第26話 レベルアップで新しい力を手に入れた。試してみた。
【おしらせ】
《スキルブレイクEX》の名称を《スキルバインドEX》に変更しています。よろしくお願いいたします。
大賢者メビウスを完全消滅させたことで、俺のレベルはまたも上昇した。
『レベルが65になりました。【異世界人】スキル内サブスキルの取得条件を満たしました。【指揮効果EX】が解放されます』
これは自分の指揮下にある古代兵器や魔物に対して、その能力を引き上げるスキルらしい。
効果範囲が存在し、俺のいる場所から2600mまでとなっている。
……結構広いな。
計算式としては「レベル×40m」となっており、レベルアップにつれて効果範囲が広がっていくようだ。
さっそく、発動させてみる。
すると、ゴーレムたちから通信が入った。
頭のなかでチャットみたいなウィンドウが開く。
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ガーディアンゴーレムA:なんだか力がみなぎってきたゾ!
ガーディアンゴーレムB:身体が軽いゾ! 負ける気がしないゾ!
デストロイゴーレムA:マスターとの繋がりが強くなった気がするヨ!
デストロイゴーレムB:アリガトウ、マスター!
デストロイゴーレムC:これからも頑張るゾ!
デストロイゴーレムD:デストロイ!
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いや、これ以上はデストロイしなくていい。
すでにアンデッドは全滅しているしな。
ただ、世の中なにがあるか分からないので、ゴーレムたちにはしばらく警戒を続けてもらうことにした。
【指揮効果EX】の効果はネクロアースで蘇らせた魔物にも及ぶらしく、黒竜も嬉しそうに唸り声をあげていた。
「ガルルル♪」
全身から赤色のオーラが漂っており、いかにも強そうな雰囲気を漂わせている。
ふと、黒竜と眼が合った。
黒竜は「ガウ」と小さく吼えると、俺に向かってペコリと頭を下げた。
お礼を言われたのだろうか?
なんというか、この黒竜、わりと人間くさいところがあるよな。
……【指揮効果EX】のほかにも、スキル・サブスキルの追加があった。
『【創造】スキル内サブスキルの取得条件を満たしました。【覚醒進化】が解放されます』
おお。
このところ【異世界人】関係のサブスキルばかり増えていたが、今度は【創造】関係のようだ。
どうやら一定条件を満たしたアイテムを、より強力なものに進化させることができるらしい。
すでに条件を満たしたアイテムは……あるな。
英雄殺しの大剣だ。
進化の条件は次のようになっている。
『1.満月の夜に《月の加護S+》を発動させ、その力を完全に解放する。
2.「英雄殺しの大剣」を5000年前に破壊した者 (メビウス・メギストリス)をこの剣で討伐する』
運のいいことに、どちらの条件もクリアしたばかりだ。
どんなアイテムに進化するか気になるし、【覚醒進化】を使ってみよう。
英雄殺しの大剣をアイテムボックスに戻すと、俺はスキルを発動させた。
『英雄殺しの大剣 ×1 → 月光の大剣アルテミス ×1』
アルテミスというと、たしかギリシャ神話の神様だったはずだ。
月の女神なので、ネーミングとしては納得できる。
【鑑定】してみると、こんな説明文が浮かんできた。
『月光の大剣アルテミス
説明文:「英雄殺しの大剣」の真の姿。
月の祝福を強く受けており、その力は常に完全解放されている。
魔力を込めることにより、光の刃を遠距離に飛ばすことが可能である。
マスターとしてコウ・コウサカが登録されており、他の人間では扱えない。
付与効果:《月の祝福EX》《スキルバインドEX》《自己修復S+》』
英雄殺しの大剣には《月の加護S+》という付与効果が存在していたが、こちらは《月の祝福EX》となっている。
おそらく「加護」の上位版が「祝福」なのだろう。
月光の大剣アルテミス。
名前が長いので、基本的には「アルテミス」と略していこう。
遠距離攻撃も可能なのは便利だな。
斬撃を飛ばすとか、中二心をくすぐられる。
魔物と戦う機会があれば、一度、試してみよう。
……とまあ、そんな感じでいろいろと新スキルを試していたわけだが、現実には指先ひとつ動かしていない。
スキルの発動は念じるだけで可能だしな。
時間だって、たぶん、1分も過ぎていないはずだ。
俺はリリィのほうを振り返った。
「メビウスは消滅した。これでもう大丈夫だ」
「あ、ありがとうございます……! その、えっと……コウさん、素敵だった、です……」
リリィはもごもごと口籠りながら、下を向いてしまう。
きっと感情をうまく言葉にできないのだろう。
無理もないよな。
これまでリリィを困らせてきた敵……大賢者メビウスが、やっと消滅したんだから。
「お疲れさま、コウ」
アイリスが労うように声をかけてくる。
「あたしも【鑑定】みたいなスキルがあるから分かるんだけど、メビウスって、種族としてはノーライフキングだったわよね」
「ああ。最高位のアンデッドらしいな」
「冒険者ギルドだと、ノーライフキングは危険度Xランクの魔物に指定されてるわ。Sランクのさらにひとつ上よ」
Sランクがどの程度のものかよく分からないが、とりあえず、ものすごく危険ということだろう。
まあ、そりゃそうだよな。
メビウスは数万匹のアンデッドを従え、さまざまな高位魔法を自在に使いこなしていた。
たとえ肉体を失おうとも、魂だけで何千年と生き続けることができる。
あらためて考えると、メビウスってチート級の存在だったんだな……。
我ながら、よく退治できたものだ。
そんなことを考えていると、アイリスはXランクの魔物について詳しく説明してくれた。
「Xランクは『天災級』とか『討伐不可能種族』って呼ばれることもあるの。封印や撃退ができれば奇跡、普通なら負け戦ってところよ」
「……でも、勝てたぞ」
「ええ、しかも無傷でね。つまりコウの力はXランク以上ってこと。本当にすごいわ」
「俺自身はFランク冒険者だけどな」
「……ものすごいランク詐欺よね。というか、ランクアップはしないの?」
「街に戻ったら、ギルドマスターに訊いてみるさ」
以前、オーネンで魔物の群れと戦った時のことは、すでに王都の冒険者ギルド本部へ報告されているはずだ。
たぶん事実関係の確認などなどで、功績の処理が遅れているのだと思われる。
……ここにメビウス討伐まで加えたら、本部の職員たちは過労死するかもしれないな。
ともあれ、戦いは終わった。
スリエの街に戻るとしよう。
黒竜の背に乗ろうとすると、最後にもう一度、リリィが言った。
「コウさん……本当に、本当に、ありがとうございました!」
どういたしまして。
まあ子供を助けるのは大人として当然のことだしな。
リリィが大人になったとき、今回のように困っている子供がいたら手を差し伸べてやってくれ。
……今回みたいな天災級の事件なんて、あんまりないと思うけどな。たぶん。
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