第27話 ガーディアンゴーレムに挨拶させてみた。
街の防衛に加わることをミリアさんに伝えると、すごい勢いで感謝された。
「ありがとうございます! 本当にありがとうございます! コウさんが手を貸してくださるなら、この戦い、もう勝ったも同然ですね!」
ミリアさんはよほど嬉しいのか、かなり大きな声だった。
すると当然、他の冒険者たちにも聞こえるわけだ。
「そうか、この街には《熊殺し》がいるんだったな」
「そういや《熊殺し》のヤツ、昨日、ロンリーウルフの群れに襲われたんだろ?」
「群れを全滅させて、涼しい顔で戻ってきたって話だ」
「すげえ実力だな、頼もしすぎるぜ……!」
俺が参戦することはさっそく話題になっていた。
ちょっと照れくさいものはあるが、冒険者たちのピリピリした雰囲気はすこし和らいだように感じる。
ミリアさんはクスッと笑うと、俺に声をかけてくる。
「コウさんが戦うってだけで、雰囲気、変わっちゃいましたね」
「過大評価と思うけどな」
「わたしは正当な評価だと思いますよ。コウさんはそれだけの影響力を持ってるんです。……それじゃあ、コウさんが戦ってくれること、ギルドマスターに報告してきますね。防衛時の配置を決めないといけませんから」
「あ、ちょっと待ってくれ。実は防衛に役立ちそうなものをひとつ持っているんだ」
俺はアイテムボックスから「ガーディアンゴーレム」を出現させる。
それは成人男性よりも頭3つぶんほど背の高い、無骨なフォルムの巨人だった。
オリハルコンゴーレムに比べると、両腕がかなり太い。
まさに“ガーディアン”の名にふさわしい威圧感を漂わせている。
手首のところには黄色く輝く水晶玉のようなものが嵌め込まれているが、あれが魔導バリア発生装置なのだろう。
……突如として現れたガーディアンゴーレムに、冒険者ギルドのロビーは静まり返った。
ミリアさんは眼を丸くしている。
「こ、コウさん、これは……?」
「俺が古代遺跡を発見したのは知ってるよな。そのときに倒したオリハルコンゴーレムを修復して、ついでに予備パーツもくっつけたんだ」
俺は右手でガーディアンゴーレムの分厚い装甲に触れる。
【器用の極意】が発動して、ゴーレムをコントロールする方法が頭へと流れ込んでくる。
声で命令すれば、あとは人工知能がいろいろと判断してくれるらしい。
便利だな。
【創造】で《演算能力S+》が付与された結果、かなり高度な思考力を得たようだ。
「ガーディアンゴーレム、ミリアさんに挨拶しろ」
俺がそう命じると、ガーディアンゴーレムはペコリと小さく頭を下げた。
「こ、これはご丁寧に……?」
ミリアさんもつられて頭を下げる。
それから、俺のほうを見た。
「ええっと、ギルドマスターを呼んできてもいいですか……? 口で報告するより、実際に見てもらったほうがいいと思います……」
* *
ミリアさんが連れてきたギルドマスターは、白髪交じりの初老の男性だった。
名札のところには「オーネン支部ギルドマスター ジタン」と書いてある。
「まさか、オリハルコンゴーレムを従える冒険者がいるとは……!」
厳密にはガーディアンゴーレムなのだが、装甲はオリハルコン製なので間違いではない。
「コウといったな。すまないが奥で詳しい話を聞かせてくれ。これは戦略の大きな見直しが必要かもしれん」
というわけで俺はギルドマスターの部屋へ向かうことになった。
さて、いまはオーネンの街が滅びるかどうかの瀬戸際だ。
こんな緊急事態に実力を隠している場合じゃないので、ギルドマスターのジタンさんには俺のスキルで防衛戦に役立ちそうなものを説明しておくことにした。
「……【オートマッピング】から派生して【空間跳躍】と【エネミーレーダー】というサブスキルも持っています。たぶん、今回の防衛戦ではかなり役に立つんじゃないかな、と」
「君については報告を聞いていたが、まさかここまで規格外の存在とは……」
ジタンさんは驚きに震えながら、俺のスキルを組み込んで防衛計画を決め直していく。
「コウくん、君にはAランク冒険者とともに最前線で戦うことをお願いしたい。ゴーレムの存在を考えれば、おそらく、そこが最大の激戦区となるだろう。……構わないかね?」
「……ジタンさん、ひとつ、質問させてもらってもいいですか」
俺がそう問いかけると、ジタンさんは穏やかな表情で頷いた。
「私に答えられる範囲であれば、何でも答えよう」
「魔物たちはまだ山を抜けてないんですよね」
「ああ。冒険者たちを平野に配置して迎え撃つ」
「だったら、俺にアイデアがあります。Fランクの駆け出しがギルドマスターに意見するなんて、百年早いかもしれませんが……」
「いやいや、君の実力はよく知っている。しかも若い。若者の意見ほど貴重なものはない」
どうやらジタンさんはかなり柔軟な人らしい。
……俺が働いていた会社の上司にも見習わせたいくらいだ。
「コウくん、むしろ私からお願いしたい。策があるならば、どうかこの老体に授けてくれ。頼む」
「分かりました。実は――」
結果から言えば、俺のアイデアは採用された。
とんでもない力技だが、うまくいけば街の被害はゼロになり、俺はものすごい量の素材と経験値を手に入れるだろう。
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次回はいよいよ戦闘です。
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