第14話 女の子たちの危機を救ってみる。
冒険者ギルドへの帰り道、ロンリーウルフのメスに遭遇した。
【鑑定】してみると、とんでもない事実が明らかになった。
『ロンリーウルフ(メス)
孤独を好む狼型の魔物。発情期にはつがいを作り、妊娠するとオスを捕食する』
おいおい。
オスを捕食するって、まるでカマキリみたいな話だな。
ここでオスの【鑑定】結果を思い出してみよう。
『ロンリーウルフ(オス)
孤独を好む狼型の魔物。発情期にはつがいを作るが、メスが妊娠すると逃げる』
うん、逃げて当然だ。
逃げなきゃ食い殺されるわけだし。
やりすてのクズとか言ってゴメン。
「ガルルルルルルルルッ!」
目の前のメスが獰猛な唸り声とともに襲い掛かってくる。
おいおい、俺はたしかに男だがロンリーウルフじゃない。
エサになるのは遠慮したいので、ヒキノの剣を振るって返り討ちにする。
すると、頭のなかでレベルアップを知らせる声が響いた。
『レベルが16になりました』
オーネンの街を出たときはレベル8だったから、随分とレベルアップしたものだ。
そろそろ一度、きちんとステータスを確認しておこうか。
『コウ・コウサカ 29歳 男性 人族
レベル16 HP260 MP3100
スキル
【創造】
【アイテムボックスEX】
【自動解体EX】
【鑑定EX】
【魔力回復EX】
【器用の極意EX】
【匠の神眼EX】
【自動収集EX】
【言語習得】
【異世界人】
【スキル把握】
【魂吸収】』
あいかわらず、HPとMPの差がとんでもない。
【創造】1回あたり5~10程度のMP消費だから、一度に300個以上のアイテムが作れるわけだ。
ただし【魔力回復EX】があるため、1秒ごとに31ずつMPが回復するもよう。
「あらためて考えると、とんでもないチートだよな」
俺がもうすこし若かったら、チートパワーで異世界ハーレムを築いてやるぜ! みたいな話になっていたんだろう。
うーん、ないな。
いまはとりあえず、【創造】でいろんなものを作ってみたい。
恋愛だの結婚だのは二の次、三の次だ。
我ながらずいぶん枯れていると思うが、もしかすると、長年にわたる社畜生活のせいかもしれない。
ブラック企業で奴隷扱いされていると、ヒトは生殖本能すら失ってしまうのだ! みたいな。
* *
山を抜け、街道を進むとオーネンの街が見えてきた。
手前の岩陰でアーマード・ベア・アーマーを解除し、スーツに着替える。
《熊殺し》だなんだと騒がれるのも面倒だからな。
そのあと城門に向かい、衛兵にギルドカードを見せて街に入ろうとした……のだが、なにやら背後が騒がしいことに気付く。
振り返ってみれば、蒼髪の女の子が、ピンク髪の女の子に肩を貸しながら門に近付いてくるのが見えた。
2人の足取りは危うく、やがてお互いもつれるようにして地面に倒れる。
そのまま力尽きたように動かなくなってしまった。
彼女たちの顔には見覚えがあった。
たしか……森でナンパ男に絡まれていた冒険者の子たちだ。
2人とも全身に傷を負い、いまも出血が続いている。
放っておけば死んでしまうかもしれない。
俺のギルドカードをチェックしていた衛兵が、嘆くように大人の溜息を吐いた。
「魔物の群れにでも出くわしちまったんだろうな。あの傷じゃ、どっちも助からねえよ……」
本当にそうだろうか?
俺のアイテムボックスには最高級のヒールポーションが山ほどストックしてある。
その数、なんと300個以上。
山で素材収集をしたあと、もしもの時に備えて【創造】しておいたが、こんなすぐに役立つとは思っていなかった。
俺は2人のところへ駆け寄り、アイテムボックスからヒールポーションを取り出した。
すると、周囲の野次馬たちが声をかけてくる。
「兄ちゃん、無駄なことはやめときな……」
「助けたい気持ちは分かるがよ……。半端に回復させたって、苦しみを引き延ばすだけだぜ」
「ヒールポーションを飲ませるくらいなら、毒薬のほうがずっとマシだ。……っておい、聞いてるのか!?」
聞いてませんごめんなさい。
俺はヒールポーションのフタを開けると、まず、蒼髪の子にドバドバと流し掛けた。
「ちょっと冷たいけど、耐えてくれよ」
本当は飲んでもらうのが一番なんだが、そんな体力もなさそうだからな。
ずぶ濡れになってしまうのは許してほしい。
死ぬよりはマシなはずだ。
効果はすぐに出た。
用法も用量もまったく守っていないにもかかわらず、蒼髪の子の傷口が塞がっていく。
さすがは最高級のヒールポーション。
やるじゃないか。
【鑑定】を発動させると、蒼髪の子のHPはほぼ満タンにまで戻っていた。
これなら大丈夫そうだ。
野次馬たちが、ざわざわと騒ぎ始める。
「なあ、もしかして蒼髪の子、助かるんじゃねえか?」
「あのヒールポーション、とんでもねえ効果だな……。まるで神話のエリクサーじゃねえか」
「けどよ、さすがにもう一人のほうは助からねえだろ」
ピンク髪の子は苦しげにうめきながら、荒い呼吸を繰り返していた。
容体はきわめて悪い。
まさに瀕死といった様相だ。
けれども、このヒールポーションなら助けられるという確信があった。
本日はあと1回くらい更新する予定です!
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