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第11話 闇魔法を使ってみた。牽制のつもりだったんだ……

改めて本編を読み返すと【器用の極意】がものすごく頑張っているので、タイトルを少し変えました。

よろしくお願いいたします。


 俺が冒険者ギルドで得たのは、次のような情報だった。


  ・出現したのは、大型A級魔物「ニードルタートル」。

  ・その甲羅は分厚く、まるで剣山のように無数の大きなトゲが生えている。

  ・攻撃手段は噛みつき、踏みつけ、体当たりのほか、魔力によってトゲを飛ばしてくる。

  ・今の時期(秋から冬)にかけてはあまり活動的ではない。だが、ひとたび暴れ始めれば大きな被害を出す。討伐するなら戦力を整え、短時間で決着をつけるべき。


 現在、冒険者ギルドとしては討伐の準備を進めており、俺が来たのはナイスタイミングだったようだ。

 明日には領主率いる騎士団も到着するため、冒険者・傭兵・騎士団の合同でニードルタートルを討伐するらしい。


 ……だが、どういうわけか、ニードルタートルはこの街へと迫っていた。


「た、大変です! ま、魔物が! 魔物が、街のすぐそばに現れました!」


 ロビーに駆け込んできたギルド職員は、汗だくのままそう叫ぶ。

 冒険者のひとりが、大声で尋ね返す。


「ニードルタートルはおとなしい魔物じゃなかったのかよ!?」

「そ、それが、傭兵ギルドが独断で攻撃を始め、討伐に失敗したらしく……」

「ニードルタートルを怒らせた、ってわけか。くそっ! これだから傭兵ギルドの連中は!」


 うーん、さすが傭兵ギルド。

 やることなすことロクでもない。


 なぜ独断で動いたのか気になるところだが、それよりも問題は、街に迫るニードルタートルだ。

 どうやって倒すのがいちばん確実だろうか。


 ……頭のなかで手早く作戦をまとめていると、この街の冒険者ギルドの支部長が声を掛けてきた。


 メガネをかけた、細身の青年だ。

 どこか神経質でプライドの高そうな印象を受ける。

 冒険者からの叩き上げではないだろう。

 幹部候補として採用されたエリート……といった雰囲気だ。


「《竜殺し》殿、ひとつ、依頼をさせていただいてよろしいでしょうか……?」

「ニードルタートルのことか?」

「無能を晒すようで恥ずかしいのですが、傭兵ギルドが勝手に動いたのは計算外でした。……突然のことに我々も対応しきれていません。態勢を立て直すまでのあいだ、ニードルタートルを足止めしていただけないでしょうか……?」


 若き支部長はそう言うなり、床に膝をついた。

 プライドを投げ捨てた土下座……をしそうな勢いだったので、俺はしゃがみこんで、支部長の肩を掴んで止めた。

 冒険者ギルドと傭兵ギルドは別の組織だし、傭兵ギルドの独断専行について、この人が謝罪する必要はどこにもない。

 きっと、いろいろと背負い込んでしまうタイプなんだろう。

 

「足止めだけでいいのか?」

「……はい。どうか、お願いします」

「分かった。念のため、ニードルタートルを倒してしまった場合の報酬も計算しておいてくれ」


 俺はそう伝えると、冒険者ギルドを飛び出した。

  

   


 * *




 昼前の時点では、街の人々はずいぶん落ち着いていた。

 それは街が頑丈な城壁に囲まれていることと、なにより、冒険者ギルドや傭兵ギルドがいままで積み上げてきた信頼によるものだろう。

 

 だが、ニードルタートルが目前に迫ってきたことで、街は大パニックになっていた。

 逃げ惑う人々の、悲痛な叫びが耳に届く。


 俺としては、極論、スリエの街を見捨てて逃げても構わないのだ。

 スーツの《神速の加護S》を発動させれば、すぐに安全圏に退避できる。


「けど、そんなのは後味が悪すぎるからな」


 俺は【空間跳躍】を発動させ、街の外へとワープした。

 街に被害を出さないよう、やや離れた場所でニードルタートルを待ち受ける。

 広い草原の向こうから、少しずつ、山が近づいてきた。


 いや、山じゃない。

 ニードルタートルだ。


「……デカいな」


 全長は20メートルほどだろうか。

 サイズとしては、極滅の黒竜と同じくらい。

 

 事前情報どおり、ニードルタートルの甲羅は分厚く、巨大なトゲがいくつも伸びていた。

 高さとしてはビル3階分くらいだ。


 うーん。

 それにしても疑問だ。

 こんなに大きな魔物なら、前々から目撃証言くらいはありそうなのにな。


 俺は首を傾げながら【鑑定】を発動させる。


『ニードルタートル(孤立種・激怒)

 親からではなく、魔素の吹き溜まりから自然発生したニードルタートル。

 激怒しており、きわめて危険』


 なるほど。

 孤立種という区分は初めて聞いたが、自然発生したなら、目撃証言がないのも納得できる。

 この亀は最近になって生まれたものだろう。

 昨夜、馬車を襲ったことで人々に存在を認識されたというわけだ。


 ニードルタートルとの距離はまだ遠いが、向こうは俺に気付いたらしく、唸り声をあげた。


「ギュウウウウウウアアアアアアアア!」


 同時に、甲羅から十数本のトゲがミサイルのように発射された。

 避けるか?

 いや、それはダメだ。

 俺の背後には、スリエの街がある。

 被害は抑えたい。

 ここは防御だ。


「――バリア展開、街を守れ」


 アイテムボックスからガーディアンゴーレムを出現させ、すぐさま命令を下す。

 ガーディアンゴーレムは返答代わりに駆動音を響かせると、両手を掲げてバリアを展開した。


 青白い魔力の壁が展開される。

 ニードルタートルのトゲはすべてバリアに激突し、粉々に砕け散った。


「ギュウウウウ!?」 


 ニードルタートルにとっては予想外の事態だったらしく、戸惑ったような声をあげる。

 あのトゲではバリアを突破できないようなので、防御はガーディアンゴーレムに任せておけばいいだろう。


 攻撃は……どうしようか。

 俺はいまディアボロス・アーマーを装着している。

《暗黒の王S+》のおかげで闇魔法への適性も高まっているし、魔法でも使ってみようか。

 

 そう思ったとき、脳内に声が響いた。


『【異世界人】スキル内サブスキルの取得条件を満たしました。【マジックリスト】が解放されます』


 頭のなかに現れたのは、俺が使える魔法のリストだ。

 といっても、いまのところはひとつしかない。

 以前、酔っ払いの魔術師が発動させようとした闇魔法……ダーク・バースト。


 意識を集中させると、説明文が浮かんでくる。

 それによるとダーク・バーストは「最下位の闇属性攻撃魔法」であり「低威力だが、連射が可能」とのことだ。 


 よし、牽制のつもりで使ってみるか。

 詠唱は……たしか、こんな感じだったはず。


「深淵の暗闇よ、我が敵を灰すら残さず消滅させろ。ダーク・バースト」


 言い終わると同時に、身体から少しだけ力が抜けた。

 魔法が発動する。

 闇の力がニードルタートルに向かって収束したかと思うと、大爆発を起こした。


 おいおい。

 最下位の攻撃魔法のはずなのに、威力がおかしいぞ。

《暗黒の王S+》で闇魔法の適性が高まっているせいだろうか?


 俺のダーク・バーストによって大地はえぐれ、深いクレーターが生まれていた。

 ニードルタートルはその一撃で絶命し、死体となって俺のアイテムボックスに収納されていた。



いつもお読みいただきありがとうございます。

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