第15話 豪華客船が見たい!みんなの思い
ある日の昼下がりのポートフロンティア学園中等部でのこと。つぼみたちは中庭にいた。
「つぼみさん、沙奈さん、ちょっと聞いてください。今度、私たちのクラスで社会科見学があります!」
「どこに行くの?」
「楽しみね!」
「それは…豪華客船の来航を生で見ることです!」
「本当に!?」
「すごいね!」
アリスは、自分たちのクラスでの社会科見学で、豪華客船を見るという。
そのうえで、
「貴重な思い出になるかもしれません!」
「その写真、楽しみにしているからね!」
「待ってるわ!」
アリスは、つぼみと沙奈にこう約束した。
その頃、未来世界にあるネメシス財団本社ビルでは、怪盗トリオとダークミラージュが何かを話し合っている。
「そろそろ、きれいめで高価なものが見たいのですわ!」
「アルファ様、良い考えだ!」
「ダークミラージュ、いかがいたしましょう?」
「それなら…それでいいわ。もうすぐ2019年の横中市に『ティアラ号』という豪華客船がやってくるから、それを見に行っておいて」
「ありがとうございます!」
怪盗トリオはティアラ号の横中来航を見に行くことに。
「でも…」
「場所、どこでしたっけ?」
「忘れちゃった!」
なんと、怪盗トリオはティアラ号の詳しい来航場所を知っていないのだ。
「大さん橋ふ頭だわ」
「分かりました」
「ほほう、横中大さん橋ふ頭に行くのか!」
「さあ、準備ですわ!」
「ガッテンだ!」
怪盗トリオは、準備を進めるのであった。
数日後、アリスたち一年二組の連中は、社会科見学の一環でポートフロンティア学園中等部から横中みなとみらいへ貸し切りバスで向かっている。
「ここが、横中みなとみらいです!」
「おおー!」
「別名は、横中みなとみらい2020です」
「そうなの!知らなかった」
すると、バスは目的地へと近づく。
「さあ、着きました!」
バスが降り立った先は、横中で最も高いビル・シンボルタワー。
「こちらが、シンボルタワーです!」
「すごいですね!」
「中には、ホテルやショッピングモール、オフィスなどが同居している七十階立ての複合施設ですよ。横中みなとみらいの中核を担っていますし」
「ついでに、日本一高いビルは、あべのハルカスやで!」
「どこなの?」
「大阪の阿倍野というところにあるで!」
「えー!日本で二番目に高いビルがここなの?」
「そうです。そんなねねさんのために説明しましょう。シンボルタワーは、東日本では最も高い高層ビルですが、日本全体ならびに西日本で最も高い高層ビルはあべのハルカスです。ちなみに、日本一高い電波塔は、東京スカイツリーですよ」
シンボルタワーについて、アリス・大将・ねねが熱く語っていると、潮がカメラのシャッターを切った。
「カシャ」
「新井くん、何をしていますか?」
「横中みなとみらいで素晴らしいものを見つけました!」
「どんなものですか?」
「見てください、あれが世界丸です!」
「かの有名な世界丸!」
「これもシンボルタワーに負けじとすごい光景ですね!」
百聞は一見に如かず。社会科見学は普段では見ることができない風景を見ることができる貴重な機会である。そんなアリスたちは、潮の元へと向かう。
「こら、野々原さんたち、戻ってきなさい!」
「せっかくみようと思ったのに!」
「すいません…」
「次から気を付けます…」
しかし、引率の先生から注意されたアリスたちは、その場に戻るのであった。
「でも、ティアラ号凱旋がありますし」
「そうだね」
「落ち着いていけや」
「は、はい」
アリスたちは、そのことを冷静に対処していた。
その頃、観光客に変装した怪盗トリオは、世界丸を見ていた。
「あら、何て素晴らしい船ですもの」
「アルファ様、こっちもいいけど、横中中華街ならではの名物のうきわまんを忘れてはならないぞ!」
「プリプリの海老が入っているぞ!」
「そっちに興味がありませんわ」
「そんな!」
「嘘だ!」
世界丸に興味を持っているアルファなのに対して、うきわまんに目がないベータとガンマ。
そんなアルファは
「これにしましたわ!」
と語りだすと、
「いい魔獣ができそう!」
「さあ、作るのですわ!」
「ガッテンだ!」
怪盗トリオは、魔獣の生成に取り掛かる。
そんな中、アリスたちは赤レンガ倉庫にあるレストランでカレーライスを食べることになった。
「さて、本日の昼食は、海上自衛隊が金曜日に食べるとされている海軍カレーです!」
「では、いただきます!」
「いただきます」
「これが、海軍カレーです」
「ペリー来航を思い出す!」
「別名・黒船来航と呼ばれていますよ」
アリスたちは海軍カレーを味わっている。
しかし、そんな幸せな時間の束の間、アリスの元にチララが現れる。
「大変だ!怪しい予感がする」
「また魔獣ですか?」
「そうだ!場所は大さん橋ふ頭だ!」
「分かりました!」
アリスとチララは、大さん橋ふ頭へ向かう。
「がんばってや!」
「くれぐれもケガだけはしないでください!」
「必ず勝利してね!」
大将、潮、ねねはアリスにエールを送った。
そこで待っていたのは、怪盗トリオだった。
「あら、またお会いすることができて本当に光栄ですわ」
「本日の魔獣はこちら!」
「海賊の魔獣だ!」
怪盗トリオの合図で、カリブの海賊を彷彿とさせる海賊の魔獣が現れた。
「では、行きます」
アリスは、プリンセスミラーでシトラスイエローに変身する。
「イエロー・ジュエル・パワー!ドレスアップ!」
アリスを黄色の光が包む。
「花のプリンセス・シトラスイエロー、見参!プリンセスステージ、レッツスタート!」
シトラスイエローが現れると、怪盗トリオ何かを歌いだす。
「海は広いな 大きいな」
「月がのぼるし 日が沈む」
「海は大波 青い波」
「揺れてどこまで続くやら」
「海にお舟を浮かばして」
「行ってみたいな よその国」
すると、アルファが
「私たちを幸せにさせたいのなら、マジカルストーンと交換させてちょうだい」
とシトラスイエローにお願いする。それをシトラスイエローが
「そんなこと、できるのですか?」
ときっぱりと断る。
「宝物という言葉の意味を知っていますか?それは、人々が人生の中で大切にしているものの一つです。もし奪われたのならどうするつもりですか?もし壊されたのならどうするつもりですか?もし消えたのならどうするつもりですか?そんなときのことを私たちは考えなければなりません。そう、宝物はいつまでたっても色あせませんから」
とシトラスイエローは、宝物の重要性を訴える。
「何よ!?」
「どうするつもりだ!」
戸惑っている怪盗トリオにシトラスイエローとチララが宣戦布告する。
「さあ、行くよ」
「分かりました」
シトラスイエローはプリンセスミラーにシトリンのマジカルストーンをセットする。その力をプリンセスバトンロッドに授けると、
「プリンセスステージ、ライブスタート!」
シトラスイエローによる魔獣の浄化がはじまった。
「花が咲いて 鳥も鳴いたら」
「あたたかな季節がはじまる」
「たんぽぽの綿毛が」
「飛んでいかないうちに」
「風が吹いて 月も光ると」
「一日の終わり」
「光に照らされていく」
「黄色の菊が」
「はちみつ色の日々」
「私の人生は」
「甘くてほんのり」
「味を感じるの」
「Honey Days」
「It’s a Wonderful Life」
「シトリンの輝きでパワーアップ!乙女の勇気!シトリン・フローラル・セラピー!」
シトラスイエローが花を描き、魔獣に向かって放つと、魔獣は跡形もなく消えていった。すると、マジカルストーンが落ちてくる。
「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」
とチララはマジカルストーンの気配を察知した。マジカルストーンが落ちていく方に行くと、
「キャッチ!」
とチララがマジカルストーンを回収することに成功した。それをアリスのプリンセスミラーに認識して、
「ジルコン。赤く光るマジカルストーンだ」
「それではまた次回、輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」
一年二組のクラスメイトや観光客たちが拍手する中、シトラスイエローが勝利宣言する一方で、
「もう、今日も負けちゃったじゃないの!」
「なんだか俺たち」
「とっても嫌な感じ!」
怪盗トリオはこう嘆いて未来世界へと帰っていった。
「そろそろ見えてきました!」
ついに、横中港にティアラ号がやってきた。
「実際と写真では全く違う迫力です!」
「写真に収めていいでしょう!」
「ええ船やな!」
「すごいね!」
すると、アリスたちはティアラ号ならではの特徴を発見する。
「あ、あれ、見てください!」
「船の装飾が王冠になっとる!」
「その名の通り、ティアラみたいだね」
「大きな王冠がこの船ならではの特徴とは…これは大スクープ間違いなしです!」
ティアラ号には、王冠の装飾が施されていることが発覚。
しかし、ここに滞在しているのは、わずか二日間だけだそうで、
「ここだけの話ですが、ティアラ号が横中に来航するのは、今日と明日の二日間だけで、その後、静岡に行ってしまうんですよ」
「本当なの!?」
「なんでやねん!」
「それが、日本一周旅行の真っ最中で、神戸から長崎、新潟、函館に来航するんですよ。今後、世界一周旅行にも出るんですよ」
旅は道連れ、世は情け。ティアラ号は世界中をめぐっている豪華客船である。
「みなさん、お待たせしました!」
アリスは、ティアラ号の写真を持ってくる。
「これが、ティアラ号です!」
「ティアラのように輝いてるね!」
「これは本当に素敵よ!」
「ありがとうございます!」
つぼみと沙奈にティアラ号の写真を気に入ってくれたことを、アリスは喜んでいるようだった。
その裏で、蘭は西野先生と何かを話し合っている。
「星空さん、何か用はありますか?」
「あの、ちょっとカバンの中を見せて」
「は、はい」
西野先生はカバンの中に入っているものを取り出す。
「あれは…」
すると、蘭はたばこを発見する。
「どうしてここでたばこを吸っていたの?」
「分からない」
「とりあえず、報告するわ」
「ちょ、ちょっと!」
蘭は、西野先生が校内の敷地で無断喫煙をしていたことを先生方に報告するために、足早に去っていった。
「あの先生、たばこを吸っているらしいですよ」
「ずいぶん前から吸っていることを隠しているなんて…」
「しかも、生徒たちの目を盗んで休み時間に吸っていたとは」
「今すぐ、ポートフロンティア学園の全教師を対象とした抜き打ちの持ち物検査をやらなければなりません」
「そうですね」
「校長先生や理事長にも伝えなければ」
「分かりました」
蘭の報告を聞いた教師たちは、臨時に開かれた職員会議で西野先生が起こした騒動にあきれていた。




