第11話 闇に狙われた街
「大変だ!怪しい予感がする」
「また魔獣が?」
「そうだ。しかも、巨大な翼を広げている」
「行かなくちゃ」
チララからの知らせを聞いたつぼみは、プリンセスミラーでラブリーピンクに変身する。
「愛のプリンセス・ラブリーピンク、見参!」
ラブリーピンクが現れると、アルファは魔獣を引き連れてやってきた。
「あら、またお会いすることができて光栄ですわ。では、本日の魔獣ちゃんはこちら!渡り鳥の魔獣ですわ!」
シラサギをかたどった渡り鳥の魔獣に、ラブリーピンクが浄化に挑む。
「プリンセスステージ、ライブスタート!」
「輝く未来に向かって 放つよ私だけのメロディ」
「あなたのそばにいる それがプリンセスなんだから」
「乙女の愛!ピュア・スイート・ハート!」
ラブリーピンクの活躍で、渡り鳥の魔獣は消滅した。すると、チララはマジカルストーンが落ちてくることに反応した。
「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」
「ミルキークオーツ。ミルク色のマジカルストーンだ」
ラブリーピンクは、ミルキークオーツのマジカルストーンを手に入れた。
「もう、またやられちゃったじゃないの!」
アルファは未来世界へと帰っていく。
しかし、数時間後にまたある場所に向かったチララは、
「またこんなところに魔獣が!?」
とアクアブルーとシトラスイエローが、ラブラドルレトリバーをかたどった犬の魔獣と戦っているところを目撃する。
「きらめく世界に奏でる 私とあなたのハーモニー」
「あなたのそばにいる」
「みんなのためにいる」
「それがプリンセスなんだから」
「乙女の美しさ!アクア・プリズム・ブリザード!」
「乙女の勇気!ハニー・フローラル・セラピー!」
二人の活躍によって、犬の魔獣は消滅。すると、マジカルストーンが落ちてきた。
「キャッチ!」
これを沙奈のプリンセスミラーに認識させて、
「ブラウンクオーツ。茶色いマジカルストーンだ」
アクアブルーとシトラスイエローも、ブラウンクオーツのマジカルストーンを手に入れることに成功した。
「それではまた次回、輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」
二人が勝利宣言する一方で、
「それにしても、おかしいよ」
チララは頭を悩ませた。
このように、最近の横中では魔獣の出現が後を絶たず、地域住民も警戒と不安の日々を過ごすことを余儀なくされている。
「横中で起き続けている魔獣による脅威。これは、ネメシス財団がボクたちによる妨害に業を煮やしていることに違いない!」
「ネメシス財団とは?」
「はるばる遠い未来からやってきた輝きを狙う悪の組織だ。世界中を闇で覆いつくすことをもくろんでいる」
「それは、どうして?」
「きっと、キミたちのいる時代の人間界とおとぎの世界に悪意を持っているかもしれない。彼らの本拠地があるハイテクシティの周辺には、人々によって捨てられた大量のごみであふれているからね」
つぼみはチララからネメシス財団について知らされる。
そのうえで、
「二人の成人男性に紅一点。しかも、何かに変装することもある。この三人組を知っているか?」
「うん。何度も見たことがあるけど」
「ボクたちと横中を狙っている怪盗トリオ。通称・地下倉庫課は、国際警察によって指名手配されているようだ。このポスター、どこかで見たことがあるのか?」
「うん。学校や通学路、駅にも貼られている」
「どうやら警察も彼らについて捜査しているようだ」
と怪盗トリオは国際警察の容疑に追われているとチララは語った。
その時、沙奈とアリスがつぼみとチララの元に駆けつけてきた。
「大変です!」
「横中総合病院が大パニックよ!」
「また魔獣が!?」
「そうよ!」
「今すぐそこに行きましょう!」
「うん!」
つぼみたちは横中総合病院に足早と向かう。
そこで待っていたのは、看護師に変装したアルファと、医師に扮したベータとガンマだった。
「あら、またお会いすることができて光栄ですわ」
「本日の魔獣はこちら!」
「病院の魔獣だ!」
怪盗トリオの合図で、医療器具を使用した病院の魔獣が現れた。
「さあ、禁断のカルテが始まりますわ!」
「行くぞ!」
「ガッテンだ!」
そこに、魔獣によって操られている患者が現れた。
「オーホッホッホッホッホ!この病院はすでに私たちのものですわ!」
「取り戻せるかな?」
「かかってこい!」
怪盗トリオはつぼみたちに宣戦布告する。
「私たちの病院だけじゃなく」
「横中を狙っているなんて」
「絶対に許さない!」
つぼみたちは怪盗トリオにこう反論した。
「さあ、変身よ」
「うん」
つぼみ、沙奈、アリスはプリンセスミラーでドールプリンセスに変身する。
「ピンク・ジュエル・パワー!」
「ブルー・ジュエル・パワー!」
「イエロー・ジュエル・パワー!」
「ドレスアップ!」
「愛のプリンセス・ラブリーピンク、見参!」
「水と氷のプリンセス・アクアブルー、見参!」
「花のプリンセス・シトラスイエロー、見参!」
「私たち、プリンセスドールズ!プリンセスステージ、レッツスタート!」
プリンセスドールズが現れた途端、魔獣がいきなりそちらに襲いかかってくる。
「お注射しないと大変なことになりますわよ!」
「キャー!」
ラブリーピンクに注射を打とうとしたり、
「この薬、飲むと快適になるぞ!」
「開発主任のベータが生み出したんだからね!」
「そ、それは…」
「だったら飲め!」
「怖い…」
アクアブルーに万能薬を飲ませようとしたりする魔獣は、とんでもない治療法を次々と披露していく。
そんな風景にシトラスイエローは、
「許せません、あのひどい病院…」
と怒りを露にすると、
「私の父親は今、家族の元を離れてプロの医者として働いています。父親が働いている場所は、ものすごく危険で貧富層が集うところで、こんな私たちでさえ立ち入ることができません。そこで暮らしている人々の中には、幼くして命を引き取ってしまう人も少なくはありません。だから、お願いがあります。病院という場を絶対に傷つけないでください。お願いします!」
と必死で訴える。
すると、魔獣は立ち止まり、
「これで大丈夫です」
「うん!」
「でも、魔獣を浄化しなくちゃね」
「何よ!?」
「また俺たちの」
「邪魔をする気か?」
「そこまでよ」
プリンセスドールズが怪盗トリオに言いつける。
「プリンセスステージ、ライブスタート!」
その後、プリンセスドールズによる魔獣の浄化がはじまった。
「暗くて深い 闇の向こうに」
「一人さびしく たたずんでいた」
「だけどもう 怖がらないで」
「それは迷いを 断ち切ったしるし」
「春風に向かって 旅立っていく」
「さあ 夢の扉を開こう」
「輝く未来に向かって 放つよ私だけのメロディ」
「愛を守るため みんなを守るために」
「きらめく世界に奏でる 私とあなたのハーモニー」
「あなたのそばにいる」
「みんなのためにいる」
「それがプリンセスなんだから」
「今こそ、心を一つに!プリンセス・トリコロール・イリュージョン!」
プリンセスドールズがそれぞれのシンボルマークを描き、魔獣に向かって放つ。すると、魔獣は跡形もなく消えていった。
「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」
とマジカルストーンの気配を察知した。マジカルストーンが落ちていく方に行くと、
「キャッチ!」
とチララがマジカルストーンを回収することに成功した。それをつぼみのプリンセスミラーに認識して、
「ブラッドストーン。深紅の血が流れるマジカルストーンだ」
「それではまた次回、輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」
プリンセスドールズが勝利宣言する一方で、
「もう、プリンセスドールズのせいで禁断のカルテだ台無しになったんじゃないの!」
「なんだか俺たち」
「とっても嫌な感じ!」
怪盗トリオはこう嘆いて、未来世界へと帰っていった。
「注射は痛くないから、安心して」
「お薬、ちゃんと飲めたね」
「さあ、もう少しですよ」
プリンセスドールズのおかげで患者は正気に戻り、病院はいつもの風景を取り戻した。
「これで、病院も元に戻りましたね」
「よかったね!」
「とりあえず一安心!」
つぼみたちは安堵した様子で語る。
「病院は命を守る現場です。医師や看護師たちも一生懸命に働いていますので、緊迫感があります」
アリスはこうつぶやいた。
その後、つぼみたちはプラチナの家で今回の件を報告する。
「ただいま横中総合病院から戻ってきました!無事にブラッドストーンのマジカルストーンを回収できました!」
「それは何より」
プラチナはつぼみたちの様子を知って安心した様子。
「しかし、最近はここに魔獣が襲来してくるらしい。中には、甚大な被害をもたらしてくるものもいるようだ」
「昨日、学校の帰り道で見かけた渡り鳥の魔獣もそうなの?」
「ああ、確かに」
「私とアリスちゃんも、昨日の夕暮れに公園で犬の魔獣と戦っていたんだけど、あれも該当するの?」
「同じく。これはきっと怪盗トリオの仕業に違いない」
「魔獣を送り込んでいる正体が怪盗トリオ!?」
「本当だ。彼らは未来からやってきた刺客だからね」
プラチナが魔獣を送り込んでくる正体が怪盗トリオだと明かすと、
「その理由としては、人々がものを大切にしていることを逆手に取っていることが挙げられる。その名の通り、怪盗トリオは窃盗や万引きを繰り返しているからね」
「じゃあ、怪盗トリオはよくここを訪れるの?」
「そうだ」
怪盗トリオはほぼ毎日未来世界から横中を訪れることをプラチナは語った。
「じゃあ、私たちが止めなくちゃ」
「みんななら、怖くないからね」
「彼らにもきっと心のトゲトゲがあるかもしれません」
つぼみたちも、怪盗トリオを警戒しているとともに、彼らには何かしらの悩みがあることを示唆した。
一方その頃、ネメシス財団本社ビルの入り口ロビーでは、
「緊急事態ですわ!」
「何だと!?」
「今すぐこっちに来るのですわ!」
ダークミラージュが本社ビルを出ようとするところを、ドクターの命令で来ていた怪盗トリオに目撃される。
「ちょっと待ちなさい!」
「おい!」
「やめろ!」
怪盗トリオがダークミラージュを制止しようとするも、それを振り切ってしまう。
「会いたい人がいる」
と言い残すと、
「あの小娘、何をするつもりよ!?」
とアルファが言い放って、ダークミラージュはビルを出ていった。
「2019年の横中に行ってくるわ…」
ダークミラージュは2019年の横中へと飛び立つ。その右手には、黒いプリンセスバトンロッドを持っていた。




