第1話 手に入れた素材で【創造】してみた。
第2章スタートです!
小説家になろうのメンテ諸々で昨日の投稿が抜けてしまったので、今日は2回投稿します。
アイリスを家に送ったあと、俺は自分の宿へと戻った。
時刻は深夜1時になっている。
そろそろ寝るべき時間だが、ひとつだけ済ませておきたいことがあった。
そう、夜の【創造】タイムだ。
異世界に来てから1日も欠かしたことはなく、もはや恒例行事になりつつある。
「まずは、アイテムボックスの確認だな」
夕方だけで俺は1万匹近い魔物を倒したわけだが、魔物の死体はすべて【自動回収EX】によってアイテムボックスに格納されていた。
その内訳は、次のようになっている。
ダークボアの死体 ×2208
ロンリーウルフ(オス)の死体 ×1812
ロンリーウルフ(メス)の死体 ×2463
ブラックゴートの死体 ×2028
パンチラビットの死体 ×2184
極滅の黒竜の死体 ×1
「極滅の黒竜の死体」は例外として、全体的に魔物の種類は少なく、代わりに数がとんでもない。
ギルドマスターのジタンさんに教えてもらったことだが、これは魔物の大量発生において典型的な現象らしい
さて。
次はそれぞれの死体を【自動解体】にかけていくわけだが、ここでちょっと相談がある。
解体によって手に入る素材をひとつひとつ紹介して、さらに【創造】のレシピまで語り始めれば、とんでもなく長い説明になってしまう。
間違いなく徹夜コースだ。
それはちょっと勘弁してほしい。
というわけで、俺の独断と偏見で3つほどピックアップして話をさせてほしい。
1つめは「ダークボアの死体」についてだ。
ダークボアは猪の魔物で、その口からはマンモスのような大きい牙が伸びている。
これを解体すると「ダークボアの大牙」「ダークボアの高級肉」「ダークボアの毛皮」が手に入り、いずれも【創造】のレシピが存在するのだが、今回はちょっと省略する。
注目してほしいのは、「ダークボアの大牙」に【素材錬成】が可能ということだ。
【素材錬成】は特定の素材どうしを掛け合わせることで、より上位の素材を生み出すことができる。
それによると、次のようなレシピになっている。
『ダークボアの大牙 ×100 → カリュドーンの大牙 ×1』
カリュドーンというのは、たしかギリシャ神話に出てきた猪の怪物だ。
「……月の女神アルテミスが地上に放ったバケモノで、ギリシャ全土から英雄を集めてなんとか倒せたんだっけ」
うろ覚えだが、何かのゲームでそんなふうに紹介されていた記憶がある。
「これはまた、とんでもない素材を手に入れたな、俺……」
そして「カリュドーンの大牙」を使うレシピは、これまた驚くようなものだった。
『カリュドーンの大牙 ×5 → 英雄殺しの大剣 ×1』
英雄殺し。
とんでもない中二病ワードが飛び出してきたものだから、俺は深夜のテンションもあって、すぐに【創造】を発動させた。
『英雄殺しの大剣
説明:カリュドーンの大牙から作られた大剣。
五千年前に失われたはずの武器だが、当時以上の性能とともに現代に蘇った。
マスターとしてコウ・コウサカが登録されており、他の人間では扱えない。
付与効果:《スキルバインドEX》《月の加護S+》《自己修復A+》』
そして完成したのは、やはりというかなんというか、想像以上のチート武器だった。
《スキルバインドEX》というのは、要するに最強のスキル封印効果だ。
英雄殺しの大剣に斬りつけられた相手は、こちらが解除するまで、永遠にあらゆるスキルが使用不能となる。
この世界ではスキルというものが非常に大きな意味を持っているわけだし、《スキルバインドEX》をうまく使えば、戦った相手を社会的に抹殺することも可能だろう。
まあ、実行するつもりはないけどな。
もしやるとすれば、傭兵ギルドの人間がトチ狂って襲い掛かってきたときくらいだ。
他の付与効果だが、《月の加護S+》は月が満ちるにつれて《斬撃強化》などのボーナスが付与される。
《自己修復A+》は刃が欠けてしまっても数分で再生するためメンテナンスが不要という親切仕様だった。
……ピックアップの1つ目だけでずいぶん長くなってしまったから、残りはサクサクいこう。
2つめは「パンチラビットの死体」についてだ。
俺の心はどうにも汚れているらしく、最初の4文字ばかりが目に入る。
正しい区切り方としては「パンチ ラビット」なので間違えてはいけない。
「パンチラビットの死体」を解体すると「パンチラビットの毛糸」が大量に手に入るのだが、そこから【創造】できるアイテムは多岐にわたる。
毛糸のパジャマ、毛糸のセーター、毛糸のマフラーなどなど。
ちなみに毛糸のパンツもある。
「パンチラビットだけにパンツ……?」
というのは冗談として、パンツは腹巻きを兼ねたようなデザインで、臍のあたりから膝上までをカバーしている。
冬の実用性はバツグンだろうが、色気にはちょっと乏しい。
寒さに困っているマダムには喜ばれそうだし、売りに出すのはアリだろう。
ちなみに付与効果は《あったかA+》《着心地S+》《ふわふわA》だ。
最後に「極滅の黒竜の死体」の話をさせてくれ。
ゲームだと、こういうのってイベントアイテム扱いになっていて、いろいろと扱いに制限がある。
捨てることができなかったり、売ることができなかったり。
俺は【アイテム複製】というスキルを持っているが、ゲームなら、「極滅の黒竜の死体」を増やすことはできなかっただろう。
だが、ここは現実世界だ。
俺自身もかなり驚いているのだが、「極滅の黒竜の死体」に対して【アイテム複製】を使用できた。
「おいおい、マジか……!?」
いま、俺のアイテムボックスには「極滅の黒竜の死体×2」という文字が表示されている。
驚きのあまり、何度も確認してしまった。
まるで、ゲームのバグ技を見つけたような気分だった。
前にも言ったが、もう一度だけ言わせてくれ。
俺の存在がアイテム増殖バグ。
なお、いまの俺が黒竜の素材で【創造】できるアイテムはたったひとつだけだった。
『黒竜の盾
説明:黒竜の鱗から作られた盾。
生前と変わらない高度な物理防御力と《魔力反射S+》を持ち、【創造】により新たな効果を付与された。
付与効果:《魔力反射S+》《自動帰還B+》《偽装S》』
《魔力反射S+》はもともと黒竜の鱗に備わっていたもので、ほとんどすべての魔法を反射する。
他の2つは【創造】で追加されたものだ。
《自動帰還B+》のおかげで、盾を放り投げたとしても一定距離内であれば自動で俺のところに戻ってくる。
《偽装S》は盾の外見を自由に変えることができる。
黒竜ははじめ球体のような姿だったし、あれも一種の偽装と考えられなくもない。
そういう意味では、【創造】スキルはそれなりの根拠を持って新しい効果を与えているようだ。
* *
もちろんこの他にもいろいろと【創造】したアイテムもあるが、それは別の機会に紹介しよう。
いいかげん寝ないと、俺の睡眠時間がヤバい。
おやすみなさい、また明日。
時間があれば「英雄殺しの大剣」や「黒竜の盾」のテストをしてみよう。
2章もよろしくお願いします。
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