森の宴
未熟なぶんではありますが、よろしくお願いいたします。
小さなお家にすむ小さな少年は、だれよも自慢出来ることがありました。
それは生まれてこのかた、一度も泣いたことがないということ。
少年はそれが誰にもない"イチバン"なんだと誇りに思っていました。
そんなある日、少年のところに、風に運ばれてお手紙が一通届きました。
その手紙によると、
~お天道さまが沈みかけ、お月さまが顔を出す頃、大きな森の奥で宴を開きます。お手紙をよんだら、いっぽ、興味がでたら、にほ、好きと思ったらさんぽと、足をすすめてみてください。
もし、本当に来たいと思うのであれば涙をお持ちのうえ、来てくださいね。~
少年は困りました。
一度も泣いたことがない。
それだけが"イチバン"でしたから。
しかし、少年は1日中ひまでしたから、散歩がてら森へ行ってみることにしました。
手紙に書いてあった通り、お天道さまがしずみかけ、お月さまがうすあかりの顔を出した頃、森へ行きました。
すると、森の入り口には錆びれた大きな鉄の門があり、その門にはこう書いてありました。
~この先に行きたくば、門の近くにあるロウソクの火を消してください。ただの水では消えません。あくびなどの乾いた涙でも消えません。飛びっきり思いのこもった涙でなければ、ロウソクの火は消えないのです。~
思いのこもった涙?
そんなもの感じたことも見たこともないや。
少年はただ、そう感じました。
すると、そこに一匹の猫があらわれ、立ちすくむ少年に声をかけました。
「やぁ、君もお手紙をもらったのかい?私も毎年、年末になるとお手紙をもらうんだよ。今年の涙は飛びっきり熱い。娘が、去年まで私のもとで甘えてた娘が、結婚してね、料理も花嫁修行もろくに教えてなかったのに、心だけはいっちょまえに優しかった。もう、涙が止まらなかったよ。」
猫は語りながらもホロリとまた涙をみせました。
そして猫は、ロウソクに袋から詰に込んだ涙を一粒こぼすと、ロウソクの火はきえ鉄の門はギィグォウグギィィィィっとにぶい音を立ててゆっくり開きました。
猫が通ったあと扉はまた閉じて、少年は置き去りに去れました。
もう、帰ろうかな。
そう思ったとき、木陰から歌声が聞こえてきて、顔をあげると、女の人がギターを抱えて歌っていました。
少年は退屈だし、聞いてやろっかな。
と、少し女の人の歌を小ばかにした態度で聞きました。
女の人は顔さえ木の葉に隠れて見えませんが、とても透き通ったこえで、その美しさにコトリたちも集まってきました。
響くギターのなか...
~ララーラ ララーラ
ある日、一人の少年は体を持たない妖精と出会いました。妖精は少年にの願いをかなえる代わりに、君の声を僕にくれるかい?と言いました。
貧しかった少年は、丈夫に働ける体を下さい。それだけ願いました。
それから少年は妖精のことををわすれて、結婚し、子供ができ、幸せな日々を過ごしていました。
そんなある日、少年の娘がふと言うのでした。
パパは強くてしっかりしててだぁーいすき!
でもねときどき何かをわすれたみたいに、お空を見ているの。なんで?
大きくなった少年は
いきなり昔のことを思い出した。
あぁ、なんてことだ!おれは自分の幸せにうもれて、大事なことをわすれていた。
何年も、何年もだ!
思い出した頃、約束した場所にいくと、妖精はまだいたのだけど、体は消えかかっていて、
少年を恨むどころか笑ってみせました。
やっときた、なががったね。
でもね、約束は守れませんでした。
声を失ったら、娘と会話が出来なくなるからって、
妖精は心配したんだね。
でも、少年は何かしてあげたいんだと言って、
妖精はそしたらって、
記憶の中に僕がいることをずっと、感じていて
僕は君の中で生き続けるからって
ララーラ ララーラ
守られない約束は幸せな記憶になりました。~
女の人は歌い終わると、うっすらと消えていきました。
その瞬間、僕は泣いていました。
その涙のしずくが、ロウソクに落ち、扉は開きました。
扉の奥では、猫を始め、家具や本、犬に白鳥、普段人間がお世話になっている面々が、大きな切り株のテーブルを囲んで忘年会をしていました。
空は透き通っていて森の中央はぽっかり木陰の穴が空いていて、そこから夜空がのぞかせていました。
流れ星が落ちて来たかと思えば、それも、仕事を休んだお星さまでした。
なんともいえない、普段めにしているものが、こうして年に一度宴を開いているなんて。
不思議で、なんか嬉しい。皆生きている。
僕は人間だし、招かれざるものだったかな?
っても思いましたが、
とあるものは、風の気まぐれだからね、お手紙を届けるのは
とも言っていたので少し安心しました。
猫は少年の顔をのぞきこみ、
『なんだか、門の外であったときより柔らかいにゃ?』
と言うので、少年もじぶんでも、心が温かいという意味がわかった気がしました。
宴は一晩中行われ、気がつくと少年は寝ていました。
少年が起きた頃には、宴は終わっていて、テーブルだけはありましたが、飾りや食べ物はなんにもなく森の大きな切り株に少年だけ残されていました。
まるで、一晩の夢のようでした。
それから少年は、家をおいて、旅に出ることにしました。
もっと、多くの人に会って、こんな不思議な一晩があったんだよって話して
そんなことあるわけないさって、ちゃかしてもらったりして
そんな日々を過ごしたい。
温かい人にふれていきたいと思うようになりました。。
読んで下さいまして誠にありがとうございます。