幼馴染ってだけで付き合えるとか思うなよ?
「ゆ、結城君! 好きです、付き合ってください!」
放課後の校舎裏、俺、結城志音は名前も知らない女の子と一緒にいた。
そして、夕日に照らされながら起こるイベントは告白イベント。俺は今告白されているのだ。
学校は同じだが、名前も知らない女の子にだ……!
この言葉が意味すること、それ即ち相手の事を全く知らないということだ。同じ学年らしいからすれ違うぐらいはあるだろうが会話なんてしたことないし、俺が認識したことがないのだ。
俺の通う私立瑞稀学園に在学している高校生の数が千人近いということもあるだろうが、それでもだ。
だから俺の答えは決まっている。告白される前からだ。
「ごめん、まだ俺は君のことを何も知らないんだ。だから、付き合うことはできないけど、友達からでいいなら……ね?」
「ひゃ、ひゃい! よろしくお願いしましゅ!」
俺はとびきりの笑顔で言ってあげる。声もいつもより三割増しのイケボで。
俺は自慢するつもりはないが、まぁ言えば自慢になるんだけどイケメンである。
文武両道のイケメンで性格もいいのだ。モテない理由などあるだろうか? 否、全くというわけではないが、ほとんどないであろう。
そして、そんな人間が俺だ。
まぁ、最も俺の中身は性格がいいとはお世辞にも言えない程なんだけどな。
その性格を知らないのに俺を完璧超人だと勝手に解釈して告白してくる。
別に告白が嬉しくないというわけではないのだが、正直言って迷惑だ。鬱陶しい。それなら完璧超人なんて演じなければいいのでは? と思うかもしれない。しかし、それをすることは俺のプライドが許さない。「出来るならばやれ。出来ないならば努力しろ」それが俺のモットーである。
俺は沈む夕日にを背にゆっくりと校舎裏を去ろうとしていた。
まだ部活途中なのか、外では野球部が声を合わせて校庭の周りを走っている。
丁度、校門を出ようとしたところで俺は呼び止められた。俺を呼び止めたのは、よく見知った人物であり、校内でも美少女と名高い女子である。
「シーオンっ! 一緒に帰ろ!」
「……」
俺はスルーをしてみる。
「ちょ、ちょっと! なんで無視するの! 一緒に帰ろうよ!」
俺はそんな言葉を完全に聞こえないふり、見えてないふりで無視をする。だが、彼女は絶対俺と帰りたいようで腕を絡ませてくる。
「お願いぃ! 志音ぅ!」
はぁ…………全く、何がしたいんだか。
俺は彼女の腕を振りほどきながら言った。
「なぁ、美香。何故俺と一緒に帰ろうと言うんだ? それに別にお前俺の彼女でもないだろう?」
そう、俺を呼び止めた美少女、美香は俺の彼女でもなんでもない。ただの幼馴染である。一緒に帰ろうと言われて無視をしたのは、別にいう必要がないからだ。それは、彼女ではないから、という理由ではなくただ単純に家がとなりだからだ。
別に一緒に帰りたいなら一緒に帰ってくれても構わないのだ。なのに何故か一々呼びかける。
理解ができない……。
「そ、それはそうだけど……私は志音のこと大好きだよ! 親愛とか家族愛とかそういうのじゃなくて、異性としてだよ!」
「はいはい、分かったから」
「もう! 本当だよ!」
そのことについては知っている。美香が俺のことを大好きだというのは。だって、既に合計五十回は告白されてるからな。ここまで同じ人に告白されたのは初めてだ。
美香は美少女だし、文武両道でクラスメイトだけでは収まらず学年から、教師陣からの人望もある。
いわば女版の俺のような感じだ。まぁ美香は俺みたいに作ってるわけじゃなくて本当にこういう人間なんだけどね。
付き合うか付き合わないかで選択を迫られれば普通は付き合うという選択肢を選ぶだろう。だが、俺はそれをしない。理由を聞かれれば復讐、にも近いな。だけどそれとは別物だが。
俺は昔、と言っても五年程前、小学五年生ぐらいのことだ。俺は美香のことが好きだった。それこそ愛していると言っていいほどに溺愛していた。
その時なら付き合っていてもなんらおかしくはなかった。
だがしかし、だがしかしである。美香はその時、俺に対する感情は恋愛感情のようなものではなく、完全に家族愛の類だったという。そして、一年が経ち、小学校の卒業式、俺は美香に告白した。
その時の美香の答えは「ごめんね、志音君をそんな目で見れないの」だ。そんな目で見れない、これが意味するのは君に対して私ね、恋愛感情のれの字もないのよ、ということである。少し捻くれた考えかもしれんがそこは気にしないで欲しい。それまではまだ恋愛感情はギリギリあっただろう。だが、その言葉の次に言われた言葉で俺は変わった。
「幼馴染ってだけで付き合えるとか思わないでね!」
その言葉を言われた瞬間に俺の美香に対する恋愛感情は消失した。まさに美香が俺に思っていた恋愛感情のれの字もないほどに。
そして、時は経ち現在。
「志音! 愛してる! 結婚しよう!」
なんだ、この格ゲーのろコンボみたいなプロポーズは! というか、恋人すっ飛ばして嫁になろうとすんな!
まぁそんなことはどうでもいいのだ。それに俺の美香に対する答えも決まっている。昔好きだったし付き合えるとか思うなよ。その考えが浅はか過ぎる。
「なぁ美香」
俺がそう言うと、美香は俺に期待したような目を向けてくる。
俺はゆっくりと息を吸い込み過去最高とも思える笑顔で言ってあげた。
「幼馴染ってだけで付き合えるとか思うなよ?」
初投稿したった。
幼馴染っていいよね(遠い目)
面白い!
幼馴染可愛い!
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すると作者のモチベーションが上がりまくりんぐです
追記
日間現実恋愛ランキング最高が六位、日間総合ランキングが百三十位となっておりました!
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