第18話 マリンワールドに行こう!
長かった梅雨が明けて、ポートフロンティア学園中等部でももうすぐ夏休みがやってくる。
「ただいまから、令和元年度ポートフロンティア学園中等部一学期終業式を始めます。初めに、校長先生のお話です。校長先生、お願いします」
「みなさん、おはようございます」
「おはようございます」
「四月に行われた入学式と始業式から一学期がスタートし、早いもので、間もなく四か月が経過しようとしています。みなさんはもう新しい学年には慣れましたか?新しい環境、先生、クラスメイトと出会い、戸惑いもある中、それぞれが勉強や部活動、学校行事などに全力で取り組み、本校の生徒は着実に結果を残し続けています。夏休みにはたくさん時間があります。この機会に普段やりたくてもできなかったことに挑戦してみてください。また、夏休みは家で過ごす時間が多くなると思うので、ぜひ何か、家族のお手伝いをしてみましょう。普段家族にやってもらっていることを自分でやってみることで、家族のありがたみがわかりますし、さまざまな仕事を経験しておくことは、これからの人生で必ず役に立つでしょう。夏休みの間、海や川などでの水の事故、花火をする際の火の事故には十分注意してください。また、交通事故やインターネットでのトラブルもいつも以上に注意するようにしましょう。 みなさんが夏休みを健康・安全に過ごし、また元気な姿で二学期登校してきてくれるのを楽しみにしています」
一学期の終業式が終わった後でのホームルームでは、つぼみたちに通知表が渡された。
「愛沢さん、音楽と家庭科はよかったが数学がいまいちだったぞ」
「二学期も頑張ります」
「期待していますよ」
彼らの表情は、悲喜こもごもだった。
そんな放課後でのこと。
「明日から夏休みだね!」
「中学校生活最初の夏休みだし、令和最初の夏休みだからね!」
「どこに行きましょうか?」
「水族館に行きたい!」
とつぼみが言い出す。
「じゃあ、蘭も誘おうよ!」
「うん!」
つぼみたちは週末に水族館に行くことに。
そのことを蘭に伝えると、
「明日、水族館に行こう」
「そうね」
と了承した。
「では、また明日ね」
「じゃあね」
「また明日、会いましょう」
「またね」
つぼみたちは帰路につき、蘭はポートフロンティア学園に併設している寮に帰るのであった。
待ちに待った夏休み初日、つぼみたちは横中マリンワールドに向かう。
「楽しみだね!」
「ワクワクしちゃいます!」
「仲のいい女子だけでおでかけ、本当にキュンキュンしてる!」
つぼみたちは胸を膨らませると、
「気になるわ…」
と蘭はこうつぶやいた。
「着いたよ!」
「ここがマリンワールドね!」
「とっても大きい海のテーマパークです」
「楽しくなってきたわ…」
つぼみたちは第三セクター鉄道の横中はまかぜ鉄道に乗ってマリンワールドにたどり着いた。
「まずはどこから?」
「色々見ましょう」
「広々としているからね」
館内に入ると、つぼみたちはワクワクドキドキを抑えきれない様子になった。
それもそのはず。
「この熱帯魚たち、綺麗だね!」
「まるでハワイや沖縄にいる気分!」
「でも今は、地球温暖化のせいでサンゴ礁がピンチです」
サンゴ礁に生息している熱帯魚を見たり、
「シーラカンス、本当にここにいる!」
「生きた化石と呼ばれています」
「本物だね!」
深海に生息している魚を見たり、
「魚が数え切れないほどいっぱい!」
「イワシは、漢字で魚へんに弱いと書きます」
「ちなみに、ブリは魚へんに師匠の師と書くわよ!」
鰯の群れを見たり、
「ペンギンさん、かわいいね!」
「よちよち歩きがかわいらしい!」
「数列みたいです」
ペンギンのパレードを見たりとマリンワールドを満喫しているつぼみたち。
その頃、マリンワールドのスタッフに変装した怪盗トリオのベータとガンマは館内を清掃している。
「ここ一体を清掃するなんて」
「もう嫌だ!」
彼らが仕事に嫌気がさしていると、館内アナウンスが流れてきた。
「ピンポンパンポン」
「マリンワールドにご来場の皆さんにお知らせします。間もなく、イルカショーのお時間です」
「イルカショーだ!」
「よし、決めた!」
「これを魔獣のテーマにしよう!」
「ガッテンだ!」
ベータとガンマは魔獣の生成に取り掛かる。
「大変だ!怪しい予感がする」
チララが魔獣の気配を察知すると、
「急ぎましょう!」
「大変だわ!」
「蘭、ここで待ってて」
「分かったわ」
つぼみたちは、蘭をその場に残して魔獣の居場所へと急行する。
そこで待っていたのは、人魚姫に扮したベータとガンマだった。
「よう、お前たち」
「待たせたな」
「本日の魔獣はこちら!」
「人魚の魔獣だ!」
彼らの合図で、人魚の魔獣が現れた。
「さあ、変身よ」
「うん」
つぼみ、沙奈、アリスはプリンセスミラーでドールプリンセスに変身する。
「ピンク・ジュエル・パワー!」
「ブルー・ジュエル・パワー!」
「イエロー・ジュエル・パワー!」
「ドレスアップ!」
「愛のプリンセス・ラブリーピンク、見参!」
「水と氷のプリンセス・アクアブルー、見参!」
「花のプリンセス・シトラスイエロー、見参!」
「私たち、プリンセスドールズ!プリンセスステージ、レッツスタート!」
プリンセスドールズが現れると、魔獣はメロディーに合わせて歌いだす。
「さあ、マーメイドリサイタルが始まるぞ!」
「イッツ ショータイム!」
「ドはドーナツのド」
「レはレモンのレ」
「ミはみんなのミ」
「ファはファイトのファ
「ソは青い空」
「ラはラッパのラ」
「シは幸せよ」
「さあ歌いましょう」
「ドはドーナツのド」
「レはレモンのレ」
「ミはみんなのミ」
「ファはファイトのファ
「ソは青い空」
「ラはラッパのラ」
「シは幸せよ」
「さあ歌いましょう」
すると、バックダンサーを務める魔獣の手下が現れた。
「今度は踊るぞ!」
「リズムに合わせて!」
「ドレミファソラシド」
「ドシラソファミレ
「ドミミミソソ」
「レファファラシシ」
「ドミミミソソ」
「レファファラシシ」
「ソドラファミドレ」
「ソドラシドレド」
「どんなときにも」
「列を組んで」
「みんな楽しく」
「ファイト持って」
「空を仰いで」
「ランララララララー」
「幸せの歌」
「さあ歌いましょう」
「ドレミファソラシド ソド」
魔獣のパフォーマンスに、プリンセスドールズは、
「動きが違う!」
「音程もずれているし」
「まったくリズムに乗ってません!」
と苦言を呈する。
「今度は私たちの番」
「うん」
プリンセスドールズも歌とダンスのライブパフォーマンスで対抗する。
「プリンセスステージ、ライブスタート!」
そして、プリンセスドールズによる魔獣の浄化がはじまった。
「暗くて深い 闇の向こうに」
「一人さびしく たたずんでいた」
「だけどもう 怖がらないで」
「それは迷いを 断ち切ったしるし」
「春風に向かって 旅立っていく」
「さあ 夢の扉を開こう」
「輝く未来に向かって 放つよ私だけのメロディ」
「愛を守るため みんなを守るために」
「きらめく世界に奏でる 私とあなたのハーモニー」
「あなたのそばにいる それがプリンセスなんだから」
「輝く未来に向かって 放つよ私だけのメロディ」
「愛を守るため みんなを守るために」
「きらめく世界に奏でる 私とあなたのハーモニー」
「あなたのそばにいる」
「みんなのためにいる」
「それがプリンセスなんだから」
「今こそ、心を一つに!プリンセス・トリコロール・イリュージョン!」
プリンセスドールズがそれぞれのシンボルマークを描き、魔獣に向かって放つ。すると、魔獣は跡形もなく消えていった。
「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」
とマジカルストーンの気配を察知した。マジカルストーンが落ちていく方に行くと、
「キャッチ!」
とチララがマジカルストーンを回収することに成功した。それをつぼみのプリンセスミラーに認識して、
「サンゴ。モモイロサンゴは桃色の名を冠するものの朱色から桜色まで色調が広くアカサンゴより大型のものが多いので広く使われる。ヨーロッパではアカサンゴより本種が人気。本種も含め透明感のある淡いピンク色のものは市場では天使の肌という意味の『エンジェルスキン』とロマンチックな名で呼ばれるが、日本の流通業界では『ボケ』と呼ばれている。一般的に植物のボケの花の色に由来するといわれるが、商売上手のイタリア人が日本人や中国人の仲買人を騙すために「色がぼけていて安価でしか買いとれない」と嘘をついて安く仕入れて大もうけしたという俗説もあり、正確な語源はいまだに不明である。朱色のマジカルストーンだ」
「それではまた次回、輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」
プリンセスドールズが勝利宣言する一方で、
「何だかとっても」
「嫌な感じ!」
ベータとガンマはこう嘆いて、未来世界へと帰っていった。
プリンセスドールズの活躍によって、マリンワールドの平和は守られた。
「大変長らくお待たせしました!まもなく、イルカショーが始まります!」
「一番楽しみ!」
つぼみたちはイルカショーを見る。
「ジャンプ!」
「気持ちいいね!」
イルカのジャンプで生じた水しぶきを浴びるつぼみたちだったが、
「あれ、蘭は?」
「どこにいるのかな?」
「さっきまでいましたが…」
突如蘭がいなくなったことに気づく。
「でも、きっと戻ってくるはずだよ」
「そのとおりね」
「つぼみさんの言葉を信じるしかありません」
と前向きにとらえていた。
その頃、未来世界に帰っていったはずだったベータとガンマは、CDショップを訪れていた。
「あれが巷で噂のダークミラージュ!」
「ついに歌手デビューだ!」
店頭では、ダークミラージュの記念すべきメジャーデビューシングル「Time Romance」が売られていた。
「しかもミュージックビデオまで!」
「ネメシス財団が莫大な費用で作ったんだぞ!」
ベータとガンマは、ダークミラージュのミュージックビデオが映っているモニターに目を向ける。
「もし時間を干渉できるのなら」
「過去と未来 どっちがいい?」
「もし時間を止められるのなら」
「どんな瞬間にしたい?」
「私は未来からやってきたの」
「現在には存在しない」
「Time Machine に乗って」
「二人でどこかに行こう」
「誰にも秘密にするから」
「Time Limit なんてないから」
「私の辞書には」
「自由にすればいい」
「Endless Time」
ダークミラージュのデビューシングルは、発売日だけでCDの売り上げがミリオンを達成し、動画サイトによる公式プロモーションビデオの再生回数も全世界で百万回を突破するなど、注目度の高さがうかがえる。
「すごい、私のデビューシングルが売れているとは…」
世間の人気が急上昇していることに、ダークミラージュは驚きを隠せない様子。
すると、ドクターが現れる。
「君に大事なことを伝える」
「何よ?」
「それは、二曲目の製作が決定したことだ」
「本当に?」
「ああ。CDとデジタルダウンロードは多く売れており、ミュージックビデオも多くの人に持てもらっていることで、我々ネメシス財団も安堵している。しかし、君にはまだ足りないところがある。それを補うために、新曲を出すことを決めた」
ドクターはダークミラージュに、このような状況に至った経緯を説明する。
そのうえで、
「次回も期待している」
「そうね」
とドクターはダークミラージュにエールを送ってどこかに去っていった。
「絶対に許さない、プリンセスドールズ…」
ダークミラージュは静かにこうプリンセスドールズに闘志を燃やしている。




