第10話 発見!潮の号外スクープ
ある日のポートフロンティア学園中等部でのこと。つぼみたちは、学校が製作した新聞を見ていた。
「ポートフロンティア通信、今回もいい仕上がりね!」
「この写真もナイスチョイスね!」
すると、アリスと潮がつぼみと沙奈の元に現れた。
「この新聞、私たちのクラスの潮さんが作っています!」
「どうも。いつもありがとうございます」
「そういえば、つぼみさんと沙奈さんは、今回のポートフロンティア通信、いかがでしたか?」
「よかったよ!」
「それは何よりです」
潮はつぼみと沙奈に褒められた。
「そんな二人にここだけの話です!実は、僕とアリスさんである先生に直撃しちゃいます!それは、一年一組の担任を務める西野佑です!」
「私たちの先生が!?」
「本当に!?」
「そうです!では、期待してくださいね!」
「待ってるよ!」
「いい記事に期待だわ!」
潮は西野先生にインタビューをするという。
「精一杯、頑張ってください」
アリスは潮にエールを送った。
翌日、潮は西野先生がいる職員室へと向かう。
「失礼します」
「どうぞ」
「一年二組の新井潮と申しますが…」
「はい、何の用ですか?」
「すいません、西野先生はいらっしゃいますか?」
「はい。西野先生、新聞部の新井君がお呼びです」
「分かりました」
「では、一年一組に行きましょう」
潮は西野先生とともに一年一組に向かう。
「まずは、交渉成立ですね!」
アリスはそれを見守っていた。
「新聞部の新井潮です」
「一年一組の担任の西野佑です」
「では、これからインタビューを始めたいと思います。西野先生、少しの間ですがよろしくお願いします」
「よろしくお願いいたします」
潮が西野先生にインタビューをする。
「さて、西野先生が教師を志したきっかけは何ですか?」
「小学校のころ、クラス委員を務めていました。その時の担任の先生の印象が残っていて、それがきっかけになりました」
「お休みの日は何をしていますか?」
「子供たちと一緒に過ごしています。大学時代にペットショップでアルバイトをしていた女性と結婚して、子供を二人授けたのですから」
「何があって教えるが好きになりましたか?」
「教室に、私たちの教え子たちとなる生徒がいることです」
「教えるときに気を付けていることはありますか?」
「生徒の目線になって答えることです。生徒のことを考えることも重要なことですよ」
「教師になるまでの勉強方法は何ですか?」
「大学で教育学部に入っていました。そこで教員志望のコースがあって、夢を叶えるために一生懸命勉強していましたよ。私は数学を教えていますので、中学校の数学を勉強しなおしていました」
「苦労したことは何ですか?」
「やっぱり、第一志望を逃してしまって一浪したことですね。第一志望は日本で有名な超難関大学でしたから」
「今後の展望や目標は何ですか?」
「みんなから愛される先生になることです。私はここに勤務してまだ三年、つまり石の上にも三年いれば暖まりますからね」
次々と西野先生は潮からの質問に答えていく。
「それでは、生徒のみなさんにメッセージをお願いします」
「分からないことがあれば、気軽に相談してください。いつでも待っています」
「これで、インタビューを終了させていただきます。お忙しい中、お時間をいただいてありがとうございました」
「ありがとうございました」
インタビューを終えた西野先生だが、彼のスマートフォンに突如電話がかかってくる。
「はい、もしもし」
「もしもし、ネメシス財団のドクターだ」
「ポートフロンティア学園中等部に勤務している西野と申しますが…」
「あの作戦は順調に進んでいるかな?」
「それが…」
「それがどうした?」
「まだ行っていません」
「何だと!?」
「今からやるつもりです」
「今からではもう遅い。地下倉庫課が代行する」
「分かりました。では、失礼しました」
西野先生の電話の相手は、ドクターだった。
「ただいま終わりました!」
「お疲れ様でした」
潮はアリスに、インタビューの手ごたえを語りだす。
「今日のインタビューはどうでしたか?」
「西野先生の秘密が聞けて良かったです!」
潮とやりとりしていたアリスに、チララがやってくる。
「大変だ!怪しい予感がする」
「また魔獣ですか?」
「そうだ!しかも、この学校関係者が魔獣の生成に関与しているらしい!」
「これはひどいです!急ぎましょう!」
「僕はどうすればいいでしょうか!?」
「ここで待っててください!」
「分かりました!」
アリスとチララは、魔獣の居場所と思われる教室へと急行する。そこで待っていたのは、ベータとガンマだった。
「遅かったな」
「この学校にどんな用ですか!?」
「それはさておき、本日の魔獣はこちら!」
「委員長の魔獣だ!」
ベータとガンマの合図で、学ランと眼鏡を身に着けた勉強小僧をかたどった委員長の魔獣が現れた。
「考え中…」
「シンキングタイムだ!」
「さあ、どうする?」
ベータとガンマは、アリスに問いかける。
「逃げるわけにはいきません。やります!」
迷いを振り切ったアリスは、プリンセスミラーでシトラスイエローに変身する。
「イエロー・ジュエル・パワー!ドレスアップ!」
アリスを黄色の光が包む。
「花のプリンセス・シトラスイエロー、見参!プリンセスステージ、レッツスタート!」
シトラスイエローが現れると、魔獣がこちらに向かって詮索してくる。
「あなたが一年二組のクラス委員ですね!しかも、この学年で一番頭がいいとうわさされています!」
「この魔獣は詮索された人の」
「すべてをお見通し!」
「そんな!」
魔獣はシトラスイエローの秘密を暴いていく。
しかし、その時だった。
「ピンク・ジュエル・パワー!」
「ブルー・ジュエル・パワー!」
「ドレスアップ!」
「愛のプリンセス・ラブリーピンク、見参!」
「水と氷のプリンセス・アクアブルー、見参!」
なんと、ラブリーピンクとアクアブルーがシトラスイエローを助けにやってきた。
「悪いハートをちょうだいします!」
「ハート・シュート!」
「ダイヤ・シュート!」
ラブリーピンクとアクアブルーは、プリンセスバトンロッドをくるくると回す。
「何だと!?」
「またプリンセスドールズが現れた!?」
「これは…お見通し…できません…」
さすがの連携プレーに魔獣はラブリーピンクとアクアブルーのことをお見通しできず、ベータとガンマは呆然とする。
「さあ、今がチャンスよ」
「頑張って」
ラブリーピンクとアクアブルーがシトラスイエローにエールを送ると、彼女のプリンセスジュエルからキルルが現れた。
「今よ、シトリンのマジカルストーンを使うなら」
「はい!」
シトラスイエローはプリンセスミラーにシトリンのマジカルストーンをセットする。それをプリンセスバトンロッドに授けると、
「プリンセスステージ、ライブスタート!」
シトラスイエローによる魔獣の浄化がはじまった。
「花が咲いて 鳥も鳴いたら」
「あたたかな季節がはじまる」
「たんぽぽの綿毛が」
「飛んでいかないうちに」
「風が吹いて 月も光ると」
「一日の終わり」
「光に照らされていく」
「黄色の菊が」
「はちみつ色の日々」
「私の人生は」
「甘くてほんのり」
「味を感じるの」
「Honey Days」
「It’s a Wonderful Life」
「シトリンの輝きでパワーアップ!乙女の勇気!シトリン・フローラル・セラピー!」
シトラスイエローが花を描き、魔獣に向かって放つと、魔獣は跡形もなく消えていった。すると、マジカルストーンが落ちてくる。
「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」
とチララはマジカルストーンの気配を察知した。マジカルストーンが落ちていく方に行くと、
「キャッチ!」
とチララがマジカルストーンを回収することに成功した。それをアリスのプリンセスミラーに認識して、
「アパタイト。青緑色に光るマジカルストーンだ」
「それではまた次回、輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」
シトラスイエローが勝利宣言する一方で、
「なんだか俺たち」
「とっても嫌な感じ!」
ベータとガンマはこう嘆いて未来世界へと帰っていった。
潮は早速、ポートフロンティア通信の作成に取り掛かる。
「さあ、行きますよ!」
潮は三日三晩でポートフロンティア通信を書き上げる。
「できました!」
その時の潮は、何かをやり切ったような気持ちだった。
それから数日後、出来上がったポートフロンティア通信を掲示板に貼る。
「これはとても素敵ね!」
「西野先生、真剣に答えているみたい!」
「ああ。今回もよい出来だ」
つぼみ・沙奈・晴斗がポートフロンティア通信に感心していると、アリスと潮がやってくる。
「今回はどうでしたか?」
「最高だよ!」
「それはよかったです」
「ありがとうございます!」
つぼみたちがポートフロンティア通信を喜んで見てくれたことに、アリスと潮はとっても嬉しそう。
その日の昼休み、つぼみたちはアリスのクラスメイトである大将とねねとともに、ランチバイキングといういわゆるポートフロンティア学園中等部の学食を食べていた。
「ねえ、今回のポートフロンティア通信、見た?」
「どうでしたか?」
「よかったで!」
「あたしも!」
「それはよかったです!」
大将とねねもポートフロンティア通信を気に入ってくれたようで、
「では、みなさんにお聞きしたいことがあります。これからのポートフロンティア通信でぜひ取り上げてほしい話題は何ですか?」
「私たち、プリンセスドールズの活躍!だって、みんなが私たちを応援しているから!」
「私も!」
「私もです!」
「三人はプリンセスドールズとしてみんなの平和を守るために活動していますからね」
「うちは、学食の話題!うちの生徒はんがお弁当とランチバイキングをどのくらい利用しているのかが気になるで!」
「あたしはね、チアリーディング部の活躍!だって、全国大会に向かって練習しているから!」
「僕は…やっぱりみんなの活躍かな。キラキラ輝いている青春の一ページを刻んでいるからね」
「貴重なご意見ありがとうございます。これらは、今後のテーマの決定に役立つ資料に使いますので、こうご期待!」
新聞部の潮は、これからもポートフロンティア通信を書き綴っていく。
「次のスクープは、何にしましょうか…」
日々、号外スクープをひそかに狙っているようだ。




