第26話 ゴーレムを修理してみた。さっそく活躍の機会が来た。
超大型魔導レーザー砲(試作型)の実験は……まあ、後回しにしておこう。
ここで撃てば、最悪、遺跡をブチ壊してしまう危険性がある。
それに、俺の【創造】タイムはまだ終了していない。
古代兵器の次は……オリハルコンゴーレムだ!
現在、オリハルコンゴーレム関連のアイテムは次のようになっている。
オリハルコンゴーレムの残骸 ×2
錆びた謎のオブジェ ×2
「錆びた謎のオブジェ」だが、どうやら【自動解体】が可能らしい。
2つあるうちの片方は残しておくとして、もう片方はバラしてみるか。
その結果、次のような素材が手に入った。
錆びた金属の箱 ×1
オリハルコンゴーレムの予備パーツ ×3
魔導バリア発生装置 ×3
どうやら「錆びた謎のオブジェ」自体はただの箱に過ぎず、その内部にオリハルコンゴーレムの予備パーツが入っていたらしい。
頭のなかに新たなレシピが浮かぶ。
『オリハルコンゴーレムの残骸 ×1 + オリハルコンゴーレムの予備パーツ ×2 + 魔導バリア発生装置 ×2 = ガーディアンゴーレム ×1』
俺が倒したのは「オリハルコンゴーレム(魔導レーザー砲搭載型)」だったが、名前がちょっと変わっている。
ガーディアンゴーレムか。
バリア発生装置を組み込んでいるだけあって、防御力が高そうだ。
それじゃあ【創造】、いってみようか。
『ガーディアンゴーレム
説明:オリハルコン製の装甲に身を包んだゴーレム。
両眼には魔導レーザー砲を、両腕には魔導バリア発生装置を組み込んでいる。
防衛戦において無類の強さを発揮し、まさに“ガーディアン”の名にふさわしい。
【創造】時に付与された効果により、本来よりも性能が大きく向上している。
付与効果:《バリア強化A+》《演算能力S+》』
これはなかなか頼もしそうなゴーレムだ。
今後、何かを守りながら戦う、というケースも充分に起こりうるし、ガーディアンゴーレムがいれば安心して攻め込むことができるだろう。
……って、なんで戦うことを前提にしてるんだ。
俺はあくまで生産職だぞ。
さて、他にレシピもなさそうだし【創造】は終わりにしよう。
オリハルコンゴーレムに関して、残ったアイテムは次の通りだ。
オリハルコンゴーレムの残骸 ×1
錆びた謎のオブジェ ×1
錆びた金属の箱 ×1
オリハルコンゴーレムの予備パーツ ×1
魔導バリア発生装置 ×1
ちょうど1個ずつ残ってるな。
おっと、そうだ。
オリハルコンゴーレムの残骸についてはレリックに買い取ってもらう予定だったっけ。
【アイテム複製】のクールタイムが終わったら、真っ先に増やしておかないとな。
* *
居住エリアに戻ると、新築の家が10軒も建っていた。
この調子なら、明日には街がひとつできあがってそうだ。
さて、と。
アイリスとレリックはどこだろうか?
……いた。
アイリスはおせわスライム2匹を並べて、その上に寝そべっている。
なんだか現代日本で似たような構図を見たことがあるな。
大型のビーズクッション(人をダメにするクッション、とか呼ばれるやつ)を2個並べて横になると、よく寝れるとかなんとか。
「くぅ……すぅ……」
アイリスは本当によく眠っていたので、容赦なく叩き起こした。
「うぅ……。コウ、あたしの扱い、なんか悪くない?」
忘れてるかもしれないが、アイリスは俺の護衛なのだ。
居眠りしている護衛に対する扱いとしては、むしろ優しいのではないだろうか。
次はレリックだ。
どうやらスライムへのインタビューは終わったらしく、メモを読み返しながら何やら考え込んでいる。
「レリック、収穫はあったか?」
「ええ、ええ! ありましたよ、ものすごくありましたよ! 今日の収穫だけで我が国の考古学がまるごとひっくり返ります! コウさん、あなたは大・大・大恩人ですよ! ああ、この恩をどう返していいのやら。うち、王族とも仲いいんで叙爵とかどうですか? 男爵くらいならすぐになれますよ!?」
「いや、貴族とかそういう面倒くさいのはちょっと……」
つい3日前まで社畜として奴隷のような日々を送っていた人間に、貴族なんて似合わないだろう。
俺としては、せっかく異世界に来たんだから、気ままに自由に生きていたい。
レリックの用事も済んだことだし、俺たちはオーネンの街へ戻ることにする。
もちろん【空間跳躍】を使ってショートカットだ。
冒険者ギルドの裏手にワープする。
レリックはこのまま宿に戻り、インタビューの整理をするらしい。
「それじゃあコウさん、失礼します。本当にありがとうございました。……今夜は徹夜仕事になりそうです。ああ、楽しいなあ、楽しいなあ」
レリックはくつくつと笑いながら去っていく。
不審者として通報されないことを祈るばかりだ。
俺とアイリスはその背中を見送ったあと、冒険者ギルドの正面入口に回った。
遺跡から帰ったことを報告するためだ。
……冒険者ギルドのロビーは、妙にざわついていた。
時計を見れば夕方の五時、みんなクエストを終えてリラックスしているはずの時間帯だ。
にもかかわらず、誰も彼もが物々しい装備を身に着け、ヒリついた空気を漂わせている。
まるで戦争が起こる前のようだ。
俺は窓口にミリアさんの姿を見つけたので、そちらに向かうことにする。
「あっ! コウさん、戻られたんですね! おかえりなさいっ!」
ミリアさんは相変わらずの笑顔で俺を迎えてくれる。
「遺跡発見、おめでとうございます! これはもう歴史的発見ですよ、歴史に残っちゃいますよ! 冒険者ギルドでも報奨金を用意してるみたいなので楽しみにしててくださいね!」
報奨金か。
いくらくらいになるんだろうな?
ただ、今はそれよりも気になることがあった。
「ミリアさん、ちょっと教えてくれ。……みんな、やけに殺気立ってるが、何か事件でもあったのか?」
「えっと、これはコウさんにも関係のあることなんですけど……」
俺?
俺、何かやらかしたのか?
「昨日、コウさんはロンリーウルフの大群と戦いましたよね。その報告を受けて、冒険者ギルドは北の山へ調査隊を送ったんです」
昨日の今日でもう対応策を取ったのか。
この世界の冒険者ギルドというのはなかなか優秀な組織らしい。
そういや、冒険者ギルドって領主から街の防衛を委託されてるんだっけ。
それを考えれば、納得の頼もしさである。
「調査隊の報告によると、山の向こうで魔物の大発生が見つかりまして、そのほとんどがオーネンの街に向かいつつある……という話でした。このような場合、冒険者ギルドが最初の対応を行います」
つまり冒険者ギルドは、国や領主が正規兵を送るまでの時間稼ぎを担当する、ということだろう。
……傭兵ギルドは何をするんだ?
疑問だったのでミリアさんに尋ねてみると、なんとも残念な答えが返ってきた。
「傭兵ギルドは街から避難する人たちの護衛を担当します。……ただ、最近あまりにも評判が悪すぎて、護衛を希望する人はほとんどいなかったみたいです」
まさに自業自得というか、因果応報というか……。
傭兵ギルド、街の人から信頼を失いまくってたんだな。
「オーネンの街はこの地方でもとくに頑丈な城壁で囲まれてますし、避難しないほうが安全、というのも正解ではあるんですよね。実際、街の住民のほとんどは籠城するみたいです」
「ってことは、冒険者ギルドの責任は重大だな」
もしも魔物が街へ入ってきたら、とんでもない大惨事になるだろう。
「はい。……ですので、コウさんにもお手伝いいただけると助かります」
「強制じゃないのか?」
「Dランク以上の冒険者には街の防衛義務があります。ですが、コウさんはFランクですので……」
「辞退も可能、ってことか」
俺は迷わず答えた。
「やるよ。ちょうど試してみたいこともあったしな」
なにせ、これから始まるのは防衛戦だ。
うん。
さっき【創造】したガーディアンゴーレムが役に立ちそうだな。
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