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第27話 伯爵がランクアップについて訊いてくれた。

 俺は【空間跳躍】でスリエの街に戻った。

 もちろん、アイリスとリリィも一緒だ。


 衛兵の詰所に向かうと、メイヤード伯爵が俺を出迎えてくれた。


「おお、コウ殿! よくぞ無事に帰ってきてくれた! ……それで、状況はどうなっておる?」 

「アンデッドはすべて討伐しました。メビウスも完全消滅しましたし、危機は去ったはずです」

「さすがだな……! 貴殿がいなければ、きっと多くの人命が失われていただろう。心から感謝する」


 メイヤード伯爵は、深く深く、頭を下げた。

 伯爵だけじゃない。

 詰所の衛兵たちも頭を下げ、次々にお礼の言葉を口にする。


「ありがとうございます、《竜殺し》殿」

「北の空が何度も光り輝くのを見ました。《竜殺し》殿は桁外れの力をお持ちなのですね……!」

「古代の賢者さえも軽々と倒してしまうとは、《竜殺し》殿だけは敵に回したくないですな……」


 そのあと俺はメイヤード伯爵とともに冒険者ギルドに向かうことになった。

 ギルドカードの討伐履歴をチェックするためだ。


 冒険者ギルドに着くと、そのまま奥の応接室に通された。

 ギルドマスターのポポロ・ポロイスさんがやってくる。


「コウさん、スリエの街を守ってくださり、本当にありがとうございました。この街の防衛を預かる者のひとりとして、深くお礼申し上げます。……それでは、討伐履歴を確認しましょうか」


 応接室のテーブルには、あの銀色の箱が置かれていた。

 俺は自分のギルドカードを、箱の側面の溝に通す。

 

 半透明のパネルが空中に浮かび上がった。

 そこには俺が倒した魔物がリスト化されている。

 日付や時間もきっちり記録されていた。


 ……それによると、俺は4万匹を超えるアンデッドを倒したらしい。


 メイヤード伯爵が、感嘆のため息を漏らした。


「とんでもない数だな……! 以前の黒竜討伐といい、コウ殿の活躍にはいつも驚かされるわい」


 さらに、ポポロさんが付け加えるように言う。


「問題は数だけではありません。デュラハンロード、エルダーリッチ、ワイバーンゾンビ……Sランク級の魔物も多く混じっています。……本当に、恐ろしい実力ですね」

「待ってくれ、ポポロさん」


 俺は少しだけ訂正することにした。

 

「アンデッドの軍勢を倒したのは、あくまで古代兵器のゴーレムたちだ。俺はメビウスを倒しただけだよ」

「……メビウスというのは、討伐履歴の最後に書いてあるノーライフキングのことですか?」


 そういえばメビウスを【鑑定】したとき、『種族:ノーライフキング』って書いてあったな。

 どうやら分類としては魔物扱いになっているらしい。


「ご存知かもしれませんが、ノーライフキングはXランク級の魔物です。『討伐不可能種族』とも呼ばれ、天災に等しい扱いとなっています。……それを倒したということは、コウさんも天災級の存在ということになるでしょう。やはり、恐ろしい実力ですね」


 どうやらポポロさんは結論を変えるつもりはないらしい。

 その隣で、メイヤード伯爵が「ガハハハハハ!」と笑い声をあげた。


「つまりコウ殿はとんでもない強さの持ち主で、さらには古代兵器の軍勢まで従えているわけか! うっかり敵に回せば、我が領地どころか国が滅ぶのう! いやはや、愉快、愉快!」


 どこが愉快なのかよく分からないが、ともあれ、メイヤード伯爵からの評価はいつもどおり高いようだった。

 ありがたい話だ。


「ところでポポロ殿、ひとつ気になることがあるのだが」


 メイヤード伯爵は、俺のギルドカードに視線を向けながらつぶやいた。


「コウ殿の冒険者ランクだが、Fというのはちと低すぎやせんか?」

「……伯爵閣下のおっしゃるとおりです」

 

 ポポロさんは眼鏡を押さえながら頷いた。


「コウさんのご活躍は王都のギルド本部にかならず報告いたします。ランクアップについても提案しておきましょう。……ですが、昇格には時間がかかると思います」

「ほう」


 メイヤード伯爵は眼を細め、顎髭を撫でながら問い掛けた。

 

「それは何故かな、ポポロ殿」

「……これは内密に願いたいのですが」


 小声でポポロさんは呟いた。


「冒険者ランクなどのシステムは、実のところ、王都地下の古代遺跡で見つかった装置によって管理されています。……コウさんの功績はあまりに大きすぎますので、装置では処理しきれないかもしれません」

「ならば手動で処理すればいいだろう」

「……お恥ずかしながら、それは難しいかと。本部の人間ですら装置の全機能を把握しているわけではありません。『昨日と同じように装置を動かす方法』が前任者から伝えられているだけなのです」


 おいおい。

 大丈夫か、冒険者ギルド。

 ギルドの歴史は長いようだが、よくもまあ、今日まで無事だったものだ。

 もしかすると、現場にものすごい負担をかけることでギリギリ成立してるのかもしれない。


 それはともかく、王都地下の古代遺跡、か。

 俺のスキル……【マスターコード】を使えば、冒険者ギルドのシステムを乗っ取れるんじゃないか?


 まあ、乗っ取るメリットなんてゼロだし、実行はしないけどな。

 

 いずれにせよ、俺のランクアップには少し時間が必要らしい。

 その際は、一気にAあるいはSになるだろう、とのことだった。


 

 

 * *




 今回の報酬だが、冒険者ギルドとメイヤード伯爵、両者からそれぞれ支払われることになった。

 詳しい額はまた後日になるようだが、少なくとも5億コムサ以上になるだろう、とのことだった。


 なんだか貰い過ぎの気もするが、メイヤード伯爵によれば……


「気にすることはない。貴殿はそれにふさわしい活躍をしたのだからな」


 と、いうことらしい。


「それに、コウ殿がメビウスと戦った場所を新たな観光地として盛り上げていけば、数億くらいすぐに稼げる。気にすることはないぞ、ガハハハハハハッ!」


 だったら、まあ、遠慮なくもらっておこう。

 オーネンでの報奨金を加えると、貯金が10億コムサを超えそうだ。

  

 王都には船で向かうつもりだが、豪華客船に乗るのもアリかもしれない。


 

 



 今回の戦いについての報告が終わったあと、俺は冒険者ギルドを出た。

 時刻はすでに午前0時を回っている。


 メイヤード伯爵とポポロさんは他にも事後処理があるらしく、まだまだ休めないようだ。

 偉い人も大変だな……。

 身体を壊さないくらいに頑張ってほしい。


「腹、減ったな……」


 振り返ってみれば、俺はまだ晩御飯を食べていない。

 こんな深夜に開いている店なんてあるだろうか?


 まあ、いざとなったらオーネンの古代遺跡に行けばいいか。

 おせわスライムを頼れば、うまいメシを食わせてくれるはずだ。


 ……と思っていたら、後ろから声を掛けられた。


「コウ、お疲れさま。……開いてる店なら知ってるんだけど、どう?」

「コウさん、お疲れさまでした。よかったら、ご一緒してもいいですか?」


 アイリスと、リリィだ。

 俺のことを待っていてくれたんだろうか。


 


お読み下さりありがとうございます、

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