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第13話 孤独な狼の群れに無双してみた。


「なんでもいいからボコボコにしたいぞ」


 ……というのは冗談として。

 俺は《手加減S+》抜きの大槌をテストするため、まずは森の木々を実験台に使うことにした。

 のだが、いざ大槌を構えたところで魔物に遭遇した。


「グルルルルルルルル……」


 それはオオカミのような魔物だった。

 俺を見つけるなり牙を剥いて、唸り始める。

 どうやら戦闘は避けられないようだ。

 まずは【鑑定】を発動させる。

 相手を知ることは、勝利への第一歩だからな。


『ロンリーウルフ(オス)

 孤独を好む狼型の魔物。発情期にはつがいを作るが、メスが妊娠すると逃げる』


 えーと。

 非常にコメントに困るが、とりあえずクズということは分かった。

 俺は大槌を構えたままロンリーウルフに向き直る。

 

 次の瞬間、ロンリーウルフが飛び掛かってきた!

 

「ガァッ!」

「……りゃああああああっ!」

 

 俺はロンリーウルフの突撃を横に避けながら、大槌のフルスイングを叩きつける。

 それは完全なカウンターだった。

 ロンリーウルフは野球のボールのように弾き飛ばされ、近くの樹木に激突した。

 ……だけではなく、その衝撃で樹木が根元のところで折れ、ミシミシと音を立てて地面へと倒れる。


 ドォォォォォンッ……!


 木はかなり背が高く、幹も太かった。

 だから地面にぶつかったときの揺れも半端じゃない。

 俺はあやうく転びそうになったが、なんとかその場に踏みとどまる。


「この大槌、すごい威力だな……」


 まさかロンリーウルフを倒すだけじゃなく、連鎖的に大木を(物理的に)倒すとは思っていなかった。

 おっと、驚いてる場合じゃない。

 ロンリーウルフの死体を回収しないとな。

 アイテムボックスに入れて【自動解体EX】を発動させると、次の素材が手に入った。


 雄孤狼の毛皮 ×5


 レシピとしては毛皮のコートやマフラーなどが作れるようだ。


 アーマード・ベア・アーマーはちょっとデザインが特徴的すぎるので、普通の衣服が手に入るのはありがたい。【創造】で生み出したものなら、品質も性能もバッチリだしな。

 ただ、成人男性サイズの衣服を作るには、もうちょっと「雄孤狼の毛皮」を集めなければならないようだ。


「いっそ、ロンリーウルフの群れでも出てこないかな」

 

 と、俺が冗談交じりに呟いたときだった。


「「「「「グルルルルルル……!」」」」」


 複数の唸り声が、あちこちから聞こえてきた。

 口は災いの元というやつだろうか、どうやら本当にロンリーウルフの群れがやってきたらしい。


 ロンリーなのに群れを作っていいのか? 詐欺じゃないのか?

 ま、実際のところは群れじゃなく、物音を聞きつけて一ヶ所に集まってきただけだろう。

 さっきの戦い、かなり騒がしかったしな。

 

「やるか」


 ちょうどいい。

 大槌以外の武器も使ってみたかったし、毛皮もゲットできる。

 渡りに船とはこのことだ。

 

「まずは、剣だ!」


 大槌をアイテムボックスに収納し、代わりに「ヒキノの剣」を取り出す。

 先手必勝、もっとも近くのロンリーウルフに狙いをつけた。

 

 ヒキノの剣には《虫よけB+》だけでなく《斬撃強化A》が付与されている。

 正面から叩き切れば、ロンリーウルフは左右でまっぷたつになっていた。


 ……頭のなかに声が響いた。


『レベルが9になりました。【自動収集EX】が解放されます』


 このスキルは、倒した魔物の死体をアイテムボックスに自動で収納してくれるらしい。

 さっそくアクティブにしておく。


 続いて、2匹目!

 あえて【付与効果除去】で《斬撃強化A》を消してみる。

 ヒキノの剣を振り下ろす。

 ちょうどこちらに飛び掛かってきたロンリーウルフの脳天に直撃し、そのまま絶命させた。

 斬撃というよりは打撃といった手応えだ。


 魔物とはいえ命を奪っているわけだが、俺の心に動揺はなかった。

 生きるか死ぬかの修羅場だからかもしれない。


 3匹目と4匹目は同時に襲い掛かってきた。

 俺は右手でヒキノの剣を構えたまま、アイテムボックスからヒキノの槍を取り出し、左手に持つ。

 

「もらった!」


 剣も槍も先端が鋭く尖っているためか、ロンリーウルフの胴体をやすやすと貫いて絶命させた。

 ここまで上手に戦えるのも【器用の極意】のおかげだろう。

 素の俺だったらとっくに死んでいる。


 5匹目はやや距離を取ってこちらの様子をうかがっていたので、先んじてヒキノの槍を投げつける。

 かつてアーマード・ベアを一撃で仕留めた《命中補正(投擲)A》と《クリティカル(投擲)B》の組み合わせは健在だった。

 ロンリーウルフは串刺しになって地面に縫い止められ、そのまま動かなくなった。


 6匹目、7匹目、8匹目……。

 1匹1匹は弱いが、数だけはやたら多い。

 ロンリーウルフたちは仲間が次々と殺されているにもかかわらず、何かに駆り立てられるように襲い掛かってくる。


 途中から、ロンリーウルフの数を数えるのをやめた。

 ときどき脳内でレベルアップを知らせる声が聞こえる。

 不思議と身体に疲れはなかった。

 レベルアップによって体力が増強されているのかもしれない。


「……ッ!」


 集中力が極限まで高まっているのを感じた。

 考えるより先に手足が動く。

 一分一秒ごとに自分の動きが洗練されていくのが分かった。

 たとえるなら、MMORPGが近いだろうか。

 やり込めばやり込むほど、雑魚狩りの手際が良くなっていく。


「これで、ラスト!」


 最後の一匹を切り伏せる。

 一息ついて空を見上げれば、真っ赤な夕陽が俺を照らしていた。


 果たしてどれだけのロンリーウルフを倒したのだろう。

 アイテムボックスを見れば「ロンリーウルフ(オス)の死体」が1000以上もストックされていた。

 まさに一騎当千……というジョークはさておき、解体すれば相当数の毛皮が手に入るはずだ。

 

 それにしても、ロンリーのくせにとんでもない大群だった。

 なんだか不自然だし、妙に引っ掛かる。

 ゲームだったら大きな事件の前触れだよな、コレ。

 ひとまず冒険者ギルドに戻って報告したほうがよさそうだ。 



本日も連続更新頑張っていきます。


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