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第12話 おいしいポーションを作ってみた。

 

 俺は冒険者ギルドを出ると、ミリアさんが教えてくれた『金の子熊』亭へと向かった。

 

「大盛況だな」


 店内はかなり広いにもかかわらず、席は9割がた埋まっていた。

 客は冒険者が中心で、ギルドのロビーで見た顔もけっこう多い。

 だが、スーツに着替えたおかげか、俺がウワサの《熊殺し》と気付くヤツはいなかった。

 

 俺はテーブルに案内されると、看板メニューの『オーネン地鶏の塩焼き』を注文した。

 結論から言えば、これは“当たり”だった。

 パリパリに焼けた鶏肉を噛むたび、脂の乗ったうまみが溢れ出してくる。


「人気店なのも納得だな」


 冒険者向けの店だけあってかボリュームも満点で、しかもパンとサラダ付き。

 これで750コムサなのだから驚きだ。

 日本円に換算するとおおよそ500円、まさかのワンコインランチである。


 やるじゃないか、異世界。

 大満足で店を出る。

 

 冒険者ギルドに戻ると、窓口にミリアさんの姿はなかった。

 おそらく奥で事務仕事をしているのだろう。

 

「手ごろなクエストは……ないな」


 クエストボードをチェックしてみるが、俺のランクでは受けられないものばかりだった。

 めぼしい依頼は朝のうちに受注されてしまったのだろう。


 ま、別にいいか。

 俺はカネに困っているわけでもなければ、冒険者として成り上がりを目指しているわけでもない。

 

 午後は自分のやりたいことをやろう。

 具体的には、これまで【創造】したアイテムの検証と、新たな素材の採集だ。


 

 * *



 冒険者になった際、ミリアさんから渡された小冊子を覚えているだろうか?

 前半はギルドの規約などが書かれており退屈なシロモノだが、後半はお役立ちな内容になっている。

 たとえば『付録2:オーネン周辺に出現する魔物について』。


 それによると街の北部には山があり、ここは駆け出し冒険者が実戦経験を積むのにうってつけの場所だという。

 生息している魔物はどれも低ランクで、数もそこまで多くないようだ。

 これなら魔物に出くわしても【器用の極意】で乗り切れるだろうし、むしろ魔物の素材も手に入る。

 俺にとってはかなり好都合な狩り場だろう。

 

「よし、行ってみよう」 

 

 アーマード・ベア・アーマーに着替え、オーネンの街を出る。

 しばらく北へ進むと、やがて森に入った。

 足元はなだらかな登り坂になっている。

【オートマッピング】スキルで周辺地図を呼び出し、現在位置を確認した。

 どうやら俺はいま、山の入り口あたりに立っているらしい。

 地図をズームアウトすればオーネンの街との位置関係もすぐに分かるし、迷子になることはなさそうだ。

 ほんとうに便利なスキルだな、コレ。


「さて、やりますか」


 俺はかるく両手をパンと鳴らして気合いを入れると、素材の収集を始めることにした。

 ここで役に立つのが、俺のスキルのひとつ……【匠の神眼】だ。

 何が素材になるか、何が素材にならないのか。

 パッと見るだけで直感的に判断がつく。


 しばらく森を歩いてみたが、素材として使えるのは次の3種類だった。


『潤いダケ

 説明:カサの部分にたくさんの水分を蓄えたキノコ。わずかに魔力を帯びている』


『ナオセ草

 説明:単体では繁殖力が高いだけの雑草だが、すりつぶして特定の素材に混ぜると治癒効果を発揮する』


『ジョウカ草

 説明:単体では繁殖力が高いだけの雑草だが、すりつぶして特定の素材に混ぜると解毒効果を発揮する』


 脳内に浮かんだ【創造】のレシピは2つ。

「潤いダケ」と「ナオセ草」を1つずつで「ヒールポーション」。

「潤いダケ」と「ジョウカ草」を1つずつで「解毒ポーション」だ。


 まずはヒールポーションを作ってみる。

【創造】はすべてアイテムボックスのなかで行われるので、手間らしい手間はかからない。


「……ん?」


 いつもよりちょっと多めに魔力が持っていかれる感覚があった。

 ステータスをチェックすると、「MP 1790/1800」になっている。

 完成したヒールポーションを取り出すと、透明なガラス瓶のなかで薄青色の液体がゆれていた。


「ガラス瓶はどこから出てきたんだ?」


 もしかするとMPを消費することでガラス瓶を生み出したのかもしれない。

 ふと思いついたことがあったので、俺はヒールポーションを飲み干してみる。


「……ミントっぽいな」


 スーッとした爽快感が口のなかに広がった。

 社畜時代、ミンティ○で眠気を吹き飛ばしていた記憶が頭をよぎる。

 会社員がミント系タブレットで疲れをごまかして働くように、冒険者もヒールポーションで怪我を誤魔化して戦うということだろうか。いずれにせよブラックな話だ。


 それはともあれ、俺の手元には空になったポーションの瓶がある。

 アイテムボックスに戻すと、新たなレシピが浮かんだ。


『潤いダケ×1 + ナオセ草×1 + 空のポーション瓶×1 = ヒールポーション×1 ※消費魔力減少』


 予想通りだ。

 空瓶を再利用することで【創造】に必要な魔力を減らせるらしい。

 リサイクルが大事なのはどこの世界も同じようだ。


 ところでヒキノの木で武器や家具を作ったときは自動的に高品質のものになったわけだが、それは今回のヒールポーションでも同じだった。


『ヒールポーション

 説明:熟練の薬師によって精製された最高級のヒールポーション。

    ヒールポーションの限界を極めた回復量と、ほどよい爽快感が調和した上質な味わい

 付与効果:《回復量増加S+》《回復速度増加S+》』


 なんだかワイン批評みたいなコメントがついているのはさておき、《回復量増加S+》ってのはすごそうだ。

 

 次に、潤いダケとジョウカ草で解毒ポーションを【創造】してみる。

 こちらはガラス瓶のなかで茶色い液体が揺れていた。

 まるでうがい薬だ。


『解毒ポーション

 説明:熟練の薬師によって生成された最高級の解毒ポーション。

    軽度~中等度の毒ならばすぐに打ち消してしまう。

    薫りはエレガントで、酸味と果実味のバランスが取れた上品な味わい。

    これぞ「キング・オブ・解毒ポーション」。

 付与効果:《おいしいA+》《解毒速度増加S+》」


 おいしいのか。

 色合いはどう見てもイソジ○ですありがとうございました……なのだが、【鑑定】が嘘をつくとも思えない。

 意を決して、解毒ポーションを飲んでみる。


 ……いけるな、これ。


 たとえるなら高級なブドウジュースだろうか。

 すっきりした酸味。

 果実じみた甘味。

 このふたつがほどよくマッチして、上質な味わいを生み出している。

【鑑定】の説明通り、というわけだ。

 疑ってゴメン。


 それはさておき。

 新しいレシピを使ったことによって【創造】がランクアップしていた。

 もともとはランク5だったが、今回、ついにランク6となった。

 

 ……頭のなかに声が響く。


『【創造】スキル内サブスキルの取得条件を満たしました。【付与効果除去】が解放されます』


【付与効果除去】。

 このサブスキルは、所有アイテムを対象としてその付与効果を消してしまえるようだ。


 一見すると何の役にも立たないように思える……が、使い道はそれなりにある。


 たとえば「ヒキノの椅子」を思い出してほしい。

 あれには《気絶強化S+》が付与されてるわけだが、そんな効果を持ったまま市場に流すのはちょっと怖い。

 犯罪にでも使われて、俺の責任を問われるような事態になったら困る。

 

 ここで【付与効果除去】の登場だ。

《気絶強化S+》を消しておけば、厄介事に巻き込まれる可能性も減るだろう。


 もうひとつの例としては「ヒキノの大槌」だ。

 あれは《手加減S+》が付与されているため、全力で殴ってもダメージは発生しない。

 だが、【付与効果除去】を使えばどうだろう?

 

「試してみるか」


 俺はアイテムボックスから大槌のうち1本を取り出すと、【付与効果除去】を発動させる。

《手加減S+》なしの大槌はどれくらいの威力なのか。

 せっかくなので検証しておこう。

明日も連続更新がんばろうと思います!


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