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第13話 王様が来た。ギルドのシステム管理をおせわスライムに任せてみた。


 ほどなくして、冒険者ギルドに近衛騎士団がやってきた。


「失礼いたします! 国王陛下の命により、傭兵ギルドのギルドマスター、ヨギル・コーウェンと、その息子のドラムス・コーウェンの捕縛に参りました!」

「ご苦労さま。ヨギルとドラムスはここだ。連れていってくれ」


 俺はコーウェン親子を近衛騎士団へと引き渡す。


「ありがとうございます!」


 騎士団の団長である大柄の男性は、ハリのある大声とともに一礼した。


「ところで、つかぬことをお伺いしますが、貴殿はもしや高名な《竜殺し》コウ・コウサカ殿では……?」

「……高名かどうかは分からないが、コウ・コウサカは俺だ」

「おおっ! まさかこのようなところでお会いできるとは……! 近衛騎士団には貴殿のファンが多いのです。よければ、あとで声をかけてやってください」


 王都に来てからというもの、まるで芸能人みたいな扱いだ。

 ちょっと照れくさいな。

 

 そのあと近衛騎士団の人間にここまでの経緯を話すことになったのだが、途中で思いがけないことが起こった。


 なんとヴィクトル王みずからが冒険者ギルド本部に姿を現したのだ。

 この世界において「冒険者ギルド」という組織は、街の防衛などに大きな役割を果たしている。

 そんな組織の本部でトラブルが起こったわけだから、国王が駆けつけるのも当然かもしれない。

 

 ただ、まあ、なんというか。

 メイヤード伯爵もそうだったが、この国の権力者って、みんなフットワークが軽いよな。

 個人的には嫌いじゃない。


「昨日ぶりだな、コウくん」


 ヴィクトル王はニッとダンディな笑みを浮かべると、右手を差し出してきた。

 昨日も握手を求められたが、もしかして握手が好きなのだろうか?

 ともあれ、握手を断る理由はない。

 俺も右手を差し出した。


「昨日はありがとうございました。ええと、俺になにか用事でしょうか……?」

「もちろんだとも。今回の事件は、王都の治安に大きく関わるものだ。君の活躍にはとても感謝している」


 もしかしてヴィクトル王は、俺にお礼を言いに来たのだろうか?

 ……と思ったら、それだけではないらしい。


「王都でこれだけの手柄を挙げたのだ。国からも報酬を出させてほしい。……あとでギルドマスターの部屋に来てくれたまえ。報酬の内容について話し合おう」



 * *



 俺は近衛騎士団との話を終えると、そのままギルドマスターの部屋に向かった。

 部屋の前には、騎士が2人ほど立っていた。

 おそらくヴィクトル王の護衛だろう。

 俺は騎士たちに声をかける。


「すまない、国王陛下に呼ばれているんだが……」

「コウ・コウサカ殿ですね? 念のため、ギルドカードを確認させてもらっていいですか?」

「もちろんだ」


 俺は騎士のひとりにギルドカードを手渡す。

 もうひとりがボディチェックをさせてほしいと言うので、それに応じる。

 

「ご協力ありがとうございます。陛下が中でお待ちです」

 

 騎士がドアを開けてくれたので、そのまま部屋に入る。

 部屋では、ヴィクトル王とギルドマスターのボルドさんが向かい合ってソファに座っていた。

 

「おお、コウくん。来てくれたか。いま、ちょうど、傭兵ギルドの処分についてボルドくんから意見を聞き終えたところだ」

「《竜殺し》殿、待っておったぞ! ささ、ワシの横に座ってくれ」


 ボルドさんに勧められ、その隣のソファに腰を下ろす。

 そうして俺の報酬についての話し合いが始まった……のだが、ひとつ、気になることがあった。


 俺は冒険者ギルドのシステムに対し、【マスターコード】を発動させた。

 現在、システムのマスターは俺になっているわけだが、事件も解決したことだし、権限をボルドさんに返すべきではないだろうか?


 そのことについて相談すると、ボルドさんから予想外の答えが返ってきた。


「《竜殺し》殿さえよければ、システムのマスターを続けてもらえんじゃろうか……?」


 冒険者ギルドのシステムは、地下遺跡の装置によって運営されている。

 装置そのものは5000年前のものであり、未解明の部分も多いという。


「冒険者ギルドの人間でさえ、システムの全貌は掴み切れておらん。今回のようなトラブルが起こった時、ワシを含めて誰も対応できん。……しかし、《竜殺し》殿ならシステムを使いこなすことができるじゃろう。相応の待遇はきちんと用意させてもらう、どうか冒険者ギルドを支えてくれんかのう」


 そんなことを言われてもな……。

 冒険者ギルドは巨大な組織だし、そのシステムの管理者とか、どう考えても面倒事の予感がするぞ。

 正直、断りたい。

 断りにくいが、断りたい。


 ……そんなことを考えていたら、頭の中で声が響いた。


『おせわスライムに、冒険者ギルドの管理機能を組み込みますか?』


 おお、ナイスタイミング。

 おせわスライムは古代文明の遺産だし、生まれた時代としては、冒険者ギルドのシステムと同じはずだ。

 古代文明のことは、古代文明にまかせるとしよう。


『組み込みを開始します。……組み込みが完了しました。

 オーネン遺跡より最低5匹のおせわスライムを、この遺跡に移動させてください』


 俺には【空間跳躍】があるし、そのくらいは朝飯前だ。

 おせわスライムを冒険者ギルド本部に常駐させておけば、システムに問題が起こっても、勝手に解決してくれるだろう。

 こっちの仕事はほぼゼロ、というわけだ。


 ふむ。

 状況も変わったし、ボルドさんの頼みを引き受けようか。


「……分かりました。ただ、いくつか条件があります」

「おお、引き受けてくれるか! これはありがたい! どんな条件でも構わん、遠慮なく言ってくれ」


 どんな条件でもいいのか。

 無理難題を突き付けるつもりはないが、とりあえず、おせわスライムの常駐は許可してもらいたい。




 ……結論から言えば、おせわスライムの常駐は認められた。




 細かい部分はいずれ調整が必要だが、俺自身はほとんど働かずに済みそうだ。

 ちなみに俺の扱いとしては本部職員に準じるらしく、毎月、けっこうな額の給料が支払われるらしい。


 おせわスライムを派遣するだけでお金が入ってくる。

 夢のような状況だ。

 

 おせわスライムたちは多芸だし、いっそ、スライム派遣会社でも始めようか。


 まあ、そのへんは後で考えればいいだろう。

 ギルドのシステムについての話が一段落すると、続いて、俺への報酬を決めることになった。


 まずは冒険者ギルドからの報酬だ。

 報奨金というか謝礼として10億コムサ、そして、Sランクへのランクアップが確約された。

 俺の場合、功績が大きすぎるせいで処理が遅れていたようだが、おせわスライムを連れてくれば解決するだろう。


 ただ、ヴィクトル王が少し気になることを言っていた。


「我が一族の記録によれば、5000年前の冒険者ギルドには、Sより高いランクも存在していたらしい。コウくんがこれからも活躍を遂げていけば、S以上のランクに到達するかもしれんな。……さて、それでは次に、国からの報酬について話をしよう」

お読みいただきありがとうございます。

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