻撃する。
「輝く未来に向かって 放つよ私だけのメロディ」
「愛を守るため みんなを守るために」
「きらめく世界に奏でる 私とあなたのハーモニー」
「あなたのそばにいる それがプリンセスなんだから」
二人がパフォーマンスした後、アクアブルーが
「乙女の美しさ!アクア・プリズム・ブリザード!」
とダイヤをプリンセスバトンロッドで描くと、
「乙女の愛!ピュア・スイート・ハート!」
ラブリーピンクもこれに続いた。ドールプリンセスの最高のパフォーマンスによって、魔獣は跡形もなく消滅した。すると、マジカルストーンの気配を察知した。
「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」
マジカルストーンが落ちてくる場所を狙って、チララは飛び立つ。そこにたどり着くと、チララはこれをキャッチ。
「よしっ!」
チララは手に入れたマジカルストーンをアクアブルーのプリンセスミラーに認識する。
「サファイア。鮮やかなブルーのマジカルストーン。キリスト教では、中世から司教の叙任のしるしとしてサファイアなどを付けた指輪が与えられ、人差指にはめるならわしがあった。マルボドゥスの「宝石誌」では、サファイアが指輪の宝石にふさわしいとされているのも、この反映だと見られる。轟くような水を出すよ」
そして、
「プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」
「それではまた次回、輝く世界でお会いしましょう!」
二人になったドールプリンセスの活躍によって、サファイアのマジカルストーンを保護することに成功した。
「もう!またやられちゃったじゃないの!」
「くそ、ドクターに怒られる!」
「次こそ絶対に勝つ!」
怪盗トリオはこう捨て台詞を吐いて、未来世界へと帰っていった。
魔獣との戦いが終わった後、つぼみは沙奈になぜアクアブルーに覚醒したのかを尋ねる。
「そういえば、沙奈はどうしてアクアブルーに?」
「実はね、私はつぼみちゃんより先にドールプリンセスとして活動していたの。小学六年生のときからね」
「このプリンセスミラーは?」
「静岡のおばあちゃんの家の倉庫で見つけたの。実は、お父さんが静岡の出身で、最近までそこに住んでいたわ」
それは、つぼみがラブリーピンクに覚醒するちょうど一年前のこと。沙奈は春休みに静岡の祖母の家に滞在していた。そんなある日のこと。
「ワン!」
「あれ?ケン、どうしたの?」
沙奈が祖母の飼い犬で柴犬のケンに導かれて、庭にある倉庫へと向かう。そこの扉を開けると、黄金の光が輝いていた。
「この箱を開けて?」
「ワンワン!」
沙奈が箱を開けてみると、プリンセスミラーとプリンセスジュエル・ブルー、プリンセスジュエル・ホワイトが出てきた。
「はっ!」
まぶしい輝きをこらえながら、沙奈がこれを手に取った。
「心が、あふれる!」
こうして、沙奈はアクアブルーになったのであった。
さらに、沙奈はつぼみに見せたいものがあるという。
「そうそう、つぼみちゃんに紹介したいものがあるの。ブルル、おいで」
すると、沙奈が首からかけているプリンセスジュエル・ブルーからプリンセスジュエルの妖精が出てきた。
「はじめまして。ブルーのプリンセスジュエルの妖精、ブルルよ。よろしくね」
「よろしく、ブルル」
つぼみがブルルにあいさつすると、つぼみがペンダントとして肌身離さずつけているプリンセスジュエル・ピンクからピルルが現れた。
「ピルル、このときを待ってたわ」
ピルルがブルルに会えたことを喜び合うと、
「これからよろしくね、つぼみちゃん、ピルル」
「沙奈とブルルもよろしくね」
「新コンビ誕生だ!」
つぼみと沙奈、ラブリーピンクとアクアブルーの二人のドールプリンセスがタッグを組むことをチララは歓迎した。
美術館からの帰り道。
「そうそう。私はポートフロンティア学園の中等部に通うことが決まっているけど、沙奈はどこの中学校に通うの?」
「つぼみちゃんと同じ!芸能活動と両立できるからね!」
「よかったね!」
沙奈はポートフロンティア学園に進学することに。
「はっ!明日は入学式だった!」
「じゃあ、明日、学校でね!」
「またね!」
「じゃあね!」
つぼみが沙奈と別れると、
「沙奈と同じクラスになれたらいいな!」
と中学校生活に期待を寄せていた。
その頃、一人の少年が
「つぼみとまた同じ学校に通えるとは、本当に嬉しいよ。待ってて、つぼみ」
と語り、つぼみをじっと見つめていた。