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あなたの孫でありがとう

誤字脱字があったら報告してもらえれば嬉しいです。

 ✕✕✕


 俺は地球にいたころからドジっ子だった。


 力なんてものは俺になかったから、誰かがいつも助けてくれた。その度に申し訳なくなり、俺自身を変えたいと思ったのは数え切れないほどあった。


 でも変えれなかった、変われなかったのだ。弱い決意と緩い頭では何も変わらなかった。


 だから、異世界に来たところで俺に変えれることはないのかもしれない。


 ✕✕✕


 わしの弟子には、剣士として才能がなかった。


 どうにか才能を見つけようと努力してみたが、それでもレイドに才能はなかった。


 ただ、あいつは優しかった。誰よりも優しかった。わしが見てきた人間の中で誰よりも。


 あいつの心は、本物の善人から受け継いだ心に違いない。


 そんな優しい我が孫に、怪異を殺させるのは心が痛むが、あいつは守りたいものを守れる力が欲しいと言う。


 孫の願いだ、わしは甘いおじいちゃんだからな、お願いを聞いてしまう。わしの孫だから、わしにそっくりだ。目の色は赤色に黒い色が入り交じり、太陽の領域を使えば自然と目が鮮やかな赤色に変わる。


 思わず力を入れて修行したが、レイドは逃げずに頑張って修行の一次段階を終えた。


 その時にはわしは病気にかかってしまい、将来狙われる孫を助けられなくなってしまうなぁ。


 せめて一人前の剣士になるところまで、見届けたかった。


 ✕✕✕


「ん?」


 う、し、ろ?まさか!?


「がはっ!」


 メデューサの攻撃をくらったわけじゃない、はずだ。ただ、いつの間にか俺は地面に膝をつけて血を吐いていた。


 何が、起こったんだ?まさか、俺は無意識のうちに太陽の領域を使っていたのか!?


 目が痛い!耳が痛い!身体中が痛すぎる!


 メデューサは倒せたのか?どうなんだ?


 ぽんぽんと肩を叩かれる。わかる、この手の感触、師匠の手だ。


 目が痛いが、別に失明したわけではない。血が邪魔で見えないだけだ。


 血を拭いて、師匠がいる方向を見ると、師匠の血が降ってきた。


「大丈夫、だ。もう、メデューサは倒した」


「師匠!?どうしたんですか!?その傷は!?」


 師匠の口が動いているのはわかる、でも師匠の声がかすかにしか聞こえない。鼓膜が破れているんだ。


 師匠が倒れてくる。俺は優しく体を抱く。


 ダメだ、胸の傷が深すぎる、死んじゃう死んじゃう。


「誰か!じいちゃんが死にそうなんです!助けてください!」


 医者の人達が集まってきた。誰か助けて、俺の、師匠で、優しいじいちゃんを助けて!


 絶対言わないとしてた。師匠がじいちゃんだってことは小さい頃から気づいていたけど、なんか言っちゃダメな気がしたから。じいちゃんが知られたくないと思って、俺はじいちゃんと呼べなかった。


「悪いなぁ、レイド。わしは、お前が太陽の紋を引き継ぐまで守りたかった、ごめんなぁ。お前は優しい、それなのに、剣士にしてごめんなぁ。これしか、わしは知らんかったんだ。お前が望んだからって、剣士じゃなくても、良かったのになぁ」


「じいちゃん喋らないで!傷が開いちゃう!」


 医者が必死に血を止めようとしてくれているけど、もう見ていられないくらい流れてくる。


「大丈夫だ。お前は優しい、きっと、大切な人を全員守れる、男になる、この刀を持っていけ」


「じいちゃん?この刀を使えばいいのか!?」


 じいちゃんの手にあった刀を、俺の手に渡してきた。


「ごめんね、じいちゃん、俺才能なくて!じいちゃんの孫なのに太陽の紋も全然使えなくてごめん!」


 景色がぐにゃぐにゃだ。前が見えない。でも見届けなきゃ、じいちゃんの最後を。


「大丈夫だ、お前はいずれ、わしを越す。それだけはわかってる。じゃあな、愛する我が孫よ。生まれてきてくれてありがとう」


 生まれてきてくれてありがとう。そこだけは、確実にわかった。


「ありがとうじいちゃん!俺、強くなるから、じいちゃんに恥じない人間になるから!」


「大丈夫だ!」


 じいちゃんがニカッと笑い俺を抱きしめてくれた。


 すぐに力はなくなり、手がほどけた。


「じいちゃん、じいちゃん」


 俺は、なんにもじいちゃんに返せなかった。


 ✕✕✕


「はぁ、最近あいつ来ないなぁ」


 レイドの師匠が死んだあの日からずっと、レイドを見てない。


「全くもう!借金だって溜まっているのよ!」


「大丈夫、ちゃんと持ってきたから」


「え」


 声がする方向を見ると、そこに赫眼の長髪の少年が立っていた。


「レ、レイド?」


 あれから二年、十四歳になったはずのレイドは少し身長が伸びていて、髪も後ろで束ねるぐらい長かった。


「うん、久しぶり。お金はちゃんと持ってきたから安心して」


 机の上に溜まっていたぶんのお金が乗せられた。


「久しぶりじゃないわよ!今までどこに行ってたの!?」


「別に何もしてなかったよ。ジュナに返す借金のお金を貯めて、じいちゃんの墓を作るために借金したぶんを返してただけ」


 そう言われると、なんだか凄い申し訳なくなる。


 だってあれは不当な請求だから。意地悪したくて追加したお金なんだから。


「そ、そうだったんだ。よく返してくれたわ」


「いやいや!ジュナが利息を請求してくれなくて助かったよ!」


 その疑いのない満面の笑みに私は心が痛くなる。


「い、いや、どうってことないわよ」


「ジュナは優しいね。じゃあ、またどこかで会おう!」


「え!?刀の整備は!?」


「大丈夫!新しい人見つけたから!ジュナにはこんど防具を頼むかもしれないからその時にはよろしく!」


 そう言って、久しぶりの再開はわずか五分で終わった。


「な、なんで、私が刀を整備するって、そういうあれじゃないの?」


 ✕✕✕


 ジュナが優しくてよかったー。これで利息まで請求されたら生活費がカツカツだよ。


 最近は修行ができなかったからなぁ。お金返すので二年も使っちゃった。


「じいちゃん、俺、じいちゃんより強くはなれないと思うけど、皆を助ける人になる」


 俺の手の甲にはまだ日の紋しかないけど、いずれ太陽の紋を引き継ぐはず。


「ねぇーねぇーレイドしゃん!あの女の人は誰だったの!?もひかしてかのじょってやつ?」


 俺の腰らへんに抱きついてきたのは、俺が拾った女の子、エルちゃん。


 エルフっぽい子だからエルちゃん。名前は覚えていないらしいのでそれで代用した。


「あれは幼なじみのジュナだ。俺とジュナは断じてそんな関係じゃないよ」


 それはありえないからね。


「よかったぁー。もしかのじょさんだったら、エルあの人ころしてたよ!」


「大丈夫!俺の彼女じゃないから!」


 最近の女の子はませてるんだなぁ。



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