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第21話 冒険者ギルドまでワープしてみた。

 オリハルコンゴーレムを倒したことで、俺のレベルは大きく上昇していた。


『レベルが28になりました。【異世界人】内サブスキル【空間跳躍】が解放されます』


 もともとがレベル16だったから、一気に+12というわけか。

 さすがオリハルコンゴーレム、強敵だけあって経験値も大きい。


【空間跳躍】がどんなスキルかというと……ううむ、なかなかに便利そうだ。

 今まで訪れたことのある場所ならば、どこでもワープできるらしい。

 

「……複数の街を登録しておけば、運送業でボロ儲けできそうだな」


 実際にやるかどうかはともかく、金策として頭の片隅に入れておこう。

 このまま異世界で暮らすことを考えるなら、老後の蓄えだって必要だしな。


 さて、とりあえず……冒険者ギルドに戻るか。

 古代遺跡に入ってみたいのは山々だが、やはり、ホウレンソウは大切にすべきだ。


 俺はオリハルコンゴーレムの残骸をアイテムボックスに回収すると、アイリスのほうを振り向く。

 アイリスはその場にへたりこんだまま、ポカン、とこちらを見つめていた。


「アイリス、どうした? ケガでもしたか?」

「…………はっ、ごめんなさい。あたし、白昼夢を見てるみたい。オリハルコンゴーレムが木剣でまっぷたつになるのが見えたんだけど、たぶん夢よね」

「夢じゃないぞ。俺も驚いたが、オリハルコンって、意外と斬れるものなんだな」

「いや、斬れないから! 普通はキズひとつ付けられないから! オリハルコンゴーレムって、Aランクばっかりのパーティでも慌てて逃げるくらいの相手なんだから!」


 アイリスがものすごい勢いでツッコミを入れてくる。

 うん、この様子ならケガもなさそうだ。


「まあ、コウがいろいろと常識外れなのは今に始まったことじゃないわよね……。このあとはどうするの?」

「予定通り、冒険者ギルドに戻ろうか」


 俺は【オートマッピング】で脳内に地図を出し、【空間跳躍】で向かう座標を指定した。

 

「アイリス、すこし手を触ってもいいか?」

「えっ? う、うん……べ、別に構わないけど……」


 俺は右手の甲で、アイリスの左手に軽く触れる。

 人肌が恋しくなったわけではなく、【空間跳躍】の対象にアイリスを含めるためだ。


「こ、コウ? 急にどうしたの……?」

「新しいスキルを手に入れたんだ。発動させるぞ」

「す、好き!? じゃなくて、スキル? え、ええっと……!?」


 アイリスはなにやらパニックを起こしていたが、俺は無視して【空間跳躍】を発動させる。

 あたりの景色がグニャリと歪み――1秒もしないうちに、冒険者ギルドの裏に立っていた。

 誰かに目撃されると説明が面倒なので、人通りの少ない場所を選んでワープしたのだ。


 幸い、周囲には誰もいなかった。

 俺とアイリスの2人だけだ。


「アイリス、着いたぞ」

「う、うそっ!? ここって、冒険者ギルドの裏手!? あたしたち、さっきまで古代遺跡にいたはずなのに……!」

「俺のスキルだ。今まで行ったことのある場所ならどこでも行けるらしい」


 ちなみに魔法ではないので魔力消費はゼロだ。

 クールタイムも存在せず、使いたい放題だったりする。


 * *


 俺はアイリスを連れて、冒険者ギルドの表側に回った。

 ロビーに入ると、朝11時という中途半端な時間のせいか、冒険者の姿はごくわずかだ。

 窓口にミリアさんの姿は……ない。

 昨日、夜勤だったみたいだしな。

 きっと仕事を上がって帰ったのだろう。


 代わりに、金髪のハデな印象の受付嬢に、古代遺跡を発見したことを告げた。



 するとまあ、当然ながら大騒ぎになるわけだ。


 

 金髪の受付嬢はあわてて上司のもとへ報告に行き、俺とアイリスは2階の応接室へと通された。

 王都の学者とやらがタイミングよくこの街に滞在しており、大急ぎでこちらに向かってくるそうだ。


 待ち時間のあいだ、俺は細かい用事を片付けることにした。

 アイテムボックスを脳内に開く。

 オリハルコンゴーレムの残骸は回収してあるわけだが、これに対して【アイテム複製】を使う。

 ……よし。

 1つだけだったオリハルコンゴーレムの残骸が2つに増える。

 6時間後のクールタイムを待って再び【アイテム複製】を使い、合計で3つにするつもりだった。


 ひとつは、学者に買い取ってもらうためのもの。

 オリハルコンゴーレムの残骸はきっと考古学的に価値が高いはずだし、交渉を持ち掛ければ乗ってくれるだろう。

 もうひとつは、【アイテム複製】で増やすための“タネ”として手を付けない。

 最後のひとつは、解体して【創造】に使う。


 我ながら完璧なプランだ。

 

 そんなことを考えていると、コンコン、とドアがノックされた。

 どうやら王都の学者さんが来たらしい。

 姿を現したのは、眼鏡をかけた細身の優男だった。

 たぶん、年齢は俺と同じくらい。

 いかにも“浮世離れした学者さん”という雰囲気だ。


「あ、ボクはレリック・ディ・ヒューバーグと申します。公爵家の四男坊ですが、まあ、好き勝手に考古学なんかをやらせてもらってます。ヨロシク、ヨロシク」

「コウ・コウサカだ。よろしく」

「アイリスノート・ファフニルよ」

「コウさんに、アイリスノートさんですね。ありがとうございます。……ところでコウさん、もしかして『静かな月亭』に泊まってませんか?」

「ああ、その通りだ」

 

 俺はレリックの言葉にうなずく。


「やっぱり!」


 レリックの青い瞳が、メガネの奥でキランと輝いた。

 

「実はね、ボクも同じ宿に泊まってるんですよ! 朝、ロビーでコウさんを見かけましてね! ずっとお話ししてみたいと思ってたんですよ! その服、たぶんフェンリルの生地ですよね!? 我が家の宝物庫に少しだけフェンリルの毛皮があるんですけど、服に使うなんて、めちゃくちゃ贅沢じゃないですか! いいなあ! いいなあ!」


 レリックは遺跡のことなど忘れたようにはしゃいでいた。

 まさかスーツひとつでここまで好印象を得られるとは思っていなかったから、俺としてはかなり意外だった。

 

 とはいえ、この様子ならオリハルコンゴーレムの買取を持ちかけてもスムーズに進みそうだ。

 少なくとも俺にとって損な結果にはならないだろう。

 ありがたい話だ。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

みなさまの応援もありまして、本日も2回更新できました。

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