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第12話 【賢者】を取得した。新魔法でニードルタートルを使役してみた。

 牽制のつもりで魔法を撃ったら、予想外の威力でニードルタートルを即死させてしまった。

 その尊い犠牲(?)のおかげで経験値が手に入り、俺のレベルが上昇する。


『レベルが55になりました。【異世界人】スキル内サブスキルの取得条件を満たしました。【魔法制御補助】が解放されます』


 どうやら新たな力が解放されたらしい。

【魔法制御補助】というのは名前のとおり、魔法の威力調整などを手助けしてくれるサブスキルだった。

 これがあれば「牽制のつもりが大規模破壊魔法になってしまった」という事故は避けられそうだ。


 ……さらに脳内で声が響く。


『【異世界人】スキル内サブスキルの取得条件を満たしました。【無詠唱】が解放されます。……【マジックリスト】【魔法制御補助】【無詠唱】が統合され、【賢者】に変化しました」


 なんだかややこしいな。

 ステータス画面を開いて【異世界人】スキルのところに注目すると、こんな記述になっていた。




【異世界人】

 サブスキル

 ・【オートマッピング】

 ・【空間跳躍】

 ・【遺跡掌握】

 ・【エネミーレーダー】

 ・【エネミーレーダー・収束】

 ・【賢者】(【マジックリスト】【魔法制御補助】【無詠唱】統合済み)





【異世界人】の内部に格納されているサブスキルの数は、合計で6つ。

 なかなか数が多い。


 それにしても、賢者、か。

 前にも言ったが、俺はべつに賢くない。

 賢いならそもそもブラック企業になんか就職していないし、賢者の称号はちょっと身に余る。


 まあ、この「賢者」というのは一般的な意味(賢い人)とかじゃなく、ファンタジー的な意味(すごい魔法使い)なのだろう。

 

 そういや異世界に転移するまえに「【勇者】【魔王】【賢者】、どれを希望しますか?」などと質問されたが、この先、【勇者】や【魔王】もサブスキルとして追加されるのだろうか?


「……選択肢を全部断ったら全部手に入るとか、まるで昔話だな」


 金の斧と銀の斧、あなたが落としたのはどっち?

 どちらでもありません、と答えた木こりは両方を手に入れました……みたいな。

 

 レベルアップの処理はこれで終了らしく、脳内の声はピタリと止まった。

 

「さて」


 俺は【エネミーレーダー・収束】を発動させた。

 これは【オートマッピング】で脳内に浮かんだ地図に、魔物の位置を書き込むものだ。

 索敵範囲はレベルに依存し、現在は2.2kmをカバーできる。

 

 俺はその場でくるくると回りながら、ほかの魔物が潜んでいないかをチェックする。

 社畜時代の経験則だが「ひと仕事終わった!」という時ほど、新たなトラブルの種が隠れているものだ。


 ……やっぱりな。


 それは、俺がスリエの街へと【エネミーレーダー・収束】を向けたときだった。

 脳内の地図に、魔物の存在を示す光点がパパパパッと現れる。


「街に魔物が侵入したのか?」


 だが、スリエの城壁は高く分厚く、そう簡単に突破できるとは思えない。

 いまも光点は増え続けている。

 ……魔物が外から入ってきたというより、その場で発生している、という印象だ。


「状況がよく分からないな……」


 魔素の濃い場所では魔物が自然発生するらしいが、そんな危険地帯に街なんか作らないだろう。

 悪意を持った誰かが召喚したとか?

 いや、そもそもこの世界に召喚魔法はあるのか?


 まあいい。

 ここで考え込んでいたって時間の無駄だ。

 現場に行ってみれば答えも分かるだろう。


 俺は【空間跳躍】を発動させた。




 * *




 俺が【空間跳躍】で向かった先は、大きな酒場の前だった。

 昨晩、俺が泊まった宿の近所でもある。


 あたりは大パニックになっていた。

 魔物が暴れまわり、人々は悲鳴をあげて逃げ惑っている。

 

 ひとつ、不思議なことがあった。

 暴れているのはダークボアやブラックゴートのような下級魔物ばかりだったが、いずれも身体が土で作られていた。


 酒場の前の、やや広めの道のどまんなかには、ローブ姿の男が立っていた。

 痩せこけた姿はまるで骸骨そっくりで、いかにも「悪の魔法使い」という雰囲気だ。

 男は何やら大声で叫んでいる。


「クハハハハハハハッ! 愚民ども、我が主のための生贄になるがいい!」


 男は、ザ・悪役といった感じのセリフを吐きながら、右手を高く掲げた。

 その手には、ドス黒い水晶玉が握られている。


「我が内に囚われし魂よ、忠実なしもべとして現世に蘇るがいい、ネクロアース!」


 詠唱が終わると、水晶玉から黒色の光がいくつも飛び出した。

 その光が地面に落ちたかと思うと、ズモモモモ、とそこから何かが現れた。


 それは土で作られたダークボアとブラックゴートだった。

 なるほどな。

 いきなり街に魔物が現れたのは、魔法で召喚したからか。

 

 ……俺の脳内に、声が聞こえる。


『マジックリストに、闇魔法ネクロアースが追加されました』


 どうやら魔法を目撃するとマジックリストに追加され、使用可能になるらしい。

 見ただけで覚えられるとか、ものすごいチートじゃないだろうか。


 ネクロアースというのは、死者の魂に土の肉体を与え、自在に使役する魔法のようだ。


 

 ところで、俺には【魂吸収】というスキルがある。

 これまで倒した魔物たちの魂も、きっちり自動で回収されている。

 ……ネクロアースを使えば、しもべとして呼び放題なわけだ。

 

 さて、どうするか。

 ダークボアとブラックゴートの数はかなり多い。

 おそらく100匹を超えているだろう。

 1匹1匹潰していくのは手間だし、そのあいだに被害が拡大していく。


「……死んですぐで悪いけど、ちょっと働いてくれ」


 俺は無詠唱でネクロアースを発動させた。

 対象は……ニードルタートルの魂。


 俺の胸のあたりから黒い光が飛び出し、地面に落ちる。

 土の身体を得て、ニードルタートルが蘇った。

 本来のサイズだと巨大すぎて街がめちゃめちゃになってしまうので、軽自動車ほどのサイズに抑えている。


 だが、魔物たちを一掃するだけなら十分だろう。

 ニードルタートルの攻撃手段を覚えているだろうか?


 噛みつき、踏みつけ、体当たり。

 そして、魔力によってトゲを飛ばす。

 トゲには自動追尾の性質があり、回避することは極めて難しい。

 

「ニードルタートル、全弾発射だ」

「キュウウウウウ!」


 俺の命令に応え、ニードルタートルは背中の針をすべて打ち出した。

 その数は100本を超え、200、いや、300本に近い。

 針のひとつひとつは魔力によって精密にコントロールされ、魔物たちを1匹残さず貫いた!


 

 ふう。

 初動段階で叩くことができたおかげで、軽い怪我人くらいしか出ていないようだ。

 

 いったい何が起こっているのか。

 男を叩きのめして、聞きだすとしよう。

 




いつもお読みくださりありがとうございます。

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